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おまけ

この作品ではお久しぶりです。

他サイトでも投稿している関係から、こちらも。

━リカルドとジュリアが結婚して19年後。


2人は2男2女の子宝に恵まれ、その長子である長女が王立学園を卒業した。


リカルドとジュリアの長女、ヴィルナは学園を卒業した翌日のこの日、ジュリアの生家であるタリアヴィーニ公爵家へと向かう。


タリアヴィーニ家の血を受け継ぐジュリアの長子であるヴィルナがタリアヴィーニ公爵家の養子となり、婿をもらって公爵家を継ぐためだ。


そして、場所はもちろん城の馬車停め。


「では、お父様、お母様。今までお世話になりました。」


そう言って頭を下げた娘にうるっときているリカルドと、その様子を見て苦笑いを浮かべるジュリア。

そして、ヴィルナの下の弟妹達は寂しげな表情を浮かべ、上の弟は惜しむ様子もなく「またな、姉さん。」とからりとした挨拶。


すぐに頭を上げたヴィルナはその様々な反応に苦笑いを浮かべた。

すると、ジュリアが前に出てきて、そっとヴィルナの両手をとった。


「ヴィルナ、ありがとう。父様と母様のこと、公爵家のことお願いね。」


「はい。お母様。‥‥そういえば私、お祖父様のこと、お義父様とお呼びするべきでしょうか?」


それにジュリアは「あ~」と声を溢したあと。


「それは父様と話して決めて。‥‥個人的にお祖父様呼びのままの方が喜ぶ気がするけどね。」


ヴィルナはそれにくすりと笑って返した。


「そうですね。‥‥で、お父様‥‥」


ついに涙を溢し始めたリカルドに呆れ顔を向けるジュリアとヴィルナのそっくり親子。

ヴィルナはジュリアと同じ黒髪に青い瞳で、正しくジュリアの生き写しの様にそっくりなのだ。だからなのか‥‥


「ヴィルナぁ‥‥」


「「‥‥‥」」


「‥‥お母様。」


「な、なに?」


「よくお父様と結婚しましたよね、本当に。」


もう苦笑いを浮かべるしかないジュリアだった。

けれど‥‥


「‥‥お母様。」


「ん?」


「また、理想郷に一緒に行きましょうね?」


「!‥ふふっ。そうね。お互い、旦那に疲れる様なら遊びに行きましょうか。」


その会話を耳にしたリカルドが瞬時に反応した。


「は!?‥ちょ、ジュリア!?ヴィルナ!?」


「「‥‥‥」」


「お母様。」


「言わないで、ヴィルナ。‥‥リカルドは私達を大好きなだけよ。それだけは忘れないで。」


ジュリアの言葉に復活したリカルドも2人の側にきた。

ジュリアに差し出されたハンカチで涙を拭ったリカルドも続いた。


「そうだぞ?─ヴィルナ。私達は家族だ。公爵家を絶やす訳にはいかないからとヴィルナに継いでもらうことにしたが、それで私達との親子の関係がなくなる訳じゃない。いつでも頼ってくれ。遊びに来たっていい。むしろ大歓迎だ。」


「!!‥‥はい。ありがとうございます、お父様、お母様。

─エルネスト。イヴァンとアレシアのこと、お願いね。お父様とお母様のことも。」


リカルドとジュリアが頷く中、王太子のエルネストが笑顔で答えた。


「もちろん。姉さんも公爵夫人頑張って。結婚式は家族全員で行くから。それと、俺もいざというとき姉さんに頼ってもらえる様に努力を続けるよ。しっかり父上の後を継ぎたいし。」


「「!!」」「ええ。」


一瞬驚いたあと、穏やかな表情になった両親の側でヴィルナがしっかり頷いた。


そして。


ヴィルナは馬車に乗り込み、中から手を振りながら生家の城と家族に別れを告げ、母の生家のタリアヴィーニ公爵家へと向かった。


到着すると、玄関口で祖父のルキノと祖母のラウラ。ヴィルナの婚約者のリオン・クール伯爵子息。タリアヴィーニ家の使用人達が出迎えていた。

馬車からリオンの手を借りて降りたヴィルナは全員を見回したあと。


「今日からこちらに籍も移りました、ヴィルナです。改めて皆様。これからよろしくお願いします。」


そう言って一礼し、すぐに頭を上げると、全員が笑顔で。

そう。『全員』だ。あのルキノとラウラも孫には表情が崩れるらしい。


━それはさておき。


これからヴィルナはここ、タリアヴィーニ公爵家を今はまだ婚約者のリオンと共に継いでいくべく、ルキノ夫妻から学んでいく。


ちなみにリオンはヴィルナと同い年で、公爵家の遠縁に当たる伯爵家の次男だ。なので、公爵家に婿に来れるし、女性が爵位を継げないこの国でヴィルナと共に公爵家を継いでいく。


*****


私、ヴィルナに公爵家への養子を打診してきたのは他ならぬ両親だ。

15歳の成人前にタリアヴィーニ公爵家の伝統と、両親の馴れ初めを聞いた。


お父様は生まれた時、すでに左胸の位置に模様が浮かび上がっていたらしい。

それが魔力が宿り、封印が施されている証だと。


魔力を宿して生まれるのは王家だけ。しかも何年周期とかもなく、突然生まれてくるらしい。

正しく神のいたずらの様に。


そして、封印が解けるのは大切なものをなくした時だけ。

大切『もの』というわりに、『物』では駄目らしく、歴代の方々も大切な『人』を亡くさないと封印は解けなかったそうだ。

だから、両親は正しくそれをする羽目になった。


全てを聞いた時はにわかには信じ難い思いだった。

逆行の話も聞いたから。

でも、それらを話す両親の表情は真剣で。途中から加わった先代国王夫妻であるお祖父様達も真実だと言っていたから、信じない訳にはいかなかったし、嘘をつく理由もなければ、嘘を言っている様には見えなかった。

まあ、逆行した記憶があるのは両親とお祖父様、あとは理想郷にいる公爵家の曾祖母様だけらしいけど。

王家のお祖母様と公爵家の祖父母は逆行前を覚えてないらしい。


そして、一通り話してくれた両親はタリアヴィーニ公爵家を絶やす訳にはいかないからと、長子である私に継いでほしいと言ってきたということだ。


タリアヴィーニの血を引く長子である私も理想郷へ行く権利と力があるはずだから。と。


私が15年間ずっと両親の元で育ったのは、両親が単にすぐ手元から離すのを嫌がったことと、家族がいる。と覚えていてほしかったということらしいが‥‥

私はお父様が最初に断固反対したのが始まりだと思った。


そして、私のその予想は当たっていたと後でこっそりお母様が教えてくれた。


*****


私が公爵家に移った一年後。

リオンと結婚した私はその後も勉強を続けた。


ちなみに、結婚式や披露宴に宣言通り家族が揃って参加してくれた。

お父様はやっぱり号泣していて、お母様が仕方ないなと言わんばかりにお父様の涙をハンカチで拭ったりしていた。


正直、お義父様が国王であることを忘れそうになった。


けれど、お父様が公の場で涙を見せたのはその時だけ。

王太子のエルネストが婚約者と結婚した時も、イヴァンが結婚と同時に臣籍降下した時も、アレシアが隣国の王太子に見初められて嫁いでいく時も、お父様は涙を見せなかった。


‥‥後にお母様がこっそり手紙で『アレシアを見送って城の寝室に戻った途端、泣き出して大変だった』とは聞いたけれども。


『公の場では』涙を見せることはなかった。‥というだけ。


━━そして。


私は無事後継ぎの息子を産み、公爵家を絶やすことなく引き継いで行くことができた。


お父様とお母様が引退し、エルネストが王位を引き継いだあと、両親はタリアヴィーニ公爵家の領地に向かって暫く滞在していた。

『色々あったからね~』と思い出に浸っていたのだとお母様が教えてくれた。


続けて2人は王家直轄領内にある別邸に移り住んだ。

そこで2人は仲良く過ごし━


私やイヴァンはエルネストに定期的に2人の様子を教えてもらっていたため、両親をそれぞれ看取ることができた。

アレシアにももちろん知らせてはいたが、隣国の王太子妃になるべく嫁いで行ったので、この頃には王太子殿下と共に即位しており、王妃であったため、両親の死に目に会うことはできなかった。

けれど、葬儀には陛下と共に来てくれて、大泣きしていた。


それは、先に亡くなったお母様の方が特に。

お父様はアレシアが大泣きしていたから逆に冷静になれたのか、慈愛の表情を浮かべてお母様に最後の別れを告げていた。


私やイヴァン、アレシアもだけど、エルネストも最後まで溺愛していたお母様を亡くしたお父様が心配で、城に戻ってくる様に言ったそうなのだが、お父様は首を縦に振ることはなかった。


お母様と過ごした王家直轄領の屋敷で暫く過ごしたあと、再びタリアヴィーニ公爵家の領地の屋敷に向かった。


そして、ある日ふらっと一人で出かけたらしい。

その数日後、お父様も満足気な表情を浮かべてお母様の跡を追うように逝ってしまった。


私達姉弟はお父様の死に目には間に合わなかった。

私達が見たのはお父様の穏やかな死に顔。


その表情を見た私達姉弟はほっと胸を撫で下ろしたあと、微笑み合った。


『最後は苦しまず、穏やかに逝けたみたいだね。』 と。


**


それから更に時は過ぎ━


私も自分の子供達や孫達に見送られて逝くことができた。


いつか、両親に起きたことがまたあったとしても、その代の王家とタリアヴィーニ家がなんとかするだろう。


私達姉弟は両親から両家を継ぎ、後世に残せたから。


━━死後の世界が本当にあるなら、お父様とお母様もいらっしゃるかしら?

また、会えたら嬉しいけれど‥‥

もし、また会えたらまずはやっぱり『ちゃんと引き継いできた』と伝えないとかしら。

エルネストやアレシアもそれぞれ次の世代に渡したし。

イヴァンも。


お父様、お母様。

私はお2人の娘で良かった。

とても幸せな人生でしたわ。

リオンを遺して逝くことになってしまったのは心苦しいけれど、きっとリオンもすぐに来てくれるでしょう。


ああ、お父様やお母様とお話したいことが沢山ありますわ。


━━そうして、ヴィルナの命も終わりを迎えた。━━


*****


━そして、繰り返される。


「ああ!もう、俺はどうしたらいいのですか!!教えてください、リカルド陛下!!」


リカルド・ジュリア夫妻の数代後。

子孫の王太子はそうして歴代の王の肖像画が並んで飾られている一角で叫んでいたのだった。


◇◇◇◇◇


ちなみに、リカルドがふらっと出掛けたのは、ジュリアの墓石がある場所。

そこはかつての偽物の墓石があった場所でもあるのだが、リカルドはあの時の様に墓石に話しに向かった。


『ジュリア。私ももうすぐそちらに逝けそうだよ。─待っててくれ。』


死期を悟っていたリカルドはジュリアの墓石にそう告げたあと、そのままタリアヴィーニ家の領地の屋敷で亡くなった。


リカルド・ジュリア夫妻の子供達紹介。

今回の話の冒頭部分の時のそれぞれの年齢設定も合わせて。


第1王女→ヴィルナ 18歳

(黒髪に青い瞳)


第1王子→エルネスト 16歳

(金髪に緑色の瞳)


第2王子→イヴァン 13歳

(黒髪に緑色の瞳)


第2王女→アレシア 11歳

(金髪に青い瞳)


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