第八話
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しばらくしてお兄さんが亡くなった事を風のうわさで聞いた。
急な話に涙が止まらなかった。
あのギターをやさしく弾いて教えてくれたお兄さん。
この世にはもういなくなった事、僕は信じられなかった。
それから三日後、そのお兄さんのお母さんに会った。
そして大きなギターを僕にくれた。
その人は『もし俺がだめになったら悠太にこのギターをあげたいと言っていました。』とつぶやいた。
僕は泣いた。
最後まで僕のことを考えてくれていたなんて…。
それからその大きなギターで弾くようになった。
そのギターは形が大きくてすごく音がいい。
まるで引き込まれるような音だ。
入院中、外に出れるようになったら毎日の様に公園でギターを弾いてた。
今やっている曲はプロの曲で、三曲ぐらいしか弾けない。
しかしちまたで幼いミュージシャンがいるとささやかれ、結構人が止まってくれるようになった。
そしてその交流が僕は楽しみになった。
それから二週間ぐらい過ぎただろうか。
体も大分良くなって冬が過ぎ外は大分暖かくなってきた頃だった。
病院でのうわさも広がり『病院の中で発表会を開いてくれないか?』と言われた。
そんなにギターも歌もうまくないけど自分の退院の日に発表会をやることになった。
聴いてくれる人は入院している人でざっと五十人ぐらいだ。
お年寄りもいるのでみんなが知ってそうなプロの曲を何曲か歌った。
みんな聞いてくれて喜んでいたのが印象だった。
歌ってこんなにすごいんだなと痛感させられた日だった。