『魔王』の一端
「最後まで生き残った奴が勝ちなんだ。
どんなずるい手を使っても、どんな惨めな姿で帰ってこようと死んじまったら何も残らない。
だからいいか? 無理だと思ったら形振り構わず一目散に逃げろ。まずはそこからだ。
そして余裕が出来たら他の奴を助けるんだ。共倒れなんて面白くねーから必ず余裕が出来てからだ」
「な、なるほど...。サイジャクさん、流石っす」
戦場知識を教えてくれてるのは魔王軍最強の幹部部隊、四天王の『サイジャク』さん。
この人は戦闘経験も豊富なので知識の浅い俺に心得を教授してくれたり、困ってる時に相談に乗ってくれたりする非常に頼れる上司様だ。
今日はこれから勇者戦があるにも関わらずこうして戦闘の何たるかを微塵も知らない俺に教えてくれてる。
「さ、サイジャクさーーん、こっち準備できました。いつでも出れまーすーーーううえお」
未だ毒の抜けきってない兵士が呼びに来た。
「おっと、そろそろ行かねーとだな。しゃーね、いっちょ行ってくるわ」
「あ、はい! お気を付けて」
「おう! 俺の戦い方、特とご覧あれあれだ! 行くぞ、おめーらーーーー!!!」
「「「「よいしょーーーーーーー!!!!」」」」
その日、サイジャクさんが戦死した____
☆ ☆ ☆
「サイジャクさん...」
ここは魔物の魂、『ソウル・コア』が眠る場所、『仮眠室』。
死んでしまった魔物は皆ここに還る。
先ほど報告のあった、サイジャクさん一行の全滅からすると皆ここに還ってきたのであろう。
周りを見渡すと何個もの魔石がキラキラ輝いている。
俺は『サイジャク』と書かれた魔石を前に1人で床に座った。
今はこの魔石も綺麗な青の光を放っているが、あと数時間でこの光も消えてしまう...。
☆ ☆ ☆
時間が経ち、さっきまで各所で光っていた魔石ももう残りサイジャクさんの分1つとなってしまった。
その光が消える最後まで見つめていると___
「ん? ハツカ。どしたんだ?」
___サイジャクさんが魔石から出てきた。
「サイジャクさん」
「お~? なんだなんだ~? 出迎えてくれたのか~?」
「はい、戦死したって聞いたんで。大丈夫でしたか?」
「おう! 今は何ともねーよ。ほれ、ピンピンしてる」
腕をグルグル回して大丈夫アピールしてる。
脚もぎ取られたって聞いたけど...?
「...そですか。よかったっす」
「心配かけたな。だがこれも魔王様のおかげだな」
魔王様の固有能力【ソウル・コア】。
魔物と契約することでその魔物の核である魔石を『ソウル・コア』として取り出すことができる。
本人と『ソウル・コア』が一定距離離れると死んでしまうなんてことは無い。
馬鹿じゃないからね。
...うん、固有魔法だよ。ほら、よくあるでしょ? 持ってるのこと自体珍しいとか、そいつオリジナルとか、よく設定とかにも使われるでしょ? あれだよ。
俺の【心の声を聴けるやつ】も蝙蝠系の魔物の固有能力だったりする。
...そういえば。
「あ、その魔王様なんすけど...」
「おう」
「ここに来る途中にお会いしまして...」
「...おう」
「『サイジャクが目覚めたら話がある。伝えておけ』だ、そうです...」
「お、おう...」
いくら魔王様とはいえ無から何かを生み出せるわけではない。
当然魔物を蘇らせるのにだって当然それ相応の『魔素』を消費するわけでその『魔素』もまた無限ではない。
四天王クラスにもなると当然他よりも『魔素』が必要となり、
大量消費すると当然...。
「ハツカ、出迎えてくれてありがとな...」
『仮眠室』とはメンバーの『ソウル・コア』を保管する場所で中央の魔王城にあり、常に魔王様が護っている。
「あ、はい」
これを壊されると復活できなくなるだけでなく本人も死んでしまう。
とても重要な施設故に魔王城最強の魔王様が護ってるわけなのだが、
「先、戻っててくれ...」
なぜ仮眠室と最後の間が繋がっているか。単に魔王様が護っているというのもあるが、仮眠室から出るためには魔王様と必ず会うことになる。
「はい...」
___その日からしばらくサイジャクさんの元気がなかった。
これからはなるべく3日以内に投稿できるように頑張ります。良ければ暇つぶしにでも見て行ってください。