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優太の異世界のほほん滞在記〜特殊スキル『衣食住』で、DKトリオは今日も仲良く旅をする〜  作者: まるぽろ
第二章 辺境での冒険者生活〜農民よりも戦士が多い開拓村で一花咲かせます〜
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2-5

「いやあああああ!」


 クリスさん、魔物はいないんじゃなかったの!?


 僕と大空は慌てて川から上がる。叫び声に反応した徹は、腰を落として身構えていた。


「ゴブリンか!? どこだ!」


「はあ!? 失礼ね! 誰がゴブリンよっ!」


 ここからは見えないけど、木の向こう側から女の人の声が聞こえた。徹は振り返り、声をかける。


「あ、お前、人間か!?」


「ひっ! こ、こっちむかないでよ変態!」


「変態じゃねえ!」


 うん、これは徹が悪いよね。女の人に全裸で近寄ったら変態呼ばわりも仕方ないよ。


 僕がそんなことを考えながら急いで着替えていると、大空が小声で耳打ちしてくる。


「優太、今のうちにテント出してくれ。着替えはともかく、武器も中にある」


「そっか、ごめん。気が付かなかった。【召喚】」


 僕は木の陰で相手から見えにくい場所にテントを召喚した。大空は中から二人の武器や着替えを取り出し、急いで装備していく。しかし、大空の準備が終わるより前に徹と女の人の口喧嘩の声がする場所よりも奥の方から、がさがさっという藪をかき分けてくる音と男の人の声が聞こえてきた。


「アネッサ、どうした!? むっ、誰だ貴様! アネッサに何をした変態!」


「なんもしてねえよ!」


「こんな森の中で全裸とは……さては、魔物が化けているな!」


「化けてねえって! ちょっと落ち着け、おっさん!」


「おっさん!? 俺はまだ20代だ! この変態め、剣の錆にしてくれるわ!」


「おまっ!? どこの人斬りだてめえ!」


 やばっ、ちょっと不味いかも。


 僕は大空に先に行くことをジェスチャーで伝え、木の幹に沿って声のする方へ近づいていく。小太刀は抜かずに右手を添え、足元の影を踵でとんとんと叩く。気が付いているはずなのに、クリスさんは出て来てくれない。


 身を隠しながら様子を窺うと、幸いなことに革と金属製の装備に身を包んだ冒険者風の男の人も剣は抜いていなかった。しかし、男の人はいつでも剣を抜ける構えを取っているし、徹は左手には理術の盾を作り出し、右手には赤い精霊が集まってきている。


 どうしよう? 武器を持った僕が出ていったら出て行ったで刺激しそうだし、武器を置いていくなんてのはあり得ない。でも、時間をかけるのも徹に悪い……。ってか、なんで徹はあの姿で武器を持った人と言い合えるの?


 緊張で心臓の鼓動が五月蠅い。小太刀に添えた手に、つい力が入りそうになる。僕が出ていこうか迷っていると、男の人の後ろの茂みから深い灰色のローブを着たおじいさんが出てきた。


「ほお……理術盾か。なかなか達者ではないか」


「ゲイル、遅いぞ!」


 男の人の仲間か。もう待てない。行こう。


「年寄りは労わるものじゃて。それより、その小僧は変態ではあるが人じゃよ、マルクス」


「変態でもねえ!」


 ゲイルと呼ばれたお爺さんの言葉に徹が反論している中、僕は何でもない様子に見えるようにゆっくりと木の陰から出て、徹の横に並ぶ。


「はいはい。徹、落ち着いてね。とりあえず裏で服着て来てよ」


「一人で大丈夫か? あ、大空来たな。服着てくるわ」


 徹は僕の心配をしてくれたが、こっちにくる大空の姿が見えたみたいで、僕が差し出していた服を受けとってテントの方に歩いて行った。徹と入れ替わりに、装備を整えた大空が僕の隣で自然体に構える。それだけで僕の緊張は治まっていく。


 よかった……あ、ブーツは間に合わなかったんだね。いや、大空だし、濡れた足を入れるのが嫌だっただけかも。


「誰だお前は?」


 マルクスと呼ばれていた男の人が僕を睨みつけながら誰何してきた。


「僕はユータです。こっちの金髪がヒロで、さっきの黒髪の全裸男はトールと言います。僕たちは里から出て町に向かっていたんです」


 大空の足元まで見える余裕ができていた僕は、アレックスさんたちと一緒に考えていた設定を自分でも驚くほどすらすらと話せていた。


「……里? 大戦から逃げた者たちが隠れ住んでいるムラがあるという噂を聞いたことはあるが……まさかお前たちがそうだと?」


「その通りです」


「町へ向かう目的は? なぜ今更ムラから出てきた」


「……流行り病で、僕たち以外の里の皆は……」


 僕は言葉を濁し、手を握りしめ、下唇を噛んで目を伏せた。戦争当時の仕事は教えてくれなかったけど、幽霊お姉さんが教えてくれた泣いているように見えるテクニックだ。里を出てきた理由は、アレックスさんが流行り病で小さなムラが全滅するというのは度々起きることだと教えてくれた。ちなみに、ヴィンセントさんに試してみたら号泣してた。

 

「そうか……辛かったな……」


 えっ? もしかしていけるの?


「ちょっと! 変態の仲間の言うことを信じるつもり!?」


 どうにかなるかと期待したけど、徹と言い争っていた赤毛の女の人が口をはさんだ。そこに、防具は装備せずに服だけを着て戻ってきた徹が言い返す。


「誰が変態だ! てめえ、指の隙間から凝視してたじゃねえか!」


「な、何言ってるのよ! あんたの粗末なもんなんて見てないわよ!」


 二人は再びぎゃあぎゃあと罵りあい始めた。呆れている様子のゲイルさんはわざとらしいため息をつき、マルクスさんだけでなく僕たちにも聞こえるように話し始める。


「マルクス、里が流行り病で全滅したうんぬんはともかく、末裔というのはおそらく本当じゃぞ」


「理由は?」


「変態小僧の理力盾を見たじゃろう。あれは随分と古い術式のものじゃったからの。もう剣から手を離すのがよいて」


 へー、理術にも術式なんてのがあるんだ。徹はゲイルさんと話したほうが楽しいんじゃないかな。


「……わかった。しかし、どうする?」


「開拓村にはいくら人手があっても構わんじゃろ」


 ゲイルさんはそう言って、僕たちの方へと視線を向けた。


「えーと、つまり?」


「儂らが住んでる村に案内しよう」


「ほんとですか!? ありがとうございます!」


 僕は二人に深くお辞儀して感謝を告げた。僕が頭を下げなかった大空をちらりと見ると、大空は構えを解かずに目礼だけで済ませる。ちゃんと頭を下げるように言おうと口を開きかけたとき、マルクスさんが笑いながら僕に告げる。


「くっくっく、坊主、今のはヒロって奴が正しいぞ」


 え? なんで? よく分からないけど、村に連れて行ってくれるなら良っか!

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