水槽完成
早速置き場所の相談をはじめた私と夏希。日当たりと邪魔にならない場所を念頭に、ちょうどいい高さの棚の上を掃除し、そこに置くことにした。
「なんでもないただの置き場って感じだったから、ちょうどよかったね」
「でも、ちょっと高いよ。水槽って重いんだよ。大丈夫かな?」
「砂利だけで水は後からだから大丈夫だよ」
「でも掃除の時は水も入っているんだよ」
とてつもなく心配な顔になっていたので、私は頭を撫でた。私が一番安心する方法だ。
「その時はサイフォンの原理を使うから平気よ」
サイフォンの原理とは、現地より水を高い所を経由して目的地まで運ぶための方法で、簡単にできる実験の一つだ。
「澪は何でも知ってるの?」
「面白いなって感じたことは記憶に残っているだけで、私にも知らないことは多いよ。むしろ答えのない問題が多すぎてわからないことばかり」
私はじっとり夏希を見ながら、そう言った。
砂利もひけたので水槽を協力して、棚の上に置く。ポンプをセットし、金魚を一度違う場所に移したバケツを水槽の近くまで持って来る。
私はバケツに入っていたホースを取りに行った。
ホースを取って戻ってきた私は夏希に
「このホースに水を積めて持ってきてくれる? あ、淡水でね」
と、お願いした。
ホースは掃除用で使っていたため、二メートルそこそこといった程度の長さだ。
夏希は言われた通り両端を持ち台所に行って水を汲み始めた。
数分後、夏希が戻ってきた。
「その片方をバケツに入れて」
「うん」
ポチャリ。
ホースが沈む。
「で、もう一方を水槽に。ホースが出てこないように押さえておいてね」
ドバっと水が流れ始め、みるみる水槽に水が溜まっていく。
「おおっ!」
夏希はその様子を眼を輝かせてみていた。そんな夏希を見ながら私はバケツに入ったホースが水から出ないよう見張る。
「どのくらいまで入れるの?」
「三分の二くらいまでかな」
「へえ~」
夏希は大体の位置を指で押さえながら、今か今かと待ち構える。
「ハイっ!」
指を置いたラインまで水が到達し夏希はホースの出口を抑えた。
「ホースそのまま持っててね」
私は夏希に指示しながら、バケツの方の出口を水上へと持ち上げ、水は先ほどとは逆にバケツへと重力によって流れていく。
「ありがとう」
「この次は?」
「水草を入れて、ポンプを動かしてみよう」
「うん」
買ってきた水草の入った袋を開け、夏希はせっせと植え込んでいく。
そしてポンプを作動させ、機械音が響いた後、ぼこぼこと泡を出し始め次第に泡が小さく細かくなっていった。
「大丈夫そうだね」
「金魚入れる?」
「うん。移してあげよう」
私は夏希に金魚の入った容器を渡した。
夏希は優しく金魚三匹を水槽へと移した。
「あと、エビ」
「はいっ」
水槽に移した金魚は元気に泳ぎ始め、エビは水草につかまり、新しい住処を模索しているように見える。
私もほっと一息ついたが、夏希はそれ以上に嬉しそうに見えた。
「夏希も、ありがとう」
「どうしたの、いきなり!?」
「いや、なんか言いたくなった」
「そっか」
照れくさそうに視線を逸らし、何処か落ち着かないといったふうな夏希は話題を逸らすように、また遊びに行きたいね、と言った。
「今度は海?」
「そう言えば、そんな話もしたよね。予定考えなくちゃね」
「そうだね」
私たちは次なる目的を見出した。
朝から動きっぱなしだったこともあり、ここで一度休憩を挟むことにした。
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