第4話「燃える発掘施設」
「昴ー!新しい発掘施設なんて吹っ飛ばしてこいよー!」「はっはっー、気前よく行くっスよ!!」珍しい、四式戦闘機に爆装が付けられていた。新しく発見された敵の発掘施設への嫌がらせだ。吸着誘導爆弾が一本、胴体にぶら下がっている。熱赤外線『画像』を『目玉』が追って自分で舵を切れる、賢い爆弾だ。他にも四式の翼には、対機械用の電磁波照射装置が付けられた。強力な電磁波を機械に照射して機能停止させる代物だ。どれも遺跡の技術が使われていた。操縦席に寄り添っていた整備士がエンジンの回転数を確認して、安全を確認すると「閉めます」と風防を閉める。昴と四式はボコボコの滑走路を飛び立ち、その後を未央が追って上がる。普段と何も変わらない、繰り返しの景色が焼かれた。
「今日も雲が多い」「昴、油断は禁物だよ」雲量が多いのはいつものこと。空の障害物を気にしながら、昴は膝上の地図と方角を確認しながら機体を導いた。「この辺りなんすけど……」と昴は発掘施設を探した。長居は避けたいが、幸運にも雲の隙間に見つけられた。「様子がおかしい」だが、昴は勘した。爆撃の標的であった発掘施設からは、空からでも目立つ太い黒煙が吹き昇っていた。燃えているのだ。それは明らかに、『攻撃を受けた後』だ。昴は未央に合図を送る。進入するから援護して、と。昴の四式は緩い降下で速度を乗せつつ、発掘施設上空に入った。黒焦げの大型重機、炎上する装甲車両に破壊された施設が見えた。動く人影はない。戦闘の跡だった。昴は首を傾げる。
「敵機、敵機。昴、ミーティアが来たぞ」疑念が泥のように頭の中で引っかかる昴の耳に、未央からの警告が届いた。超低空飛行の昴と四式に向かってミーティアが降下に入っている。その背後には一〇機以上の爆装したホーネットが編隊を組んでいた。「未央ちゃん、雲に退避するよ」と昴は「勝ち目がないならさっさと逃げるっス」今更上昇すれば速度を失って狙い撃ちだ。昴はプロペラが樹木の端を掠る低空のまま複雑な山肌に沿って飛んだ。後ろを振り向けばミーティアは、地面へ激突する勢いで迫っていた。昴が雲の中へと逃げる瞬間よりも、加速したミーティアのほうが速かった。ミーティアの機種、射線が重ねられた。昴は四式を空に跳ね上げるように射線から逃げたが「?」ミーティアは一発も撃っては来なかった。そしてホーネットの大編隊は、炎上する『自分たちの発掘施設』へと殺到し、全て跡形も無くすほどの執拗な攻撃を繰り返した。「……アイツか」見逃されたミーティアの機首には見覚えのある絵が描かれていた。何日か前に、急襲してきたミーティアだ。花を持つ妖精。縁があるな、と昴は思った。
「昴、見て」未央に促された先には、空爆の中で上がる対空砲火だ。黒い傘や光る雨は何度も見覚えがあった。撃ち上げているのは、ミーティアやホーネットと同軍の兵器だ。味方撃ちか?しかし昴の目にも、明白な敵対行動、強い衝動を感じた。互いが全力で潰そうとしている。「何が起きているんスか」「わからないよ、昴」だが昴には感覚に覚えがあった。遺跡由来技術と遭遇した時のような感覚だ。原理がわからない、その違和感がある。遺跡は、今の人間にはわからないことが多すぎる。何が起こってもおかしくはないーーありえるのだ。