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プロローグ3

 お爺さんは、大空の頭も優しく撫でてから声をかける。


「お主は大空と言ったかの?」


「ああ!」


「お主はどのようになりたい?」


「爺さんみたいに魔法も使ってみたいけど、俺は魔物をばったばったとなぎ倒せるようになりたい! 俺は、優太と徹の前に立つんだ!」


 とっても大空らしい答えに思わず目頭が熱くなる。大空はいつもそうだった。体が小さくて、チビとか言われてからかわれていた僕の前に立って、いつも僕のことを守ってくれた。


「ふむ。そうかそうか。では、お主には『武辺者』の天稟を授けよう」


 お爺さんが杖を掲げると、無数にある本の一つが光を放ち始めた。その本はふわふわと浮かび、僕達の目の前までゆっくりと降りてくると、ひとりでにぱらぱらとめくれていく。


 やがて、ひと際強く光るページで止まり、輝く文字が剥がれて大空の顔の前に浮かんだ。僕達は頭をくっつけてその輝く文字を覗き込む。


 天稟名:武辺者ぶへんもの

 ギフト:武芸百般(武芸に繋がるあらゆることへの理解力が強化される)

 ユニークスキル:万夫不当(一定時間、ステータスが著しく上昇する。発動できる時間は体力に依存する。レベルが上がると■■■■……)

 成長補正

  筋力:S

  体力:S

  敏捷:A

  器用:C

  知力:E

  魔力:E

 魔力量:E


 スキルの説明の一部が読めなくなってるけど、そんなことよりも……


「「「これって、ゲームのステータス?」」」


「おお、お主らの世界にも似たようなものがあるようじゃな。これはの──」

 

 お爺さんの説明によると、この世界にはレベルが存在し、レベルが上がると各種ステータスが上昇する。ただ、僕たちのよく知るゲームと違う点があった。それは、ステータスは自分の元の能力に補正された倍率をかけた値となり、レベルが上がるとその倍率が増えていくということだった。


 例えば、元の筋力が50の人が補正で1.5倍になったとすると筋力は75となり、元の筋力が60の人が補正で1.3倍になるとその人の筋力は78となる。だから、訓練を行うことがとても重要で、怠慢や老い、怪我等で衰えればそれだけステータスも下がってしまうそうだ。


「大空よ。天稟とは、お主の中にある数ある才能の一つにしか過ぎぬ。魔術に関する能力の伸びは良くないが、お主には風の精霊との親和性が高いようじゃ」


「爺さん──ってか、神様だよな。神様、ありがとう! 風魔術、練習してみるよ!」


 大空が弾けるような笑顔で感謝を告げると、神様は大空の頭を再度優しく撫でてから今度は徹の前に立つ。


「徹よ。お主はどのようになりたい?」


「……お、俺は魔法に興味があります。魔法の研究がしたいし、色々な魔法を扱いたいです」


 徹は大空と僕の方をちらりと見てから話し始める。最初こそ噛んだものの、徹は自分の意思を神様にはっきりと告げた。


 しゃべる前にちらりと大空と僕に眼を向けたのはあれかな。大空みたいに僕達を助けるとか言おうかと思ったのかな? 意地っ張りでそんなことを口にすることはないし、大空みたいに前に出ることはないけど、徹は大空が助けてくれる前からずっと変わらずに僕の隣にいてくれた良い奴だってことくらい分かってるよ。


「ふむふむ。魔法だの。それでは、お主に『魔法家』の天稟を授ける」


 神様は再度杖を掲げ、別の本が輝きながら舞い降りて来る。そして、大空のときと同じように、輝く文字が剥がれて徹の顔の前に浮かんだ。


 天稟名:魔法家まほうか

 ギフト:魔術の理(魔術に関するあらゆることへの理解力が強化される)

 ユニークスキル:魔言法典(既存の魔言が掲載されている法典を呼び出せる。閲覧できる範囲は知力に依存する。レベルが上がると■■■■……)

 成長補正

  筋力:E

  体力:E

  敏捷:E

  器用:C

  知力:S

  魔力:A

 魔力量:S


「「おおお、理屈屋の徹っぽい!」」


「うるせえよ! それより、魔法と魔術ってどう違うんですか?」


 僕と大空が徹をからかうように同じ言葉を発すると、徹が僕たちの頭をぱしっと叩いた。徹が視線を文字から外して神様に尋ねれば、神様はほっほっと笑って説明を始める。


「魔法とは魔術の法だ。魔術とは法に従い、魔言によって精霊に働きかけることでその効果を発動させることができる。お前の『魔法家』は魔術の法の専門家という意味になるな」


「凄そうな天稟なのですが……この天稟は一般的なのでしょうか?」


「今は一人もおらぬが、魔法という言葉は一部の研究者以外ではほとんど使われておらん。例え天稟がバレても、魔術師系統の職業だと思われるだけじゃ。思う存分、魔法の真理を研究するが良い。ああ、お主は特に相性が悪い属性は無いが、水と火の精霊との親和性が高いようじゃぞ」


「腑に落ちないことはいくつかありますが、神様色々とありがとうございます」


 少しだけ不服そうな徹が神様に頭を下げると、神様は徹の頭ももう一度優しく撫で、こちらに一歩踏み出して僕の目の前に立った。


「最後に優太よ。お主には『巫師』の天稟を授ける」


 あれ? 僕には何になりたいか聞いてくれないの? 二人とも武術と魔法に特化してるし、身の回りのこととか全然できないから、料理人とかキャンプ職人とか家事手伝いとか色々考えてたし、『僕は二人のお母さんになります!』って言おうかと思ってたんだけど……


 僕がちょっとだけがっかりしている間に神様は杖を掲げており、顔を上げた僕の眼の前には1つの本が浮かび、文字が剥がれ始めていた。


 ってか、なんか文字多くない?


 天稟名:巫師ふし

 ギフト:精霊親交(精霊に類するものが知覚できるようになり、意思疎通が可能となる)

 ユニークスキル:精霊契約(精霊と魔術的な契約を結ぶ)

 特殊スキル:衣食住(【■■■■の加護】により取得。

 衣:魔石を対価にして、衣類等を購入できる。

 食:魔石を対価にして、この世界に持ちこんだ食糧のコピーを購入できる。

 住:安全な住処を自由に召還・送還することができる。送還前に住処の中にある物は、再度召還されるまでそのままの状態で保管されるが、生物は送還できない。衣食住の質・内容はレベルに依存する)


 成長補正

  筋力:B

  体力:B

  敏捷:B

  器用:B

  知力:B

  魔力:B

 魔力量:B


 ふぁ!? 加護に特殊スキルって何? それに器用貧乏過ぎ! 巫師って魔術師系の職業じゃないの!?


「「衣食住ってまんま優太じゃん!」」


「そうじゃ、お主らの持って来た物は全て回収するからの。代替品や食料はテントの中に入れておくから安心するが良い。それでは、天稟を授けるぞい。ついでに体を作り変えて言葉を無理矢理頭に入れるからの。死ぬほど痛いし、気持ち悪いはずじゃから、早々に気を失っておけ」


 神様が話しを終えると、目の前に浮かんでいた文字が一列に並び、僕たちの頭の中に吸い込まれていく。それと同時に、体中の隅々に何かが入り込んで這い回るような強烈な痛みと、頭を掻きまわされているような吐き気が僕を襲う。


 痛い痛い痛い痛い痛い! おえええええ、ちょ、ちょっと、ストップ! 止めて!


 猛烈な気持ちの悪さにだんだんと意識が遠のいていく中、僕は神様と優しい口調の女性が話しているのが、かすかに聞こえていた。


「異世界の女神よ、これで良かったですかの?」


「はい、異世界の主神様。私の恩人を助けていただき感謝いたします。私は神格を得たとはいえ、ただの天女でございます。どうかそのような言葉づかいはお止めください」


「ふむ。恩人とは?」


「優太は私の神体を数百年ぶりに暗くカビ臭い蔵の中から出してくれたたけではなく、拙いながらも手作りの社まで作ってくれました。私は優太、そして大空と徹がいるからこそ、再び存在することができているのです」


「忘却された神か……。わかった。アルヴィオールの主神『アルヴィス』の名において、そなたがこの世界に存在することを許し、新たな名を授ける。『ウカテナ』よ、彼らを──」


 ──二人の話はまだ続いていたが、ここで僕の意識は真っ暗闇に包まれてしまった。


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