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優太の異世界のほほん滞在記〜特殊スキル『衣食住』で、DKトリオは今日も仲良く旅をする〜  作者: まるぽろ
第二章 辺境での冒険者生活〜農民よりも戦士が多い開拓村で一花咲かせます〜
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2-8

     ◆


 あの後、ミレイさんがハンカチを洗っている隙をついて、僕はそそくさと部屋に戻った。朝食を食べているとき、ミレイさんの綺麗な青い瞳の奥に猛禽類のような鋭さがあった気がしてたけど、勘違いだと思いこむことにして朝食をがつがつと食べてやり過ごした。


 そして朝食後は、大空や徹と玄関前でマルクスさんのことを待ちながら、ミレイさんも含めて四人で談笑していたのだが──


 え~と、ミレイさん? さりげなく余ってないかを探ってくるのは……。いや、まだ持ってますけど……。わかりました、一枚プレゼントしますから。え? 三枚? ……はい。


 ──四人での会話にうまく溶け込ませながら主張してくるミレイさんに、僕は上手くやりこめられてしまっていた。


 話が付き、ミレイさんはほくほく顔でマルクスさんを呼びにいった。扉が閉まるのを見届けてから、徹が呆れ顔で尋ねてくる。


「優太、何だ今の?」


「木箱の中に入ってたハンカチを気に入ったみたいで……あげるって言っちゃったけど、二人は良い?」


「ああ、なるほどな。ってか、あれ断るの無理だろ、まあハンカチぐらいならいんじゃね?」


 徹は消極的な態度で同意し、視線を大空へ向ける。大空は親指を立てた右手を僕の方に突き出した。


「一宿一飯の恩義はちゃんと返さないとなっ!」


「だから、大空は時々親父臭いって。任侠映画じゃあるまいし」


「当てもなくさすらった末に受けた恩だから、まさにその状況だけどな」


 身も蓋もないことを言う徹。……言われてみれば、その通りだよ。


「……そだね。とりあえず村には着けたけど、これからどうなるんだろ?」


「そのうち旅に出るんだろ? 力を付けて、知識を蓄えて、金を貯める。ゲイル爺さんも働き口には困らないって言ってたしな」


 僕が話を変えると、徹はすらすらと意見を述べた。続けて、大空がにっと歯を見せて笑い、元気よく提案する。


「戦う仕事にしようぜっ!」


「当前だな」


「え? 徹は商売かなんかするのかと思ってたよ」


 少し意外だった。大空は予想するまでもないけど、徹は危険がある仕事じゃなくて上手く儲かる方法を見つけようとすると思ってたのに。


 僕がそんなことを考えていると、徹はちらりと扉の方を見てから小声で理由を説明し始め、後半は普通の口調で話す。


「(俺たちの食料はもちろん、神様印の衣類なんてそうそう捌けるかよ。それに、せっかく、珍しい天稟を貰ったんだ。)強くなることに越したことはないだろ?」


 徹は言い終わったちょうどそのとき、玄関の扉が開いてマルクスさんが出てきた。


「待たせたな」


 あれ? 徹はマルクスさんが来ることが分かってたのかな? っと、今はそんなことよりも。


「泊めていただいた上に、村の案内までくれるなんて、本当にありがとうございます」


 僕は感謝の言葉を告げて頭を下げる。今回は大空と徹も僕と同時に頭を下げていた。頭を上げると、マルクスさんは機嫌よさそうに笑う。


「くっくっく、気にすんな。何か見たいものはあるか?」

 

「壁は登れるか?」


 想定していたんだろう。徹がすぐに尋ねた。マルクスさんは目を細め、徹に質問を返す。 


「ほう、登れるが、理由は?」


「まずは、この村と村周辺の地理が知りたい」


「いい心がけだ。じゃあ行くか」


 マルクスさんは歩き始め、僕たちはその後ろを付いていく。間もなく、入ってくるときにも通った内側の門にたどり着く。門の傍には壁へ登るための階段があり、身長ほどの長さの槍を持った兵士が詰めていた。マルクスさんがその兵士に一言二言話すと、兵士は「はっ」と答えてから道を開く。


 ん? マルクスさんって何者? 他と比べて家も立派だった気がするし、もしかして偉い人?


 僕たちは3mほどの高さの階段を登り、中央をぐるりと囲む石壁の上に立った。外側にあった丸太の壁とは違い、幅が2mほどある石壁はちょっとやそっとでは崩れそうにない。


「さて、じゃあ説明していくか。中央に見える大きな館はこの村を治める領主の館、その横にある一回り小さいのはカヨコス鎮守府ドーラ森林開拓村支部だ」


 マルクスさんは、やや小高くなっている石壁の内側の中央を指差しながら説明を始めた。さっそく分からない言葉があった僕は、手を上げてマルクスさんに質問する。


「はい! 鎮守府ってなんですか?」


「……? 別に手は上げなくていいぞ? 鎮守府ってのはその地域を守る軍の根拠地だ。クリフォード王国は5つの地域に分かれていて、それぞれに将軍が長官を務める鎮守府が設置されているんだよ」


 マルクスさんは不思議なものを見るような目つきで僕を見たものの、丁寧に説明してくれた。今度は、徹が手を上げずに尋ねる。


「貴族は軍を持たないのか?」


「持ってるぞ。基本的に町や村の治安維持は領主の兵が担い、魔物や盗賊の討伐は軍が担う。この村はまだ領主の兵が少ないから、軍が警備やらなんやらを肩代わりしてるがな」


「常設軍がそんなにいるのか?」


「当たり前だろ? 兵士がいなくて誰が魔物から民を守るんだよ。まあ、ここには純粋な農民なんてほとんどいないがな」


「純粋な農民? それに、農民がほとんどないっていうのは?」


「石壁の外側で農作業しているのが見えるか? あれは戦奴という、もし戦争が起これば最前線に出される罰を負った重罪を犯した連中だ。今は戦争が起きてないから開拓に駆り出されてる。周りにいる武器を持ったのが軍の兵士、武器を持っていないのが指南役の農民だな」


 矢継ぎ早に質問を重ねる徹に、マルクスさんは一つ一つの問いに対してきちんと答えてくれた。せっかくだから色々聞いてみようと思い、僕も尋ねてみる。


「農民が少なくて大丈夫なんですか?」


「もう少し防衛機能を固めたら、カヨコス一帯から農民の三男坊以降が連れてこられるさ」


 僕が次の質問を考えている間に、徹が眉間にしわを寄せながら口を開く。


「戦奴のレベルは低いのか? これだけ多いと反乱を起こしそうなもんだが……」


「戦闘の実践訓練もあるから農民より低いなんてことはない。反乱に関しては精兵が多いからまず無理な上に、ここで働けば恩赦が出されるんだよ」


 僕と徹は丸太の壁と石壁の間にある土地を見渡す。スケルトン軍団ほどではないが、千人よりは多い人々が開墾に精を出していた。


「……何だこの村? 戦士ばっかりじゃねえか」


「ここは対魔物の最前線だぞ? 戦えない農民なんてそうそう連れて来れるかよ」


 徹の愚痴っぽい呟きに、マルクスさんがにべもなく言い放つのであった。


 ……あれ? ようやく人里に着いたのに、アレックスさんたちの所とあんまり変わらないような気がするのは僕だけ?

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