激動
クラッススvsカエサルです。
語彙力が圧倒的に欠如していますが是非!
勝負をふっかけてきただけあってクラッススは強かった。打った炎も氷も謎の煙で無効化されてしまっている。このままでは俺の精神が保たない。肉弾戦に持ち込もうとは考えた。彼の魔法は反魔法のみらしく、反撃は一発もない。あくまで自滅を狙っている。が、それがわかっていてなおその芸当は不可能。理由は至ってシンプル。
───俺とクラッススは背丈は互角といえど彼は鍛え上げたのだろう鋼の肉体と2Mはある大剣を携えているの一方、俺の身体は貧弱貧弱でとても勝負にならないのが目に見えている。
彼が接近戦に持ち込まないのは俺を舐めてかかっているから。そのため俺は意外性かつ一撃で倒さなければならない。ルールは15分前にサヴィターが殺したら負け、制限時間なし、戦場はこの丘の上のみという簡単なものに設定してくれたが、果たして勝算は見込めない。ノープランでごり押し大作戦とかいう下策はとりたくない。その間にも走り込みながら炎と氷を角度を変えながら打ち込むも煙で消されてしまう。なお彼は未だ堂々と仁王立ちしている。まさか弁慶かと思ったがさっきストレッチで身体をほぐしていたのでそんなことはなかった。彼の反魔法というのは煙が正体なのか…そうか。
カエサルの足が止まった。
「どうした、もう終わりか?」とクラッスス。
「あぁ、バテた。ちょっと休憩だ。」右手を腰に当て、左手は片膝に置いて息を整える。
大剣を右手に一直線に俺に向かってきた。だが
「来ると思ったぜ。飛んで火に入る筋肉よ」
氷魔法を最大限まで左手の手のひらを天に掲げ、指先に力を込める。一か八か、ぶっつけ本番で一世一代の賭けに出る。「氷結の長槍!!」
クラッスス目掛けて叩きつけるように飛ばす。
───走り続けているにも関わらず、反魔法が発動。煙で視界が遮られる。
───ここでクラッススという男について説明しておこう。彼は今カエサルと闘っている丘の麓の村に生まれたのではなく、山を3つほど越えた先の村で生まれ、放浪し約7年修行を積んだ。魔法は先述したとおり、イメージが重要、言い方を変えればセンスがなければ使えない。だから小さな村で魔法が使える者というのは珍しく、さらに反魔法は生まれつき使え、誰も見たことがないものだったから村の住民からは「神童」と呼ばれ、魔法を悪用する輩を排除するなど民衆から英雄視される一方、同年代からは嫉妬され迫害されていた。異様に目立つものを退け、中庸な世の中にする彼らの姿に、憤りを感じた彼だったが、村の者たちは「クラッスス、貴方にそんなことができるやつはいない」と取り合ってくれなかった。自分を一般人として見てくれない村人たち、自分の息子を良い側面しか捉えられない両親、自分を高めるでなく他を蹴落とすことだけを考える同期。まだ7歳だった彼の精神を崩壊させるのは十分だった。
───自分の魔法のみでは奴らを倒せない。
密かにそう思った彼は密かに村のすぐそばの山で鍛えに鍛え、独学で筋肉を身につけた。だがなおも「いじめ」は続いた。山の名は安禄山というのだが、修行を始めて3年、耐えに耐えて、村中を血肉に変えてやると恨みに恨んでいたが、少年は復讐を果たせずに村は壊滅する。彼が山籠りの最中に、異民族の軍隊が襲いかかっていたのである。すぐさま村は惨殺と略奪の嵐となり、炎上した。
このとき、彼の目から何かがこぼれた。3年前、身の回りを憎んだときと同じもの。
彼らを殺したいと思う反面、愛していたのだろうか、それは彼にもわからない。しかし彼に帰るべき場所はなくなった。刃向かうものを朱に染め、孤独の青春を旅した。
クラッススにとって、「生きる」とはなんなのか。問うことだけがいつの間にか生き甲斐になっていた。───戦って確かめるしかない。過激な思想だけが残り、弱った者を嬲り殺す凶悪犯が爆誕したのである。
───カエサルと言ったか、かなり強い男だった。しかしこの期に及んで氷魔法など効かない。またひとつ、勉強になった。
カエサルは考えていた。反魔法の原理を。
自分は炎と氷しか使えないが、わかったことがある。煙が必ず発生すること。しかも、氷結の長槍を打ったことでわかった、その範囲は自分が打った威力分広くなる。となれば、ひとつの仮説を立てた。
───クラッススの反魔法は、自分に向けられた魔法と相殺する魔法を生むのではないか、と。
ビンゴだった。
走りながらの炎と氷はすぐに消えていた、が今し方打った氷結の長槍を相殺した霧は、まだ消えていない。
彼は腰に当てていたはずの右手に力を集中させすぐさま唱えた「灼熱の大魔球!!」煙の中心に向かって投球。
「いけぇぇぇぇぇぇ!!!」
パキィィィィィィン!
と音と共に丘の一角に大氷山が完成した。
クラッススはこんなに掘り下げるのはもう少し後にする予定だったんです。(笑)