風物詩
祖父から電話を受けた夏希は、私に一言。呼び出されたといった。
電話はすでに切られ、断ることもできず、一抹の不安を覚えながらも夏希の祖父の住まう邸宅に行くと、なぜか笑顔で出迎えられた。
私は意味が分からないとばかりにキョトンとしていると、夏希は
「スイカ割りしよう!」
と言って私と祖父を置いて家に上がってしまった。
そんな私の様子を見て、祖父が
「今日スイカが採れたんだ。採れたての方がおいしいから、夏希に澪さんも誘って食べに来ないかと誘った次第だよ。その様子だと、説明は受けてないみたいだね」
「はい。呼び出されたと言っていたのでちょっと不安だったんですが、そうでしたか」
「あの子なりに驚かせようとしたんだろう。怒らないであげて欲しい」
「そんなことじゃ怒らないですよ」
「そうか」
お爺さんは安心したように、私を家の中へと入るよう導いた。
居間には夏希のお婆さんが座っていて、新聞紙の上にスイカが丸ごと置かれていた。
見渡す限り夏希の姿はなく、私がきょろきょろしていることに気づいたお婆さんは、
「夏希なら、農具小屋に行きましたよ」
そう言われて、後を追おうかと思ったがお爺さんにすぐ戻ってくるからと止められ、仕方なく座敷に腰を下ろした。
言われた通り夏希はすぐに帰ってきて、その右手には木刀が握られていた。
「スイカ割りしよう!」
夏希は私に木刀を渡すとスイカを持って軒先から庭へと向かった。庭にはレジャーシートが引かれていて、その上にスイカを置いた夏希は、お婆さんからタオルを受け取っている。
「澪から、やっていいよ。あんまり強く振り下ろすと手が痛くなっちゃうから気を付けてね」
「わ、わかった」
タオルで目隠しをされた私は、木刀を地面についてその場で十回回った。
思ったよりもふらふらする。
軒先で鳴る風鈴の音ですら邪魔に感じる。
「まっすぐーーー」
夏希の声が聞こえる。私は言われた通り、まっすぐ進んでいるつもりだけれど、どうやら少しずれているようで修正の声が聞こえる。
「右右!」
「まっすぐ」
「そう、そこであと三十度右!」
「そこ、振り下ろして!」
夏希に言われた通り木刀を振り下ろした。
瞬間。手にジーンとした衝撃が伝わり、片手でタオルを退けると目下にスイカがあり、少しへこんでいた。
「夏希の番だよ」
「うん。澪案内してね」
「了解」
タオルと木刀を渡し、離れようとすると、夏希に服を掴まれ、
「着けて」
ちょっとふて腐れたようにタオルを渡された。
私は夏希に目隠しを施し、離れ、彼女同様にスイカまでの案内をして、見事命中させることができた。
「さて、割って食べようかね」
「うん」
「お皿持ってきますね」
夏希が当てたのを頃合とみてお爺さんがそう言い、お婆さんが縁側から立った。
包丁できれいに割られたスイカは宝石のように赤く、とてもみずみずしく甘かった。
「美味しい」
「それはうれしいね」
私たちは食べているだけで笑顔になりそうだ。
風鈴を鳴らすそよ風が心地よく、雲と青空の広がる先がどこまでも遠く感じた。
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