死への旅路
私は背景を描くために、まず企画書と原稿を見せてもらった。が、私はタイトルを見て先に詰め寄った。
「何このタイトル」
そこには、初恋は百合の味、と台打たれていた。タイトル通り、原稿を読み進めていくと百合である。
「私たちのことネタにしたの?」
「いや~、その~……前からそう言うのも描いていたんだけど、難しさの方が先立っていたんだよね。ただ今回はモデルがいたから大丈夫かな~って…………ごめんなさい」
「まあ、私はジャンルとしてみるからいいけど、夏希には何か思うところがあるかもしれない。ちゃんと説明してから協力してもらって!」
「はい……」
というわけで、咲姫は頭を下げながら、いや半ば土下座気味に夏希に今回の企画を説明した。
夏希はモデルになることを嬉しそうに思いながらも、ネタにされるのは嫌そうに見えた。そこで横やりを挟んだ。
「夏希。これは私たちの話じゃなくて、そういうモデル役を引き受けるのよ。こういうジャンルはすでにあるものだから、ね?」
「澪がいいなら、いいけど。でもあまりに似ていたらやっぱり思うところはあるよ」
「それは任せなさいって。この私が何の経験も積まずにここまで来たわけないじゃない」
「咲姫さん、テンション高いですね……」
オタク系の話にはついテンションが高くなってしまう咲姫にちょっと引きつつの夏希は渋々承諾してくれた。しかし、ラブストーリーという企画はいいとしても、原稿は少し弄らなければならないかもしれない。だって高校生百合カップルってどうしても思うところが出てしまう。
「咲姫。この話書き直せない?」
「う~ん、今からだとまた修羅場になるよ」
「いいから」
「澪さんも覚悟の上ですか。なら私が最高のものを作るしかないね!」
「お~~」
テンションそのままの咲姫に圧倒されるように夏希はワタワタしながら叫んでいる。そんな夏希は初めてかもしれないと思いながらも、私が詰め寄っても似たような状態になることを思い出し、ちょっと妬いた。
そして私たちは咲姫の邪魔をしないよう部屋から出た。
それからかれこれ六時間。
午後七時。夕食の用意ができたタイミングで咲姫が紙束を持って部屋から出てきた。
「できたぞ。皆の諸君読んでくれ!」
「その前に夕食にしよ。咲姫は手を洗ってきて」
「む。しょうがないな。腹が減っては何もできないからな」
「咲姫さん、キャラ変わりすぎじゃない」
「大丈夫。咲姫は好きなことしている時はいつもあんなだから」
夏希が心配そうに尋ねたが、私からすれば学校でおとなしい彼女の方が珍しい。とはいえ、学校での見てくれなんて、ひと時の目線にしか過ぎず、ちょっと間違った評価をされることの方が多いことを私は知っている。
夏希の可愛さに誰も気づいていないなんてなんてもったいない……。おかげで独り占めである。
「それでは、簡単に作れるカレーにしたけど、皆しっかり食べてね」
「ありがとう」
「私人参嫌いなのに……」
「夏希もしっかりね」
「はい…………」
カレーが並ぶ食卓に和気あいあいとした会話が生まれる。この後訪れるであろう修羅場に向け、私たちは最後の晩餐を開催した。
読んで下さりありがとうございます。
一回目のワクチンを打ってまいりますので、次回の更新は少し期間を置いてになります。




