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優太の異世界のほほん滞在記〜特殊スキル『衣食住』で、DKトリオは今日も仲良く旅をする〜  作者: まるぽろ
第二章 辺境での冒険者生活〜農民よりも戦士が多い開拓村で一花咲かせます〜
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2-16

 ギャインッ。


 空気を切り裂いて飛ぶ小石は瞬く間にリーダーの狼の腹部へとめり込み、狼が吸い込んだ空気は悲鳴となって吐き出された。


 深追いはしないっ。


 リーダーの生死よりも、徹の元に戻ることを優先した。今度は小石じゃなくて掬い上げた砂利をパチンコにセットし、徹の前に立って構える。


 これを打ち終わったら、小太刀で応戦するしかないかな……。


 ほとんどの狼は大空を警戒していたが、数匹の狼はこちらへと近づいてきていた。しかし、狼たちは一定の距離のところで立ち止まり、吠え、唸り、歯をむき出しにして威嚇してくる。


 ……さっきので警戒してる? 好都合だけどいいの? 


 じりじりとした時間が流れ、徹から声がかかった。


「優太、グッジョブ。大空、社とクリスたちの間にいろよ! 【水精霊よ。川の流れを逆巻き留め、激しく渦巻く坊壁となれ。水渦壁】」


 徹は大きな声で大空に指示を出してから魔術を発動した。クリスさんとゴブリンの周りの水が渦を巻き始め、その渦は徐々にせり上がり、2mほどの高さの竜巻のような壁となった。その間に大空が社の前に辿り着き、徹はさっきとは異なる魔言を述べ始めた。


「【この地に満ちる水精霊よ。数多の固き槍となりて周囲の敵を貫け──】」


 徹の魔言に従い、川の水が浮かび上がり、沢山の水の槍が渦を囲むようにできていく。


 あ、これってユーリさんの氷魔術にちょっと似てる。魔言法典って便利だよね。徹が自分で言ってたけど、魔術師の師弟間の口分で伝わることが多い魔言を調べて、自分の得意な属性にアレンジできるってチートだよね。


「【──水槍葬】」


 そんなことを考えていたら、徹の魔術が発動した。何十何百もの水の槍が渦を中心に一斉に放たれ、周囲にいた狼たちに突き刺さり、透明だったそれは赤に染まっていく。なお、僕たちの方にきた槍は、徹が創り出した船の先のような形に展開された理術盾が弾いてくれていた。


「同時に色んな魔術を使うって、徹はすごいね」


 水槍と理術盾が硬質な音を立てている中、徹に話しかけた。


「レベルアップのおかげで、記憶力や処理能力がかなり上がったからな。ってか、優太もやるよな。狼の群れを前に冷静に動けてたからな」


 徹に言われて気が付いた。確かに、日本にいたころだと狼の前でなんて動ける気がしない。そっか、僕もちゃんと強くなってるんだ。力だけじゃなく心も。


「……ありがと。じゃあ大空は?」


「あいつはいちいち頭で考えて判断してねえよ。ヴィンセント師匠やスケルトンに囲まれて散々ボコられてたから、体が反応してるんだろ。よし、大空があらかた片付けたな。クリスんとこ行くぞ」


 僕と徹が話している間に槍は打ち終わっており、大空は生き残っていた狼たちを追い払ってくれていた。徹は理術盾や水渦壁を解除し、僕たちはクリスさんたちへと駆け寄る。


 びくびくして戸惑っているゴブリンはひとまず放置し、川にざぶざぶと入っていく。徹と一緒にぐったりしているクリスさんを木陰へと運んだ。クリスさんの生気のない体には、細かい引っ掻き傷がところどころついてしまっていた。


「優太、徹、ゴブリンたちも守ってくれてありがとう」


 クリスさんは、弱々しい声でそう言った。


「クリスさん、何があったのかは後で聞くから今は休んで。クズハ、お願い」


 クズハはキュっと鳴いて指先に集めた魔力を吸い込み、クリスさんの傷を舐め始めた。クリスさんは優しく微笑み、一生懸命舐めているクズハの頭を優しく撫でる。 


「クズハもありがとう。でも、アンデッドに回復魔術は効かな……い?」


 言葉とは裏腹に、クリスさんの傷はゆっくりだけど、徐々に塞がっていた。


「そうなの? でも効いてるし、良かったあ。後はやっとくから、クリスさんは影で休んでて!」


 一通りの傷を治療した後、クリスさんは怪訝そうな顔をしながら僕の影へと潜っていった。クリスさんを見送り、周囲に目を向ける。大空や徹と一緒に、せっせと狼の死体を川辺に集めているゴブリンたちの姿があった。小さなゴブリンたちも、おっかなびっくりといった様子で狼を引きずっている。


 ……うん。後はやっとくって言っちゃったけど、どうしたらいいの?


 僕がその様子を眺めていると、視線に気付いたらしい大空がこっちを向いた。


「優太は飯の準備しといて! こっちはゴブと一緒に解体までやっとくから!」


「げっ、まあ仕方ねえか。腹減ったから、がっつりしたのな!!」


 大空に続いて、徹からも注文が入った。僕は二人に「わかったー」と返事をし、持って帰った綿花を拾いに向かった。




「優太、無事で良かったわ」


 ウカテナ商店に入った瞬間、抱きしめられた。顔は見えなくてもわかる。ウカテナ様だ。


「それに、ゴブリンも助けてあげてくれてありがとう」


「……ぷはっ、ウカテナ様はあのゴブリンたちを知っているのですか?」


 ウカテナ様の抱擁からなんとか抜け出て尋ねた。


「ええ。優太たちの近くは見ることができるから。」


「そうなんですね。なんとなくゴブリンって凶暴なイメージがあったのですけど、あのゴブリンたちはそんなことなさそうですね」


「これは見たわけではないけれど、ゴブリンにも色々いて、人に恨みを持っているものもいるそうよ。でも、あのゴブリンたちは自然とともに穏やかな生活をしているの」


 憂いを帯びた表情から慈愛に満ちた表情へと、ウカテナ様は雰囲気を変えながら説明してくれた。そっか、確かに色んなゴブリンがいてもおかしくないよね。


「助けられて良かったです! 言葉は通じませんが、なんとなく仲良くなれそうな気もしますし。あ、ゴブリンにもご飯を買ってあげたいんですけど、どんなのが良いでしょうか?」


「言葉なら……いえ、なんでもないわ。彼らは家族ごとに大皿から直接手で取って食べるから、取りやすいものがいいと思うわ」


「……? わかりました! じゃあ、おにぎりと、唐揚げと、ステーキと…………」


 ウカテナ様が言いかけた言葉は気になったけど、皆がお腹をすかせているのが分かっていたため、急いで注文していく。注文を終えて店の中を見渡すと、いつのまにか綿花が入った袋は消えており、店に入った瞬間にちらりとみえた気がしていたラミエルさんの姿も見えなくなっていた。


 その後、僕はウカテナ様から料理を受け取り、店を後にした。僕が戻ったころにも解体作業はまだ続いていた。僕は社の前の平なスペースにテーブル代わりの木箱をひっくり返して並べていく。それから、購入したものを三枚の大皿に分けて盛り付けていると、ふと視線を感じた。


 つぶらな瞳が6つ、僕のというよりも料理をじーっと見ていた。くすりと笑みがこぼれ、僕は子ゴブリンたちの頭を撫でてから唐揚げを三つに切り、よだれが垂れた口に放り込む。子ゴブリンたちは噛んでいくうちに目をまん丸に大きくしていき、ごくりとそれを呑み込んだ。すると、彼らはぴょこぴょこと左右に揺れながら跳び、クキャキャと言いながら頭の上で両手を叩き始める。


 ……嬉しいときに踊る踊りなのかな? 美味しかったみたいでよかった!


 僕は盛り付けを再開したが、今度はまとわりつくような視線を感じる。そちらに視線を向ければ、見慣れた顔が二つ、ジト目で僕を見つめていた。


 はいはい、急ぐからそんな目で見ないでよ。まったくもう。


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