学び
アイリスの言った言葉が響いたのか、ローレルはそれから的を壊しては、杖を折り、的をボロボロにしては、杖を折った。そんなことを繰り返しているうちに、杖は、一本、また一本と減っていった。
後二本も使えば、アイリスが持ってきた杖もなくなる。そんなところまできた時。
ローレルはゼェゼェと、まるで混碧から逃げてきたあの日のように肩で息をした。ローレルの体力もまた、限界に近づいていたのだ。
思えば、こんなにも連続で魔法を打ったことなどない。打つたびに杖を壊しているのだから、一日に一回魔法の練習をしただけで、後は杖を修理する必要があったのだ。つまり、ローレルはこんなに短時間の間に何度も魔法を使った経験がなかった。混碧の中、魔物に襲われ、魔法を何度も乱発したあの日が初めてだ。
考えれば、あの日、あれほどまで体力を奪われたのも、飲まず食わずで動き続けたせいだけではなかったのだ。魔法を使うと体力を消耗する。そんな当たり前のことすら、ローレルにとっては新鮮だった。
「大丈夫?」
「はい……。魔法って、疲れるんですね……」
「訓練をすれば、もう少し楽に使えるようになるよ。……とはいっても、一度にこれほど大きな力を使っていたんじゃ、訓練をしても疲労がつきまといそうだけど……」
あからさまに肩を落としたローレルに、慌ててアイリスは付け足す。
「だ、大丈夫だよ! 子供のうちは魔力を扱うのが難しくても、大人になって、体力がつけば扱えるようになることもあるし! とにかく、今日は休もう? お客さんも今日は来ないようだし、お茶を入れてあげる」
微笑むアイリスに、ローレルはこくりとうなずく。真っ二つになってしまったたくさんの杖と、まだ新品の杖二本を抱え、杖屋へと戻る。
何も落ち込むことばかりではない。たった数時間だが、学ぶことも多くあった。
ローレルは前を向き、アイリスの背を追った。
◇◇◇
「アイリス! 無事か!」
バンッと威勢よく杖屋の扉が開かれる。
ティーカップに口をつけていたアイリスは、目を丸くして扉を押し開けた人物を見つめた。ローレルもまた、もぐもぐと動かしていた口の動きを止め、音の方へ視線をやる。
先ほどのローレルに負けず劣らず、ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返したアスターが、目の前の光景に口を開ける。
「混碧は……」
「へ?」
「大きな、爆発音がこの辺りで何度も……。それに、大きな穴が杖屋の外に……」
「穴……」
アイリスとアスターは互いに目をパチパチと瞬かせる。状況を察したローレルが、あの、とうつむきがちに小さく挙手をした。
「それは、もしかして、僕の……」
「え?」
「さっき、僕が壊してしまった的のことではないでしょうか……」
「的?」
アイリスは、あ、と声を上げる。アスターだけがいまだに意味が分からない、という顔をしてアイリスとローレルを見比べていた。




