三、追放したからにはウッハウハ……のはずが!? (ざまぁその一) 七
特別なときに神から遣わされる鳥として知られているが、断じて廃下水道などに縛りつけられたりはしない。
「呪い……?」
「誰かがここに、不死鳥を捨てたんだ。そのときすでに呪いにかかっていたかどうかは僕も知らない。ただ、僕がこの不死鳥から生まれたのはたしかだ」
「バ、バカな! メチャクチャだ!」
「メチャクチャでも事実だからしかたないよ。知ってのとおり、不死鳥は死なない。死んだように思えても必ず復活する。でも、この不死鳥は呪いのせいで生きても死んでもない状態になってる」
「誰がそんな呪いをかけたんだ」
「さぁ?」
「具体的にはなんのためのどんな呪いなんだ」
「さぁ?」
「お前、不死鳥の卵から生まれたっていうのか」
「いや。不死鳥の羽根がたまたま壊れた人形に落ちて、合体したらこうなった。僕の顔や服装はその人形が土台なんだ」
「じゃあ、お前はこいつでなにをするつもりなんだ」
「ああ、まずは名前をつけてあげなきゃ。僕と不死鳥は親子なんだから。そうだな……ラグってどう? 人形を作ってた工房の名前だよ」
「それじゃ人形と不死鳥がいっしょくたじゃないか」
「いいじゃない、名前なんてしょせんはただの記号だよ」
ラグはからからと笑った。
「ゴミ捨て場そのものを捨てるって、なんだか頓珍漢な逆説だよね。結局問題の先送りにしかなってない」
「ほっときゃネズミにでも食われてなくなるだろ」
「少なくともここ何十年かでは食べつくせなかったようだし、ネズミにも好みがあるよ」
「俺の捨てたゴミじゃないし、知らねぇよ」
「うん、ネズミで解決よりは気の利いた発想だなぁ」
ラグにほめられても愉快にはならなかった。しかし、抗議する気にもなれなかった。
「で、これからどうすんだよ」
「そうだね……まずはミュンクワ山をつついてみようか」
ミュンクワ山とは、タン達が山賊を倒したベザ村とサレシカ市の中間にある山だ。かなり裾野が広く、標高はそれほどでもないが奥が深まるほど多くの怪物が現れる。
「つつくって……」
「魔王をだしてみようよ。なんか面白いことやってくれそう」
まるで、采配役が芝居に出演する役者をきめるような口ぶりだった。
「できるのか!? そんなことが!?」
「もうやったよ。テネの森で。あ、サレシカ市にはまだだしてないよ。暑くしてるだけ」
テネの森とは、ミュンクワ山のすぐ北にある。タンが追放され、さらにニーと会った森だ。
「魔王だらけじゃないか!」
「だから面白いんだよ。ほらっ、どこででも見物できるよ」
ラグが手鏡をかざすと、なにもなかった空間に現実さながらの幻が浮かんだ。
「タン! あいつ、生きてたのか!」
ちょうど、ゴブリンの砦につれてこられた辺りだ。
「知りあいかな?」
「そうだ……いや、ちがう。縁を切った」
「ふうん。僕とは縁があるね」
「なんだと!?」
「タンってほら、柄のついた小さなタイコを持ってるよね?」
「なんで知ってるんだ?」
「そのタイコ、僕の身体の元になった人形が持ってたんだ」
「ええっ!? あいつがタイコをもらったのは神殿で、おまけに五年も前なんだぜ!?」
「僕からすれば五年も五分も五十年も似たようなものだよ。それより、僕はゴミ溜めでタイコは神殿か。まさに真反対だね」
「そ、それがどうしたんだよ」
「僕はゴミにこめられた負の感情が不死鳥にかけられた呪いで実体化したんだ。つまり、不死鳥そのものの意志で生まれたんじゃない。でも、タイコは不死鳥が最後の力をこめて送りだした。自分の呪いを解くために」
微笑みながら、ラグはじっとカチを眺めた。
「なんだよ。気持ち悪いな」
「いやいや、ごめんごめん。しばらくは、タンの様子を追っていこうよ」
「勝手にしろ」
なるようにしかならないのを、すでにして悟ったカチだった。




