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序:山の中にて
「紺野相談室」
日本のどこかの、山の中。
入り口にそのような看板を掲げた、一軒の小さな家があった。
木の板にペンキで下地を白く塗り、そこへ黒でその文字が書いてある。板は端の方が削れ、とても新しいとは言えない状態であった。
そしてその看板がかかっている家も、世辞にも綺麗だとは言い難い。
ウッドデッキ付きの木造二階建て、作りは立派なものであるが、壁の木は傷み、ウッドデッキにいたっては床板が所々腐っている。床が抜けてしまうのではないかと、安心して歩くこともままならないだろう。
一言で言えばぼろぼろなこの「紺野相談室」は、一部の者にだけ、あることで有名であった。
「……………」
毛先の巻かれた長い茶髪。短いスカートに、完璧に化粧された顔。
そのような若い一人の女がこの家の前に立ち、手元の広告と傾いた看板を見比べている。
白黒コピーの、字だけで構成された、なんの変哲もない広告。
その広告には、こう書かれていた。
「紺野相談室」
ご相談、何でも承ります。
どのようなご相談でも、解決に向け全力で力を尽くします。
人間の方もそうでない方も、お困りの際は紺野相談室へーーーー。