入院患者様より入院記をいただきました。 ~中村尚裕様からのプレゼント作品~
「お目覚めですか?」
にこやかな声が意識を出迎えてくれた。
「ご気分はいかがですか?」
「ああ、ありがとうございます」
つい反射で返してから気付く――頭痛が収まっている。
「あ、頭痛が引きました」
「そうですか」
温かな笑顔。
「何よりです。他に気になるところはありませんか?」
ああ、と和みかけて気付く――ネーム・プレートに“菜須よつ葉”。
「菜須、さん?」
つい声が緩んだ。
「奇遇ですね。ちょうど知り合いに“菜須よつ葉”さんとおっしゃる――あ、名前も同じ」
「え、そうなんですか?」
菜須さんが口元へ手を引き寄せる。
「じゃ、もしかして……」
「私、」自分へ指を向け、「中村尚裕というペン・ネームで……」
「尚裕さん!?」
今度こそ菜須さんの声が跳ね上がった。
「あ、じゃやっぱりよつ葉ちゃん!?」
思わず食い付く。
「まさかと思ったんですが、やっぱり!」
「初めまして、でいいんでしたっけ」
菜須さん――よつ葉ちゃんが頭を下げる。私も慌てて頭を下げる。と、思わず上目――やはりというか眼が合った。
「初めまして」
私に苦笑い。
「初めまして」
よつ葉ちゃんの笑顔が、心なしか違って見える。
これはちょっと叱られるかな――と、こういう予感も悪くない。
人生、まったく何が幸いするものやら。




