怠惰な1日
「ごめんなさい。君の事は恋愛対象として見れないの」
アニメのキャラが振られる所を見てしまった。やる事がなくて、惰性でベッドに潜ってたら夜中の2時。寝ることも絶妙に出来なくてテレビを付けたら開幕コレだ。画面では主役なのかモブなのかよく分からない、最近流行りの無個性のようで個性的な奴が振られる所。
最近の流行りは陰キャがクラスで1番の美少女と付き合ったりとかするやつなのだろうか。意外と無個性に見えて、高校で一人暮らししてたり、家族関係が思ったよりドロドロで、無個性になり切れてなかったりすると思うが。
「つまんねぇな……」
チャンネルを変えるとどっかの胡散臭い商品を必死に編集で後付けしたような歓声と共に紹介するチャンネルに移った。この人は何が楽しくて人生生きてるんだろうなとちょっと思いながらも、余りにも興味が無いのでテレビを消した。
朝。結局ダラダラと4時半くらいまで起きてから寝たが、学校があるので起きなきゃいけない。
「翔?起きてるの?学校じゃないの?」
母親の声が聞こえる。起きなきゃと思い、ずるずるとゾンビのように這い上がり食事を取って、学校に向かう。
俺の名前は未崎 翔。何処にでもいる高校生では…ある。とくに美少女の幼馴染もいないし、将来を誓い合ったやつもない。いたらそれは何処にでもいる高校生にはなれないか。
学校に入ると奥の席に向かう。まだ高校生になって1ヶ月も経ってないが、まぁ話すくらいの友達はいる。
「おす、未崎。クソ眠そうだな。俺も2時間くらいしか寝てないわ」
「おす、菊谷。睡眠自慢だけはやめとけ。俺も大概眠れんかったけどな」
コイツは菊谷 誠司。入学式でたまたま隣に座っててラノベを読んでたんで話しかけたらウマが合って今に至る。2週間にも満たない付き合いだが、なんだかんだで気が合う良い奴だ。
「ラノベの中にいるさー、学校1可愛いやつって、割とリアルだと人によるよな」
「菊谷お前なぁ…。まぁでも確かにな。全員が全員可愛いとか美しいとか思った人ってそうそういないよな」
「うちの学校いるか?」
「んー…俺らみてぇな陰キャが言えたタチじゃないけど、八島さんは可愛くねぇか?」
「未崎お前…八島さん狙いだったのか…」
「違ぇよ。話振っておいてその人出したらその人狙いってなんでなるんだよ。そもそも俺なんか眼中に無いだろ」
「そりゃそうだろ。八島さんはどう見ても良いとこのお嬢様だ。お前や俺のようなモブAとモブBになんの感情も湧くわけないだろうが」
八島さんっていうのは本名、八島 菖蒲。多分良いとこのお嬢様なんだろうなって皆言ってる、うちの学校がラノベだったら1番の美少女みたいな扱いされる人だ。誰にでも優しくて、学力もトップクラス。運動神経も悪くないっていう弱点が見当たらないような人だ。
絶対俺のようなモブとは関わることはないんだろうなと思っていた。この時は。