閑話:ヘスフィラル視点 私の幸運の女神
ヘスフィラル視点の閑話です。
この世界の設定なども出てきますので、なるべくお読みくださると嬉しいです。
彼らの頭がいかに空っぽかがわかり(?)ます。
あぁ、愉快だ。
あの憎きメティーナは漸く領地にすっこんだらしい。
あれは半年程前のことだった。
小柄な服装を見る限りあまり身分が高そうではない女子生徒がハート、クローバー、ダイヤ各寮の“女王”たちに囲まれていた。ここにスペードの女王がいないのは、憎き私の婚約者、メティーナが3年後入学してきたときに就任すると内定しているからだった。そして私はそんな女の婚約者なので“キング”に就任していた。本来であれば私は侯爵派なので第2皇子様がたと共にジョーカー寮に入寮している筈であったのに。この第2皇子様だって、ご年齢は上なのに側妃の子であったがために後に生まれてきたメスクリウス様が第1皇子となり、彼は第2皇子となってしまったのである。
そこで私はふとじっと見てみると、私は囲まれている女子生徒が最近声を掛けてきて、気に入ったので側に置いている女子だと気づいた。これは助けてやらねばと間に入ろうとすると、こんなことが聞こえてきた。
「あなた、婚約者がいる男性に近づくなんて!」
「しかも私達の大事な大事なメティーナの!」
「恥を知りなさい!!」
「そんな...私は何も...」
私はもう聞き捨てならないと話に割り入った。
「女王様がた、ここでこの女子生徒に何をなさっておいでで?」
「あら、スペードのキング殿、少しこの夢見がちな後輩に常識をお教えしていただけよ?」
「何か問題でも?」
「いやだ、虐めているとお思い?これは親切心ですよ?」
何が親切心だ。
彼女は泣いてしまっているではないか。
「彼女は泣いているのに?
親切心で嬉し泣きしているとでも?」
「そうではございません?」
「わたくしたちは忙しいので。失礼致しますわ。」
「次会ったら覚えていなさい、アリス様?」
彼女達は優雅に略式の礼をしてこの場を去って行く。
「大丈夫か、アリス?」
「ヘスフィラル様...わたし、とっても怖くて...
いきなり先輩方がいじめてきたのです。
うっううぅぅ...わたし、もしかしたら何かお気に触るようなことをしてしまったのかしら?」
「大丈夫だよ、アリス。君寮はハートだったね?」
彼女はしゃくりあげながら頷いた。
「僕はもうじきスペードからジョーカーに移ろうと思うんだけど...
それまでスペード寮にいていいよ。」
その瞬間、彼女は顔を喜色に染めた。
「あと、君さえよければ...
僕の永遠の伴侶になってほしい。」
「め、メティーナ様は?」
「あんなアリスに嫌がらせをさせるようなやつ、すぐに婚約を破棄するさ。それまで、待っていてくれるかい?」
「・・・はい。」
聞けばアリスは男爵家の落とし胤というに、2個も属性を持っているらしい。公爵家でも二個持っているかいないか、という程度なのにだ。しかも1つは光らしい。この国では光の属性は本当に少ない。しかも、光は聖属性に進化する可能性もあるのだ。これなら、属性を多くとも2つしか持っていないであろうメティーナよりよっぽど良いではないか。
父上はよく、
「あのメティーナは属性が2個あることだけが取り柄だ。他に何をよく思ってあんな女を家に入れようか。」
とおっしゃっている。
それならアリスの方が父上も喜ぶだろう。アリスなら他に取り柄もたくさんあるのだから。
思惑はうまくいった。
わたしはあの女の12歳の誕生パーティーの場で婚約を破棄してやった。 いい気味だ。
こちらが罪に問われるなどとふざけたことを言われたときには少しひやっとしたが...
最終的には父上も母上も褒めてくださった。
アリス、君は本当に私の幸運の女神だよ。