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彼女がわかるまで絶対やめない  作者: ほのぼの日記
11/28

幼馴染

 八月手前の終業式と言えば、夏休み前最後の登校日になるわけで、自ずと話題は夏休みのことになりがちだ。

 だから、ということではないだろうけれど、私もなんだか予定を聞かれる。教室のいたるところでその話題が上がっている。


「それで、澪はなんて答えたの?」

「遊ぶ予定はないって言ったけど」

「澪は相変わらずだね。もう少し人付き合いした方が身の回りが楽だよ~」

「そういう咲姫だって、予定ないでしょ」

「まあ、ないけど」


 彼女は私の幼馴染の咲姫。大きなリボンのついた髪留めでポニーテールにセットしているのがある意味特徴で、スポーツ万能なだけにスタイルもいい。

 私の話し相手が咲姫と夏希を入れ、他数人しかいないのを彼女は知っている。


「それで、今年もいいの?」

「まあ、夏希にお願いはしてみるよ」

「ありがとう~。澪がいないと助からないところなの。お願いします」

「聞くだけ聞いてみるから」

「バイト代はちゃんと出すから」


 彼女は縋りつくような目でこちらを見てくる。彼女のこういうところを私は素直に尊敬している。


「澪~~? 帰ろ?」

「あ~、夏希。ちょっとお願いが……ほら」


 私は咲姫を小突いた。


「夏希さん。ちょっと澪を貸してほしくて」

「エッチなことはダメだよ」

「あ~。う~~ん……エッチではないけど、いや、エッチか……まあ、大丈夫、夏希さんが心配しているようなことをするわけじゃないから。身体目当て、いや腕目当て、そんな感じ」

「どういうこと?」

「私が説明するとね、夏希。毎年なんだけど、この時期は彼女の手伝いをしてるんだよね。それで今年も頼まれていたってわけ。で、夏希が寂しがるから、今年はあの寮を使わせてもらえないかなって」


 夏希はほんの少し考えてから、口を開いた。


「咲姫さん。澪に何もしないって約束ですよ」

「それじゃあ」

「滞在を許します。ですが、生活面はしっかり手伝ってもらいますよ」

「できる限りの努力はするよ」

「それと私と澪のことをこそこそ嗅ぎまわらないように」


 そうして彼女は一度自宅に帰って持ち物を揃え、用意を整えたら電話をくれる手はずになった。


 帰り道。

 終業式だけだったこともあってまだ午前中。もしかしたら一番暑い時間の始まりのひと時かもしれない、そんな時間にもっと暑くなりそうなことを夏希は言い出した。


「咲姫さんって澪とどういう関係?」

「幼馴染だよ」

「じゃ、幼馴染には私とのこと話したんだ」


 さてここで。親族に話してしまうのと、友達に話してしまうのでは、どちらがタブーであるか問題。


「ごめん」

「いいけど、あの時怒ったくせに」

「機嫌直して……私が悪かったから」

「私の言うこと何か一つ聞いてくれたらいいよ」

「わかった」


 私は少し期待もした。

 ただ、ここでは何も起きなかった。


「暑いし、速く帰ろ」

「そ、そうだね?」

「今度使ってあげるから」


 にやりと笑う夏希がどことなく怖かった。幼馴染との関係を見て嫉妬でもしてくれたのだろうか……なら、少しうれしい。が、この後、その子が寮に来るんだけれど、何も起こらない、そんな世界があるのだろうか。

 不安である。

 そんなこんなで寮に着いた。今日はやけにセミの声がうるさい。


読んで下さりありがとうございます。

もしよければ、感想、ブクマ、評価などしていただけたら嬉しいです。

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