戦い 前夜
それは宿題を一緒にやったあくる日のことである。
突如開け放たれた玄関に姿を現したのは大きな荷物を持った咲姫だった。
「みんな泊りに来たよ!」
大きな音に慌てて玄関へと向かった私と夏希は、快活にそう言った咲姫に飽きれつつツッコミ。
「咲姫の家は別でしょ」
「ここは私たちの家です」
「二人とも冷たい……は、どうでもよくて、衣装できたから持ってきた」
そう言って半ば押し入る様にリビングに押し込まれた私と夏希は、その大きなバッグから衣装が入ったと思わしき紙袋を手渡され、
「着替えてきて。最後の仕上げするから」
そう言われて、着替えに行く私たち。
十分ほどで着替えてきた私は咲姫に、
「ちょっと丈長くない? ロングに見えるけど」
「メイド服が大きかったみたいですね。調整する」
咲姫はピン止めして丈を合わせていく。
そうこうしているうちに夏希が部屋から戻ってきた。
「これであってるの?」
オオカミのようなふさふさの耳をつけ、ちょっとゴスロリ風なドレスを身に纏った夏希は、とても可憐で儚く見える。
「夏希さん、少々お待ちを」
「夏希可愛い!」
「澪だってメイド服似合っていると思うけど」
「でも、首輪はいるんじゃない? これだとただのメイドさんだよ」
ふと思ったことを口にした。
咲姫は一瞬顔をこわばらせ、悩んだ表情になる。
「やっぱりそう思いますか。私も足りない何かを感じているんですが原稿を何度読み返してもこれだってならないんですよ。やっぱり奴隷ちゃんなので首輪なのか…‥」
「見た目で分かりやすい気がするんだよね」
「確かに、そう思っちゃいそう!」
咲姫は気が進まなさそうだが、足りない何かを求めて、首輪をつけてみることになった。
そんながっちりとしたものをすぐには創作できないので、以前使った小物の中から咲姫が引っ張り出してきた、チョーカーで試してみる。
「なんだか澪が首輪していると、胸が高ぶるよ」
「夏希? 大丈夫?」
「これが背徳感ってものかな。異様な気分になりそう……」
開いてはいけない扉を垣間見た気がした。
咲姫の表情を見つつ、私は姿見で自分の恰好を確認した。
「これで良い感じじゃない?」
「確かに、少し奴隷らしさは増したけど……。いえ、この方向でいきましょう」
「じゃ、次は私の番ね」
夏希は私と交代で姿見の前に来る。
「夏希さん、どこか気になるところありますか?」
「胸が緩い……」
声は小さかったが確かにそう言った。言った傍から顔を赤らめている。小さいのも貴重だと思うのだが、そういうと皆声を揃えて、大きい人にはわからないと言われる。
きっとそういうものなのだろう……。
「他には?」
「特には。あ、でも耳が安定しない気もするの」
「当日はって明日ですが、ウィッグも着けるのでその時考えよう」
「うん」
「それでは、今から調整箇所をやっちゃうので、またお願いします!」
「はいよ~」
私と夏希はまた着替えに戻る。
ささっと着替えた私たちは衣装を咲姫に預け、のんびり過ごした。
————だって明日は戦だから。
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