婚約破棄の翌日
なかなか更新できませんm(_ _)m
申し訳ないです。
私にとって婚約とは義務だった。だからどんなに相手が傲慢で嫌だと思っても、婚約を破棄するなんで思ったこともなかったし、破棄されるなんて思ってもみなかった。だから、婚約者を支えるための努力は惜しまなかった。
それなのに、彼はアリスに乗り換えた。
アリスはもう15歳。私はまだ12歳。
私が15歳になる頃にはアリスよりも(というかもう既に)優秀であれるだろう。そんな彼女では彼を支えることはできない。彼を支えることは普通の婚約者が互いに助け合うくらいの努力ではなせない。自分が2人分背負っていく覚悟が必要だ。お姉様方に話を聞いたところアリスは努力のできる人ではないらしい。おそらくすぐにねをあげる。
○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・.○*・○*
「うーん、」
水色の天蓋を通して朝日が東から入って来る。この部屋はお母様と一緒に模様替えをしたばかりだ。もう12歳だからと少し大人な感じにしようと好みが変わってきたのもあり、今まではピンク系統だったが、思い切って青系に変えたのだ。壁紙は白だったから家具を変えただけだが、それでもうんと雰囲気が変わった。とてもお気に入りの部屋になったのだ。
しかし、私は領地に戻ることになった。
学園には入学するため、準備もあるから1年半後には帰って来るだろうが、それまでこの部屋ともお別れなのだ。
「メティーナ様、おはようございます。
お目覚めでしょうか?」
侍女のマリーが声を掛けてくる。彼女は私が5歳の時、はじめて引き合わされた、この家の執事、エドワードの娘だ。彼女は同い年で、私専属の侍女なのだ。
「起きているわ。マリー。私、昨日ヘスフィラル様に婚約を破棄された気がするのだけど、気のせいかしら?夢だったのかしら?」
本当は聞かなくてもわかっている。目が覚めてから何回もほっぺを引っ張ったのだから。そうやって聞くとマリーはなんとも言えない悲しい顔をしてこう言った。
「メティーナ様、それは...。
...現実のことですわ。昨日ヘスフィラル様とメティーナ様は婚約を破棄されたのです。」
やはり。
そうだろうと思った。
ということは、私は今日から自由なのだ。
たしか、領地に戻ることにしたのだ。
よし、なるべく早く戻ろう。
明日から何をしようか。
取り敢えず剣術の稽古を再開してもらおう。
あと槍も。あ、そうだ。お母様に弓も教えてもらおう。
そう、メティーナは武術が大好きなのだ。父が騎士団長で、長兄も騎士団の第1団長を務めており、次兄は学園を卒業後騎士団に入るということと、母が同盟国のウィラリア王国の第1王女であり、ウィラリア王国は武術で有名なので母も幼い頃から国を守るため武術の稽古をつけてもらっていてもう嗜みと言えるほどの実力ではない、ということもあり、小さな頃から私は武術が身近にあった。お父様には剣を、2人のうち上の兄、フロイトからは槍を習った。また、お母様からは馬の乗り方も習った。
ああ!楽しみ!!!
婚約者が決まってからは堂々と訓練することができなかったから、もう一日中訓練するのは久しぶりなのだ。取り敢えず早く宮殿に行って嫌なことを終わらせてしまおう。婚約破棄の報告と、領地に戻る挨拶だけだ。
「宮殿に行くわ。
身支度をお願い。マリー。
あと、陛下に面会依頼を出しておくようにして。」
ふん、もうだれにも邪魔させないもんね!
「かしこまりました、こちらにお願いいたします。」
鏡台の前に座ると、鏡は私のお母様譲りの銀髪とお父様譲りのシャンパンゴールドの瞳を写す。我ながらよく整った顔だと思う。少しつり目がちな私の目は私の顔をきつく見せる。そう考えれば巷で人気の、王子が許嫁との婚約を破棄して身分の低いヒロインと結婚して幸せになる婚約破棄物語、の悪役令嬢のような立ち位置に私がされても納得してしまうのかもしれない。
私に言わせればあれは作者の売り上げと名をあげることのための小説だ。社交界に遅れないために少しは読むが、あれを読むと私はなんとも言えない気持ちになる。幼い頃から子供がこなす量ではない王妃教育を受け、常に優秀であり続けることを求められて過ごしていたのになんの努力も知らないようなふわふわした女に婚約者を取られそうになるのだ。小説の中の悪役令嬢はやり方が下手なのだ。私だったらもっと上手にやる。うっうん。...だいたい、王子の婚約者が身分が下の者に嫌がらせをしたとして、一体何が悪いのか。婚約者がいる人に近づいたヒロインが悪い。私はアリスというヘスフィラルの中のヒロインにあったこともないし、嫌がらせをしたこともない。ヘスフィラル様なら私を見捨てることはないと思っていたからだ。いつも私にわめき散らしても最後には
「ごめん、メティーナ。大好きだよ。」
と言ってくれていたのだ。
しかし、アリスと本当に情を交わし、私との婚約を破棄して彼女と婚約することを望むなら、私はそれを受け入れる。どんなに胸が張り裂けそうでも。
「....ナ様、メティーナ様!」
マリーが呼んでいた。
つい色々考え過ぎてしまったようだった。
「マリー、ごめんなさい。
考え事をしていて。
なんでもないのよ。ちょっと、ヘスフィラル様のことを考えていて。」
マリーはいきなりボロボロ涙を出しはじめた。
なぜ、マリーが泣くのだろうか。
私はまだ泣いていないというに。
私はヘスフィラル様が言う意地悪な女になってしまったのだろうか。
「メティーナ様、
マリーはいつでもメティーナ様の味方でございます...
ヘスフィラル様なんてお忘れになってくださいっっ、」
マリーは私がヘスフィラル様に婚約破棄をされて失恋したと思っているらしい。
だが、私はヘスフィラル様に懸想していたわけではない。ただ、なぜ?ということだけだ。
「やだ、マリー。
泣かないでちょうだい。
ありがとう。
でも、私はヘスフィラル様に婚約を破棄されて悲しんでいたわけではありません。
ヘスフィラル様はこれからどうするのかしら、と考えていたのよ。
もうお化粧は終わったわね。
今日は宮殿だからどのドレスを着て行きましょう?
マリー、白か紺、どちらのドレスがいいかしら?」
マリーはようやく泣き止んで、
「メティーナ様にお似合いの色はローズピンクでございますよ?」
と言った。
しかし、私はヘスフィラル様に会うときよく着ていて、少し子供っぽいピンクはもう嫌なのだ。
「もう子供じゃないし、私のこのきつい顔には落ち着いた色の方が似合うと思うの。
ローズピンクのドレスはほとんどもう小さくて着られないだろうから、しまっておいてちょうだい。」
マリーはすこし不満そうな顔をして、頷いた。
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「フォーサイス公爵家、メティーナでございます。
皇帝陛下には面会依頼をお出ししております。」
マリーを連れて宮殿に来た。
近衛に取次を頼む。
私はまだデビュタントをしていないので、あまり顔を知られていないのだが、面会依頼を出してあったのですんなりと面会室に通してもらうことができた。
「皇帝陛下の御なりです。」
ソファーから立ち上がり、ドアが開いたところで綺麗なカーテンシーをする。
「顔を上げよ。メティーナ嬢。
人払いじゃ。全員下がれ。」
重々しく皇帝が人払いを命じだ。
全員下がったところで皇帝陛下がぼふっとソファーに座った。
そう、この皇帝陛下は猫をかぶっているのだ。
臣下に舐められないために、がんばって自分を隠している。
「発言を御許しください。」
と許可を取ってから、
「お久しぶりでございます、皇帝陛下においてはご機嫌麗しゅ「おじさま。」いえ、皇帝陛下をおじさまなどといえ「おじさまじゃ。」...ないと思っておりましたが親しくいただけるというお心遣いありがとう存じます、おじさま?」
約1年ぶりにあった皇帝陛下。
この人は娘がいないためか、もっと幼かった私に「おじさま」と呼ばせていたのだ。初めてあった時なんて、こんなに可愛い子なら臣下と婚約を結ばせようとして呼びつけるのではなく自分の息子と婚約させて仕舞えばよかった、と言っていた。
「メティーナ、なぜ1年も会いに来てくれなかったのじゃ。私の癒しがいなくなったではないか。」
いや、それ皇妃様に言ったら殺されますよ?
「皇妃もメティーナが癒しなのだ。して、なぜ来なかったのだ。」
それは...
「ヘスフィラル様が宮殿に行くとメスクリウス皇子様にお会いするから行くなと。」
そうなのだ。自分は浮気しといて私が皇子様方と会うと機嫌が悪くなるのだ。
皇子様にバレずに会いに行けばいいって?
ムリだ。
あの人はどこからか聞いて私が皇帝陛下にお会いしようとすると絶対に来るのだ。
なぜか。
・・・ドンドンドンドンドドドドドドドド
「ほれ、来たぞ。」
・・・ドンドンドンドンドンドンドドドドドドドド!
バン!
「・・・っっっっっ、っっっメティーナ!!!」
そこに現れたのは...
「・・・・メスクリウス皇子様・・・」
ですよね、。
次はメスクリウス皇子無双?
短くてごめんなさい
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