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優太の異世界のほほん滞在記〜特殊スキル『衣食住』で、DKトリオは今日も仲良く旅をする〜  作者: まるぽろ
第一章 師匠'sとの出会い〜スケルトン軍団を昇天させます〜
11/41

1-8

 その日の夜、僕を眠りから起こしたのはスケルトン軍団の怒声や悲鳴ではなく、体中を襲う強い痛みだった。


 すっごく痛い!? 神様から体を作り変えてもらうときほどじゃないけど、何これ!?


「ううう、大空、徹……起きてる?」


「大空は寝てるけど、俺は起きてるぞ」


 僕は徹の声がした方にごろんと体を回す。大空は寝息を立ててぐっすりと眠っていたが、徹は何かの灯りの下で本を読んでいた。僕は痛みに耐えながら徹の近くまで這い寄り、声をかける。


「なんか、筋肉痛というか体が熱いんだけど……これって大丈夫なのかな?」


「そうか、優太は師匠たちが説明してくれてたとき、いなかったもんな。これはレベルアップしてるときの痛みらしいぞ」


 徹は栞を挟んでぱたんと本を閉じ、体を起こして胡坐をかいた。僕も生まれたての小鹿のように全身を震わせながら、同じように胡坐をかいて徹と向きあう。


「なんで僕たちがレベルアップしてるの?」


「いやいや、お前が幽霊のおっさんたちを昇天させてるからだろ」


「へ?」


 思わず間抜けな声が出ちゃったけど。どゆこと?


「おっさんたちは魔物の類だから、倒したらレベルが上がるんだと」


 それって、なんか複雑なんだけど……。半透明なおじさんたちは無反応だけど、人の姿だし、魔物とは思いたくないし、思えない。


「じゃあ徹と大空は? 二人はレベルアップしてないの?」


「いや、俺らもレベルアップしてるよ。師匠たちとの修業が近くで魔物と戦ってる扱いになるから、俺らにも経験値的な何かは分配されてるらしい」


 良かったぁ。僕だけレベルアップして、二人がレベル1のままとか嫌だもんね。でもそれじゃ、なんで徹はそんなに普通なんだろ?


「徹は、体、痛くないの?」


「痛いに決まってるだろ。まあ、俺はステータスの伸びが知力や魔力に偏ってるからか、筋肉痛はそうでもないけど、頭と体の中の魔力が熱をもってる感じだな」


 やせ我慢か。まったく、徹は異世界に来てもいつも通りだね。


「ってことは、大空は?」


「そりゃ、全身筋肉痛だろ。んで、お前はどっちの苦しみも味わってるってことだな」


 うわあ……大空は、それでなんであんなにすやすや寝てられるんだろ。それに、器用貧乏って、こんなとこもダメじゃん。でも、僕でこれだから、二人はそれぞれの辛さがもっとひどいのかな。


 徹にそれを伝えても、はぐらかすのが分かっていた僕は、話題を変えることにした。徹の傍でふよふよと浮かんでいる小さな火が気になってしょうがなかったんだ。


「……大空はよく眠れるね。話は変わるけど、その火って何?」

「ん? 魔術だよ」


 徹は何でもないことに告げるが、僕はそれどころではなかった。体の痛みも忘れ、前のめりに徹に詰め寄る。


「えええ?! なんで徹は使えるようになってるのさ!?」

「なんの修業をしてたと思ってんだよ」

「僕にも教えて!」


 こんな世界に来たんだもん、僕も魔術使ってみたい! 


「ああ、わかったからちょっと離れろ! 危ねえよ! まずはちょっと説明すっか、【魔言法典】」


 へ? 徹ってば急にどうしたの?


「……何中二病みたいなこと言ってるの?」


 僕が生温かい視線を向けて呟くと、徹は顔の血管をぴくぴくさせる。


「俺のスキルだよ! 俺だってちょっと気にしてんだよ! ふう……ったく、じゃあまず、神様も説明してた通り、魔術は法に従って魔言を紡ぎ、精霊に働きかけることによって魔術を発動させるってことは覚えてるな?」


 あー、うん。言ってた、言ってた。よく分かんなかったけど。


「うん。なんとなく」


「お前もかよ……。んでな、お前は見えてないんだろうけど、この【魔言法典】とアレックス師匠の説明によるとだな……」


 徹の説明によると、この魔言のルールは色々とあって『①呼び掛ける、②何をして欲しいか伝える、③魔術名を声に出して発動する』というのが基本みたい。


 それに、使用する魔言の種類がいくつかあって、徹が言うには強力な魔術になればなるほど古文のような詠唱が必要になることもあるし、種類が混じっちゃうと精霊さんが混乱して効果が落ちるんだって。


 うん、よく分かんないから徹に少しずつ教えてもらお。


「じゃあ、一番簡単な魔術を使ってみるからな。っと、言い忘れてたけど、魔言を言う前に、まずは自分の魔力をばらまいて、目的の精霊をイメージしながら呼び寄せるんだ」


 徹はそう言いながら右掌を上に向ける。僕が魔力を集めるときと同じように、徹が掌の上に魔力を集めると、それに目がけて赤いきらきらしたものが集まってきた。


「じゃあ行くぞ。【火の精よ、小さな火を灯せ。小火】」


 徹が魔術名を口にすると、徹の掌の上にライターの火よりも少し大きい程度の火が浮かび、赤いきらきらが嬉しそうに踊っているように見えた。僕がその光景をじーっと見つめていると、徹は左手の掌を上に向けて説明を続ける。


「これが、現代魔言の小火だな。んで、アレックス師匠に教えてもらった中世魔言になると、【火小精ヨ、小サキ火ヲ灯セ。小火】」


 あれ? さっきと言葉が違う? それに──


「──ちょっと大きい?」


「そうなんだよ。小火だとこの程度の違いだけど、大規模な魔術になればなるほど、違いが出るらしい」


 徹は少し誇らしそうにしながら、僕の目の前に火を移動させる。


「へー、面白い! 徹、こういうの好きだから良かったね!」


「まあな。他にも色々教えてもらってさ。例えば……」


 楽しそうに話す徹の声を聞きながら、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。


 

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