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第5話「未知という危険」

ーーどこまで遺跡を理解していたのか?


詰まる所そこに行き着く問題だった。遺跡から様々な技術を吸い取っている。だがこの遺跡が何なのかさえ、科学者はわかってはいないのだ。昴は発掘施設から出土した技術を使う四式戦闘機にあらためて向き直った。昴は、直接発掘施設の護衛と襲撃で身近な歩兵の友人に「何か知ってるっスか?」と訊き、「昴には命を救われた恩があるからなぁ。……秘密だぞ?」と『標本』を見せてもらった。発掘隊と護衛を襲った、コモンウエルスの歩兵だ。たった一人で、数十人の弾幕の中、三人も負傷させた化け物だ。およそそれは『人間ではなかった』ということで保管されていた。外皮は珊瑚のように硬質化し、銃弾は元より、擲弾にも充分な防御力を持っているそうだ。「どうやって倒したんスか?」昴が訊くと「戦車で轢き殺した」と返された。


「つまり、なんらかの病気があの発掘施設に蔓延して、ホーネットが空爆で殺菌したわけだ」「昴たちを無視してでも優先するほどには、ね」「なんだと思う、昴」「どう見ても遺跡由来のもの!」「だろうなて感じはするよ」コモンウエルス兵は全身が黒焦げだ。だが焼死したわけではない。火炎放射器は使っていない。元から黒焦げで襲ってきたのだそうだ。人間が生きていられる損傷ではないし、皮膚は硬質化、剥がせば新鮮な肉があり今だに瑞々しい。昴も未央も見たことのない標本だ。「私こんなの見ちゃった夜寝れるか心配だよ」「未央ちゃんてば怖がり」「今晩は月が出てない。こんなの来られたらわからないぞ」


未央が「気持ち悪ッ!」て言った直後、滑走路が爆ぜた。銃撃と手投げ弾だった。攻撃を受けているのだ。「未央ちゃん!そういうこと言ってるから呪われるんスよ!!」「私のせいじゃないから!」滑走路を挟んで、滑走路防衛隊とゲリラが銃撃戦を始めるのが見えた。積まれた塹壕に据えた重機関銃が滑走路に進入したゲリラの群れを木偶のように薙ぎ倒す。巨大なパラボラアンテナのシートが剥がされ、強力な電磁波を照射する兵器の砲塔が動き、侵入してきたゲリラは内側から沸騰し破裂した。


「拳銃は持ってる?」「護身バッチリ!」昴は肌身離さない拳銃を抜いた。何があるかわからないからだ。物陰から地上戦を見た。照明弾があがり照らされるが、それでも影のようなものが高速で這い寄ってくることしかわからなかった。光が当たらないのではない、元から焦げたような体なのだ。「さっき見たのと似てる」と昴は呟いていた。匍匐で、だが人間が走るよりも速くソレは這ってくる。「20mm自動砲の砲音だ。それに、150mm級も。陸さん、なんて重火器を持ち出してるんだ」未央が言い「肌がピリピリする」重砲の弾着が空気を揺らした。流石に重砲を滑走路に撃ち込みはしないが、それでも過剰なまでの火力が投じられていた。滑走路防衛隊だけでなく、陸軍の砲兵が全面的に支援に応じたのだ。


怪物だった。一体は、下半身のない状態で腕だけで匍匐の要領で恐るべき速さで迫ってくる。生きている人間とは思えなかった。照明弾と探照灯の光の中にいたそれはやはり、人間ではなかった。「奴らに破片は薄い!戦車で引き潰せ!戦車、前へー!!」昴と未央を見つけ、その人間ではない一体が滑走路を這ってきたがそれは、滑走路防衛隊が出した戦車にすり身にされた。襲撃は数時間続いたが、撃退には成功した。「……お前も同じ、スか?」ゲリラの襲撃が収まり愛機である四式戦闘機を見た昴は呟いた。

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