他の部員と顧問を探しにいこー
「んー、そういえば、あと2人は?」
「探しにいこうよ」
弥生の言葉を聞いて優奈が突如口にした事雨音達は残りの2人を探しに行く事になってしまった。
「いよーし、みんな散らばれー」
そして何故か美都が指揮を取っている
(探しに行く必要ある?しばらくすれば勝手に来るでしょ!)
等と雨音は思っていたが先程智輝に「いいんじゃね?これもクラブ活動って事でさ」なんて言われてしまった為行くしかない。
雨音はこの前“お気に入りの場所”を教えて貰ったことを思い出し悩むことなく1人目がいるであろう場所に向かった。
「あ、やっぱり、みーつけた」
問部の扉をあけて廊下を進んだその先にある階段を上り、最上階の扉を開けて屋上に出る。
ちょうど死角になっているところにその人はいた。
「何してるの?****」
「ちゃんと名前で呼んで。それは私の名前じゃない」
「…、つーちゃん…」
手に持っていた本を閉じて顔をあげ、雨音と目を合わせた。
まるで用件をさっさと言えと言っているような目だ。
「クラブ…、行かないの?」
「行くよ、これ読み終わったら」
「そっか…、みんな探してるから一緒に行こうよっ」
「いいよ」
雨音達は並んで廊下を歩きはじめた。
今更だが名は天宮 つばめ
1年E組にいる大人しいのか賑やかなのかわからない人物
種族は【烏天狗】だ。
「あ、雨音ー、つばめー」
前方から美都が何か手に布をつかんで引きずりながら歩いてきた。
「お、美都ー」
「美都ちゃーん」
つばめと共に美都の近くに行くと、布がパタパタしてた。
「離せー!!」
「うっせぇ、布」
「俺、布じゃない!!」
美都に連行されてきたのは1年E組の綿田木 颯真
何故布の形をしているのか、彼が【一反木綿】だからである。
「そうちゃんこれなーんだ?」
いきなり美都の横から優奈が顔を出した
その手に持っているのはマッチだ。
「それ…、マッチ?」
「あーたりー」
「いやー、よく学校でその姿になれたねー」
いつの間にか弥生も優奈のそばに来ている
「そういう悪い妖怪にはー」
「お仕置きをー」
この2人は双子でもないのに息がぴったりである。
「いや、止めて、戻る、戻るから!!」
そう言って人間の姿に戻った颯真をみて弥生と優奈は不満気な顔をしていた。
「とりあえず他の人あつめようよ」
「菜月なら日向ぼっこしてるよ?」
「あー、さすが猫」
皆それぞれ誰がどこにいるかを提供して、集める事にした。
呼びにいくと誰かしら帰ってこなくなるからである。
「こういう時のケーターイ」
雨音は今いない人に電話をしたりメールをしたりして、部室に戻るよう促した。
部室に戻ると、ソファに碧斗が座っていた。
「お前らどこ行ってたんだ?」
「いなかった部員2人を確保しにー」
「俺、連行されてきたー」
颯真はいつの間にか一反木綿の姿に変わっていた。
本人曰わく、「こっちのが疲れないから」らしい。
「お?天宮もきたのか、珍しい」
「うっせー、碧斗。来たら悪いか」
「お前教師を呼び捨てに…」
「翡翠ー、俺腹へったー」
ナメられているのか、この場で碧斗を先生と呼んでいる生徒は居ない。
『雨音、暇や変われ』
(えー、しょうがないなぁ…)
雨音は緋人のご希望通りに入れ替わった。
「翡翠、うちに茶ー入れろ」
「緋人、お前なぁ…!!」
相変わらず仲がよろしいようである。
碧斗は皆の事を苗字で読んでいるのに緋人だけは名前呼びであることを雨音は疑問に思った。
「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!!」
扉を開け放って入ってきたのは菜月だった。
次の瞬間跳ね返った扉が菜月の頭に直撃した
(どこかで見た光景…。)
そう、先程の雨音と同じである。
「「本日2回目のバーンっ!!」」
それを見て喜んでいるのは優奈と弥生
やはり、双子では無いのにハモっている。
「何やってんのよ、あんた達」
1回閉まりかけた扉を開けて入ってきたのはもう一人の顧問、天龍寺 沙羅種族は【龍神】と、香と智輝だった。
「あ、姉やん」
「やっほ、緋人。お腹すいてる人ー」
「「「「「はーい!!」」」」」
手をあげたのは、優奈と弥生と美都と颯真と菜月。
颯真はとくにたいして長くない手を頑張ってあげている。
「よーし、じゃあ作ってあげよう!!」
「「「「「わーい!!」」」」」
何故か部室には小さなキッチンがついているが、
そこはほとんど沙羅姉が使っていて、他に触る人はあまりいない。
「ほら、出来たよー」
「「「「「いえーい!!」」」」」
「優奈はチョコ」
「サンキュー」
「弥生はアイス」
「わーい」
「美都は飴」
「おー、ラッキー」
「颯真は親子丼」
「やっりぃ!!」
「菜月はケーキ」
「ありがとー」
このクラブでの沙羅はいわゆるお母さんみたいな存在だった。
碧斗よりもみんなが尊敬して、慕っている。
「沙羅ー、俺にも茶ー」
「うちもー」
碧斗と緋人が同時に手をあげた
「緋人のは入れてあげるけど、碧斗は自分で入れろ」
「うぇぇー…」
しぶしぶといった感じで碧斗は自分のお茶をいれた。
何かあったのか碧斗は沙羅に頭が上がらないらしい。
「緋人おいでー」
「んー、なんやー?」
「髪の毛くくってあげる」
「おー、サンキュー」
沙羅は雨音と緋人に少し甘いのは親戚だからであるがそれを抜きにして皆に平等に甘い。
「よし、完成ー」
「おー、いつものや」
緋人はいつもの髪型にしてもらった。
緋人は雨音とは違い髪の毛が長いのでよく邪魔になる為である。
一応これで部員と顧問は全員である。
星桜高校の1年生だけでこれだけ妖怪が居るのだ。
驚きである。
雨音は2、3年生を合わせると一体どれだけになるのか…。そう思ったがそれよりも、とりあえず雨音は小鞠をどうやって身体から離すかを考えることにした。
全く離れる気配がない。
今は緋人と変わってるから大丈夫だが先程は腕が痛かったのかしきりに顔を顰めていた。
『誰か…、助けて…』
全くもって離れない座敷わらしを眺めながら引き剥がす方法を誰か知らないかなと思い耽るのであった。