メスクリウス皇子との再会
「メティーナ、久しぶりだね。
なんで久しぶりなのかな?」
ええと、それはですね...
「ヘスフィラルに宮殿に行くな、と言われていたらしい。そなたに会うからだそうだ。」
陛下...
仰らないでください...
「ふっふっふ、そうか。(小声で)あいつ本当にどうしてやろうか。」
「?」
メスクリウス皇子は何かをつぶやくと私に満面の笑みを見せる。
!!!
「私、今日は婚約破棄のご報告に参ったのです。
私メティーナ・フォーサイスとヘスフィラル・ムアヘッドは正式に婚約を破棄させていただきます。
皇帝陛下のご命令における婚約でございましたので、ご許可をいただきたく存じますわ。
重ねてご命令に逆らうことになってしまい、大変申し訳ございませんでした。」
「ふむ、許そう。
それと、今回の婚約破棄は相手側からの申し入れだったな?」
私が肯定すると、
「ムアヘッド家はどうしてしまおうかのう。」
だめだめ!
「厳重注意にとどめておいてくださいませ。
・・・私の出番がなくなってしまいますでしょう?
あの方の婚約者であることはアリス様には無理です。
どうせすぐに婚約を発表して、またアリス様はほかの男性に乗り換えますわ。その時が復讐のタイミングなのです。」
皇帝陛下が固まっている。
私の顔を見て。
まあこんな悪人顔が復讐とか言ったらそうなるか。
「ふははははっ!
メティーナ、最高だね。
僕もヘスフィラルのそんな顔が見てみたいよ!」
ドSには上には上がいるのだ。
「お褒めいただきありがとう存じます、皇子殿下。」
私がそういうと、彼は怪訝な顔をする。
顔がいいとそんな表情も絵になる、ってそんなことを考えていると、
「・・・メティーナ、いつから僕のことを皇子殿下なんて呼び始めたんだい?
昔はクリスお兄様って呼んでくれていたのに。
なんなら今でもそう呼んでくれて構わないよ。
・・・いや、もうクリス様の方がいいか。
ほら、呼んでみて!」
えっ、そんなウキウキした顔で見られても。
「早く!」
なんでこの方はこんなに顔が整っているんだ。
見つめられているとこっちが赤面してしまう。
「う、ぅぅ。・・・ク、クリス様...」
「若いって良いのう。」
殿下改め・・・ク、クリス様は満面の笑みで頷いている。
話がどんどん違う方に向かっていたが、私はもう1つの報告をしなければならないことを思い出した。
「あっ私、明日領地に帰還します。」
「「な、なあぁぁぁにいぃぃぃ!!」」
「 え?少しゆっくりしてこようと思いまして。」
なんか2人の顔が尋常じゃない。
「どれくらい行ってしまうのだ???」
うーん、あんまり期間は考えていなかったのだけれど・・・
学園に入学するのが15歳で、今12歳だから、準備期間を半年とすると、
「2年半くらいですかね?」
「「に、にねんはん!!??」」
面白いほど似ている親子である。
トントン。
ノックの音がする。
「失礼します、皇帝陛下、大きな声が致しましたが何かございましたか?」
「いやいや、なんでもないのだ。」
「なんともないのならそろそろ執務のお時間です。」
「なにっ!あぁ、そうだな。
メティーナ、元気でな...」
「はい、おじさま。」
最後にデレっとして陛下は出て行った。
「さて、メティーナ。
父上もいなくなったところだし、僕は君に聞きたいことがあるんだ。」
クリス様の雰囲気がいきなり変わった。
「メティーナは、ヘスフィラルに婚約を破棄されて本当に悲しくないのかい?」
「いきなり何を言っ「なんだか、1年も会っていなかったからか、君の雰囲気はとても変わった。前に会った時はもっと溌溂としていたのに、今の君はなにかを諦めたような、悲しみを心の中に閉じ込めているような気がする。前はピンクの服とかばっかり着て可愛らしい感じだったけど、今は紺のシンプルなワンピースだしね。どちらも僕はかわいいと思うけど。
うん。
僕は君が婚約を破棄されて不謹慎だとは思うが、嬉しかった。また君に会えるからね。
また、君も表面上はうれしいという態度を崩してはいなかった。でもね、メティーナ。僕は君がヘスフィラルのことが好きだったことを知っていたんだ。そんな男のために精一杯努力し続けていたメティーナのことが僕は大好きだった。
婚約破棄されてから1回でも泣いた?
泣いてないんだろう。心配かけると思って。
もう、泣いていいんだよ。メティーナ、我慢せずに泣いてみろ、楽になるから。」
なんだか、自分をこんなに理解してくれる人がいるとは思っていなかった。
もしかしたらみんなは気づいていたのかもしれない。
でも私に気を遣ってその話をできなかったのだろうか。
いけない、涙が出てきた。
「メティーナ、大丈夫だ。」
視界がぼやけてきたと思ったら、群青に染まった。
クリス様に抱きしめられているのだ。
今はただ、人の温もりが恋しくて、離したくなくて、安心して、ただただ泣き、縋った。
そんな私をクリス様は大丈夫だよと言いながら抱きしめてくれていた。
○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○
「もう大丈夫? 」
「・・・はい、ご迷惑をおかけしました。」
「目元の腫れが目立つな。氷を持って来させよう。」
「ありがとう存じます。」
私は持ってきてもらった氷を目に当てて、ひたすら腫れがマシになるのを待っていた。
「ィーナ、メティーナ、!」
「はい!」
眠ってしまっていたようだ。
「腫れはだいぶ治ったよ。僕が抑えていたからね、」
え...それってつまり
「メティーナの寝顔は天使のようだった。」
ですよね...
「本当にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。」
「それほどのことはないさ。
・・・メティーナ、本当に領地に帰還するの?」
「・・・はい。
一度自分の気持ちを整理してみたいと思います。」
「そっか。・・・じゃあ遊びに行くね?
これはそのための約束として」
気付いた時にはクリス様の顔が目の前にあって。
・・・口付けられた。
私は顔を真っ赤にしてしまって、
「御前を失礼させていただきます!」
と言って馬車に乗り込み屋敷に帰った。
○*・.○*•.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○
「メティーナはやっぱりかわいいなあ。」
○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○
お嬢様、あんなに長く殿下と部屋に篭って何をしてらしたのかしら。
顔を真っ赤にして出てきたし。
お屋敷に帰ってからはお部屋にすぐに閉じこもってしまわれたし。
旦那様と若様たちにに御報告した方がいいのかしら?
・・・ダメね。お屋敷が壊れてしまうわ。
私のお家がなくなったら困るもの。
○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○
クリス様、あれで本当に14歳?
どうしよう、ドキドキが止まらない。
ていうか領地に遊びに来るって言ってたよね?
本当に来てくださるかな?
・・・まあ来ないよね
○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○
この国の精神年齢がおかしいのである。
メスクリウス皇子は大概だがメティーナも中々精神年齢が高すぎる。
だいたいこの国の者は早熟なのだ。
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