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乱入者の語り

これは、想造主の罪が滅んだ世界の再生についての語りです。


黒煙に覆われた大空と、滅びの業火によって燃え盛る地だけの世界にいたのは、


穢れの無い真っ白い色をした鴉――光と生命の女神リュミーレンを創始とした神の転生体――白鴉(はくあ)と、闇と死滅の神ヴィニラルスを創始とする神の転生体――世界に広がる黒い濃霧で出来た、一対の紅玉色の瞳を持つ黒い霧の狼――黒霧狼(こくむろう)でした。


二人の神は互いに向かい合っていました。


想造主の狂気は、想造主の友である魔王サタンによって、滅ぼされたのです。


想造主の狂気が蝕んでいた闇と死滅の神ヴィニラルスの力は、必要以上に世界の生命を滅ぼすことはなくなったのです。


だからこそ、幾度となく再生と滅びを繰り返す神の輪廻は、必要が無くなりました。


だからこそ二人は、世界を原初の形に、己の本来の有り様に、戻す必要があるのです。


それは光と生命の女神リュミーレンが望んだこと。


世界を歪ませた杭が無くなれば、世界は異常から正常へと戻るのですから。


しかし、リュミーレンの望みは叶いません。


なぜなら、二人だけの世界に、乱入者――深い闇色の身体をし、不気味に煌めく紅玉の顔をしたスフィンクス――が現れたからです。


二人の間を遮って現れたスフィンクスの乱入者の名は、ニャルラトホテプといいました。

外なる神とも呼ばれる、破滅を望む無貌の邪神です。


乱入者の介入に気を取られた二人は、ニャルラトホテプの企てを許してしまいます。


ニャルラトホテプは黒霧狼を捕らえると、黒霧狼よりも深い、闇色の結晶に閉じこめ黒霧狼ごと砕いてしまいました。


それは、闇と死滅の神ヴィニラルスの転生を意味しています。


そして、白鴉の――光と生命の女神リュミーレンの――願いを破壊する手段でもあります。


再生と滅びの輪廻を、終わらせるために。

世界を正常に、機能させるために。

己たちの本来の有り様に。

そのために費やした時を。

水泡に帰させる最悪な手段を。


ニャルラトホテプはしたのです。


絶望感に囚われた白鴉に、ニャルラトホテプはさらなる追い討ちをかけます。


ニャルラトホテプは自身の躯の一部を使い、闇色の巨大な錐を空中に生み出すと、白鴉へ向けて撃ちました。


白鴉は自身に向けて放たれた、闇色の巨大な錐を避ける気力は、ありません。


闇色の巨大な錐は、白鴉の躯を貫きましたが、白鴉は辛うじて生きていました。

ですが、羽ばたく気力はもうありません。

ただ、重力に引っ張られるように、地面に落ちていくだけです。


落ちゆくなか、白鴉は――光と生命の女神リュミーレンは――繰り返される輪廻に従い、世界の再生を行います。


輪廻に終止符が打たれないことに嘆きながら――。


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