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ヨロズの話。  作者: ヤマシタ
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私の話。

 5月某日。

 校舎と学生棟に挟まれた広場には、あまり人がおらず閑散としている。

 いるとしても、手を繋いで仲良さげに話すカップルと、それを横目に隅のベンチに座ってスマートフォンをいじる暗めな学生くらいだ。おそらく、講義がなくて暇な時間を過ごしているのだろう。


 ここ、木芽大学(このめだいがく)は特に学力が高いでもなく、かといってそこまでバカでもない。私はバカ大学だと考えている。

 そしてこの大学に通う私は鷺原という。見た目は地味、友達も数人しかいないのが寂しいので無理して笑顔で話しかけようとしたら翌日には「詐欺師」という不名誉極まりないあだ名をつけられた逸話を持つ。逸話と言っていいのかはわからないが。



 私、鷺原は木芽大学二回生になる。

 二回生ともなればサークルに明け暮れ、友達と飲み会を開き、講義終わりには彼女とデートをし、朝帰りが普通。

 そんな話を隣の男子学生三人が笑いながら話している。

 私は内心「やかましいわ」と吐き捨てた。


 私の大学一回生を振り返ってみる。

 高校時代にまともに勉強をせず、入学試験3日前にやっと教科書を開いたという体たらく。おかげで高校卒業をしても大学は決まっておらず、なんとかギリギリで受験したこの木芽大に入学することができた。

 大学を「これをしたい!」と考えて選ばなかったので、いろいろなことにあまりやる気が起きなかった。

 合格早々の5月病である。

 おかげさまで、講義も生気のない顔で出て、教室に入ってきた講師を二度見させたほどだ。

 友達もできず、話しかけたいと考えたが過去の「詐欺師」が脳裏をよぎり、話しかけられずにいた。

 当然友達と飲み会や彼女とデートもない。


 だが、そんな私だがあるサークルには入っている。

 その名前は「萬家相談場」という。

 なんとも奇っ怪な名前だが、れっきとした学校公認サークルである。

 今回は「萬家」の話をしようと思う。



 朝八時。カーテンから光が漏れてくると同時にセットしていた目覚ましがなる。

 月曜日は一限を入れてしまい、九時には学校にいなくてはいけない。

 愛する布団から離れたくないと訴えかける体と、大学にいかなくてはいけないんだと主張する脳内。およそ二分の決闘ののち、脳内が勝利した。

 力のない体を起こし、なるべく綺麗に見られるようにとシャワーを浴び、午前の講義のために先週買っておいた食パン一枚をかじった。

 準備ができ、一人暮らしの六畳間を抜ける。

 鍵をかけるために振り返ると、掃除をしてない日が続いたおかげで中はいろんなものが散乱していた。洋服に本、ゲーム、大人のものなどいろいろある。

 その景色に少しうんざりしながら、時間がないことに気づき急いで鍵をかけ出発する。


 


 一限ももちろん絶不調だった。

 講師は一回生のときから受けているので、私の死に顔を見てもなんら驚かなかった。

 むしろ完全に無視をされ、少しは学生を気遣ったらどうなんだという至極身勝手な怒りでぷんぷんさせていた。

 今日の講義はあと三限四限で終わりである。二限は講義をとっていないので、いわゆる休憩時間だ。

 休憩時間の過ごし方といったら、何があるだろうか。早めに学食で昼食をとったり、近くのショッピングモールで買い物をしたりお茶をしたりだろうか。友達がほとんどいない私には、まったくわからないが、私の過ごし方は決まっている。というか一つしかない。

 私はそそくさと教室を出ると学生棟まで向かった。学生棟三階、電気はついているが日が当たらず暗い廊下を通ると私の目当ての部屋がある。

 扉をあけ、いつも通りの「お疲れ様です」を言いながら入る。

 中は和室になっており、真ん中に卓袱台、その上には一台のノートパソコン、部屋の隅に冷蔵庫、電子レンジ、戸棚がおいてあり、壁には代表の好きな漫画のポスターも貼ってある。


 戸棚には大量の文庫本小説や漫画、それに邦洋問わずのCDも入っている。


 この部屋はなんだ、誰かの家かと問われるかもしれないが、いやいやここもれっきとしたサークル部屋である。


 ここが私の所属している「萬屋相談場」である。活動内容は名前の通り、「よろずの相談を受け持つ」だ。具体性がないなどの意見批判は聞かないことにする。


 部屋に入るとレンジと冷蔵庫と冷蔵庫の稼動音が私を出迎えてくれた。もの寂しい気持ちにはならない。もはや慣れている。過去には元気たっぷりな一回生を演じるために元気たっぷりに部屋に入ったこともあるが、その時のサークルメンバーは私とは真逆にかわいそうな目で私を見てきた。そんな目で私を見るな。


 たぶん今はどこか昼ご飯を買いに行っているのだろうと考え、冷蔵庫の中に置いてあったペットボトル入りのお茶を取り出す。5月ということもあり少しずつ暑くなっており、一気にそれを飲み干した。


 それと同時に、「こんちわー」と気の抜けた声と扉の開く音がした。振り返るとそこには絶世の美女ならぬ絶世の美男子がいた。街を歩けば反対歩道を歩く女性までも振り向く、近くを歩けばこっそり女子高生に写真を撮られるほどの顔つき。羨ましい。


 美男子は私を見るなり「お、鷺原おつかれ。」と言ってきた。あんまり疲れてはいないが一応私も「お疲れ様。」とだけ応じた。


 美男子の名前は坂見という。外面は見て分かる通り、テレビに出てもおかしくないレベルだ。この見た目に何人の女性が惹かれてしまったことか。


 一回生の一番初めの講義の時、私と坂見は名前順が近いということもありペアになることがよくあった。その時の私は坂見を「女慣れしているイケメン」としか見ていなかった。決して羨ましいのではない僻んでいる訳でもない。


 しかし、合同制作をする講義で坂見への見方は半回転した。坂見は外面に対して、内面がかなり残念なのだ。


 話をすれば同姓だろうが異性だろうが噛みに噛みまくる。聞き取るのに通訳者が3人必要なほどに何を言っているのかわからないほどに上がり症なのだ。


 たとえ慣れて話をできるようになったとしても、今度は話の内容が残念なのだ。その内容は我々の会話を見ていけばいずれ察するだろうと思うのでここでは省略する。


 そして、坂見は私が同学年の同姓で唯一喋れる仲である。他に友達はおろか知り合いと呼べる仲の人物はこの学校には存在しない。かわいそうな目で私を見るでない。


 そんなあれこれを思い返していると、坂見はコンビニで買ったであろう弁当をレンジに入れ、畳に座った。座るやいなや、先ほどの講義で目の前に座っていた女子が可愛かったと熱心に私に伝えてくる。相当可愛かったのか、髪の先から爪先まで可愛さを私にアピールしてきた。ああそうですかと半分片耳から流し、携帯をいじる。


 たっぷり3分間伝えてきたところでまた扉が開く。副代表で三回生の国芳さんと一回生の糺さんが入ってきた。国芳さんはのんびりおっとりフワフワ系な女子で、いつもニコニコしているのが特徴だ。それに対して糺さんは良く言えばフレンドリー、悪く言えば人のことにずかずか口を出すタイプだ。実際私は少し苦手である。


「あ、二人ともいたんですね。早いですね。」


 糺さんの言葉に坂見が返事をした。極度の人見知りではあるが、萬家のメンバーには慣れているおかげか、ずっと笑顔の国芳さんを困らせる話題を出すほどになっていた。

「遊馬はゼミ関係でこの時間これないってー」と国芳さんがニコニコしながら話す。

 遊馬とはこの萬家の代表である。木芽大の三回生、成績はかなりよく、先日行われたゼミの研究成果発表会では最優秀賞を一人で勝ち取った。

 普段からゆるゆるな服を着てくせっ毛な頭をボリボリかいてヘラヘラ笑ってる、いやニコニコ笑ってる先輩だ。決してバカになどしてない断固として。

「そういえば昨日相談メール来てましたよ。たしか二回生の文学部の人から。」

 遊馬さんがこないということで、相談メール担当の私は三人に伝える。他のメンバーはあまりテクノロジーに詳しくなく、普段から暇さえあればパソコンをいじってる私に「じゃあ、鷺原くんはメール担当ね。よろしく。」と遊馬さんはニコニコしながら言ってきた。おかげで、サークルに入って以来メールの仕事をずっとやっている。

「んじゃ、遊馬くん来てないけど確認くらいはしとこっか」と国芳さんが言ったので、私がパソコンのランプをつけた。左隣に坂見、右隣に国芳さん、後ろに糺さんがついた。

 三人が近寄り見つめているので、若干のやりにくさを感じつつメールフォルダを開く。未読メールが二通、一通は相談のお願いと題名され、もう一通は無題だった。

 お願いを開き、内容を確認する。

『お疲れ様です。文学部二年の芝川といいます。

 萬家相談場様の評判を聞き、誠に勝手ながらメールをさせていただきました。

 相談内容なのですが、私の曾祖母の飼っていた犬がどこかにいなくなってしまい、捜索しようにも曾祖母は体が弱く、私も講義などの関係で充分に探すことができません。

 なので、萬家の方々に捜索の手伝いをしていただければと思った次第でございます。

 もしよろしければ、また改めて直接ご相談をしたいと思います。日程などはもちろんそちらのご都合に合わせさせていただくので、連絡をいただければと思います。

 急な連絡でしたが、どうぞよろしくお願い致します。』

 四人はだいたい同じタイミングで読み終わった。そして四人は同じ言葉を発した。

「は?」

 それももちろんである。なんでも引き受ける、とはビラなどに書いてあるが、まさか飼い犬の捜索をしろとくるとは。しかも本人は講義で忙しいと言っているが、もちろん私達も同じ大学生である。講義で忙しいのは私達もである。

 同じ気持ちであったのか、糺さんが首をかしげながら言った。

「なんだこれ。私達なら暇って考えたのかな。」

「まぁ、人手は多いに越したことはないだろうけど。でもわりと真面目な文章で真面目かわからない内容だからおもしろいな。」

 糺さんに坂見が返した。

 たしかにそうではあるが、まだ会ったこともない私たちに犬を探してくれと頼むのもおもしろい話である。

 そんなことを言ってしまっては我等のサークルの存在意義を笑い捨ててるということになってしまうのでここまでにしておこう。

 さて、ではどうしようか。とりあえずこのメールを肴に友人と酒を飲むのも一興ではあるが、そんな非人道的なことはしたくない。

 ということで、後日相談場に来て直接お話しをしたい、という内容で失礼のないように確認もしつつ

 返事を送っておいた。



はじめまして、ヤマシタといいます。

自分の日本語力と継続力と闘いながら話をかいていこうと思います。

脳内でセリフとして喋りながら執筆してるのですが、うまくまとまってないような気がします。

これから少しずつですが、話を考え、日本語力と闘いながらがんばって完結目指します。

たぶん更新は不定期になると思います。すみませぬ。

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