坂本新喜劇
アクマクアで憤怒を倒した一行は、新たなマモノの情報を手に入れるべく、芸人の町【ナンバ】へと向かっていた。
―潜水艇―
ジーク「なぁなぁレオン~」
レオン「なんだ?」
ジーク「あのピカピカ!ってなってドカーン!ってなる技に名前つけようぜ」
レオン「憤怒の技だな。【集気】とでも呼ぼうか」
ジーク「イマイチ」
リリィ「なんだかマリンがいないと寂しいですわね」
レオン「からかうと面白かったな」
ジーク「そうだなぁ~、紅一点と言っても過言ではなかったからな」
リリィ「それはどういう意味ですの?」
ジーク「レオーン、リリィがこわいよ~」
レオン「知るか」
マイコ「みなさん~、そろそろナンバなんすけど~」
レオン「どうかしたのか?」
マイコ「町に港が無いんで、近くの海岸でいいっすか?」
レオン「あぁ、構わん」
マイコ「そんじゃ、横付けするっす」
潜水艇が海岸に横付けされると、ハッチを開けて上陸する三人。
マイコ「それじゃ、うちは帰るっす」
レオン「世話になったな」
ジーク「またな~」
マイコ「なんか困った事があれば、また会いに来るといいっすよ」
マイコに別れを告げると、潜水艇は再び海の中へと消えていく。
ジーク「そんじゃ、町にいくかー」
レオン「そうだな」
マリン「れっつご~」
ジーク「ん?」
聞き慣れた声がしたので振り返ってみると、ビショビショに濡れているマリンが立っていた。
ジーク「なにやってんだお前?」
マリン「あたしもついてくー」
レオン「ダメだ、帰れ」
マリン「やだー!」
レオン「お姉さんに許可は貰ったのか?」
マリン「うん!」
ジーク「許しも出てるみたいだし、連れてってやろうぜ?」
レオン「まだ子供なんだぞ?」
ジーク「わかってるって。だけどよ、マリンの歌は戦力になるぞ?」
レオン「しかしだな」
マリン「いい子にするから~」
ジーク「面倒みるから~」
レオン「ふぅ・・・。ジーク、お前がちゃんと護ってやれよ?」
ジーク「おうよ」
マリン「やったー!」
リリィ「良かったですわね」
レオン「それじゃあ、町に向かうとするか」
再びマリンを仲間に加えて、ナンバに向かうのであった。
―ナンバ―
しばらく海沿いの道を歩き、ようやくナンバに辿り着くと、町には人々の賑やかな声が飛び交っている。
町人A「つったかたー!つったかたー!」
ジーク「随分と賑やかだな~」
マリン「おまつり~?」
???「そこの兄ちゃん達」
町に入ると、キラキラと輝く黄色い派手な衣装に身を包んだ、小さいおっちゃんが話しかけてくる。
ジーク「おっさん、なんかようか?」
おっちゃん「自分ら、旅人やろ?」
ジーク「おう」
おっちゃん「せやろ?そこでや、わいがこの町案内したるわ」
レオン「いや、結構だ」
おっちゃん「なにを遠慮しとんねん。困った時はお互い様やろ?」
レオン「別に困ってはいないのだが」
おっちゃん「ええからええから」
レオン「ちょっと仲間と相談させてくれ」
おっちゃん「はよきめなアカンで」
四人は少し離れた場所で相談をする。
レオン「さて、どうする?」
ジーク「町に詳しそうだし、案内してもらおうぜ」
リリィ「いきなり知らない人について行くのは危険じゃなくて?」
レオン「ふむ。どちらの言い分も一理あるな・・・」
ジーク「それじゃあ、ここは多数決で決めるとしようぜ!
レオン「そうだな、案内に賛成なモノは?」
ジーク&マリン「はーい」
レオン「決まったな」
リリィ「もう、どうなっても知りませんよ」
ジーク「大丈夫だって、あのおっさんは悪い奴じゃない!俺の勘がそう告げる!」
レオン「わかったわかった」
意見がまとまったので、おっちゃんの所に戻る。
ジーク「おっさーん!」
おっちゃん「おっ?話がまとまったようやな」
レオン「あぁ、町案内を頼む」
おっちゃん「よっしゃ!まかせとき!」
こうして、おっちゃんに町案内をして貰う事となり、最初に案内されたのはナンバ名物のとらやき屋。
おっちゃん「ナンバゆうたら、この店のとらやきや。これ食べな帰れへんで」
ジーク「とらやきってなんだ?」
おっちゃん「なんや、とらやきも知らんのか?まぁええ教えたるわ。とらやきっちゅうのはやな、中に黒あんとクリームが入っとる菓子や」
ジーク「ひゃー!うまそうー」
おっちゃん「君、ええリアクションするやないか。気に入ったからおごったるわ」
ジーク「マジでー!?」
おっちゃん「おばちゃん、とらやき4つ」
おばちゃん「まいど、おおきに」
太っ腹なおっちゃんから、とらやきをごちそうになり、食べながら町を練り歩く。
ジーク「こりゃ、うまいなぁ~」
おっちゃん「ワハハハ!せやろせやろ」
レオン「(美味いが、口の中の水分が全部持っていかれる)」
レオンがとらやきを食べながら歩いていると、建物の死角から少年が飛び出してきて激しく衝突する。
レオン「ぐはぁ」
少年「いってー!」
ジーク「おいおい、大丈夫か?」
少年「おっさん、どこ見て歩いてんだよ!」
レオン「おっさん・・・」
おっちゃん「こら坊主!兄さんに謝らんかい!」
少年「うるせー!バーカ」
少年は暴言を吐きながら走って逃げていく。
ジーク「全く、教育がなってないな」
おっちゃん「君も災難やったな」
レオン「今に始まった事じゃ・・・、あっ!」
起き上がり服をパタパタとはたいていると、何かに気づいた様に大声を発する。
リリィ「どうかなさいましたの?」
レオン「剣がない・・・」
ジーク「なにぃー!?」
マリン「どこかに落としたの~?」
レオン「いや、盗まれたようだ。剣を結んでいた紐が切られている」
ジーク「さっきぶつかった小僧の仕業か?」
レオン「恐らくはな」
おっちゃん「その剣は大事なもんなんか?」
レオン「我が家の家宝だ」
おっちゃん「そら、大変やないか!」
レオン「うむ。しかし、今から追いかけても見つからないだろう」
おっちゃん「そうやなぁ・・・、わいの仲間に聞いてみよか」
レオン「仲間?」
おっちゃん「この町では名のある芸人達や。はよいくで」
おっちゃんが四人を引き連れて歩き出すと、きゃべつの形をした建物の前に到着する。
レオン「ここは?」
おっちゃん「ここはな【グランドきゃべつ】いうてな、色々な劇をやっとんねん」
ジーク「ふぇ~」
おっちゃん「はよ入るで」
そう言うと、建物の入り口とは別の方向に向かって歩き出す。
ジーク「おいおい、入り口はこっちだろ?」
おっちゃん「そこはお客さん用の出入り口や、わいらは従業員用の裏口からや」
ジーク「なーるほど」
五人は裏口からグランドきゃべつに入っていく。
―グランドきゃべつ 従業員用通路――
おっちゃん「この時間帯はみんな楽屋におるはずや」
レオン「おっさんは何者なんだ?」
おっちゃん「そろそろ教えたってもええか。わいは坂本新喜劇っちゅう、劇団の座長やっとるもんですわ」
ジーク「それじゃ、おっさんじゃなくてもっさんだな」
もっさん「けったいな呼び名やな。まぁ、好きに呼ぶとええ」
そんな話をしていると楽屋前に到着する。
もっさん「ここやここや。ほな入るで」
もっさんがドアを開けて部屋に入ると、中には変な格好をした人達がいた。
―グランドきゃべつ 楽屋―
もっさん「おまえら、お客さんや。挨拶せえ」
仲間達に声をかけるとそれぞれが自己紹介を始める。
アホそうな男「どうも、僕はサカタ言います」
ハゲた男「わしはジョージや!」
美女「うちはミラ言います、よろしゅう」
彼女は赤髪ポニーテールに黒い瞳を持ち。身長176cm。体は細いが筋肉で引き締まっている。
服装はというと、スタイリッシュな着物を身に纏い、手には扇子持つ。
一つだけ気になるのはそれらとは不釣合いな帽子を被っているという事。
出っ歯の男「俺はアカシヤゆうねんけど、君らだれ?」
レオン「私はレオンハルト」
リリィ「リリィと申しますわ」
ジーク「おれはジークニール」
マリン「マリンだよー」
アカシヤ「そかそか」
もっさん「突然やけどおまえら、盗っ人の子供についてなんか知らんか?」
アカシヤ「はぁ?盗っ人でっか?」
もっさん「せや。実はレオン君がな、大切な家宝を盗まれてしもうたんや」
ジョージ「そりゃ大変やがな!」
もっさん「せやろ?だから知っとる事があれば、おしえたらんかい!」
アカシヤ「せやなぁ・・・。最近、町で暴力事件が起きてるらしいですわ」
もっさん「ええ情報持っとるやないか」
アカシヤ「その犯人ってのがまた、えらい悪いやつで」
もっさん「ほう、ゆうてみい」
アカシヤ「なんでも、ハゲてて体がでかいクマみたいな奴らしいですわ」
ジョージ「それわしやないか!」
アカシヤ「ハハハハ!!ッアー!!」
もっさん「ミラちゃんはどないや?」
ミラ「わかりまへんなぁ」
もっさん「サカタ、おまえは?」
サカタ「なにがや?」
もっさん「なにがやあらへんがな、盗っ人の事を知っとるのか、って聞いとんねん」
サカタ「あっ、ぬすっとな!」
もっさん「なんか知っとるようやな、教えたれや」
サカタ「わからん」
もっさん「は?」
サカタ「忘れてしもた」
もっさん「ほんまアホやなお前は。ジョージはどや?」
ジョージ「しらんしらん、なーんも知らん」
アカシヤ「でたっ!知らん知らんオバケや!」
ジョージ「しらんしら~ん、うらめしら~ん、ってなにやらせとんねん!!」
手に持っていた灰皿でアカシヤの頭を叩くと、"カンッ"という軽い音が響き渡る。
アカシヤ「いったいわー」
もっさん「すまんなぁ、こいつら全然役にたたへんわ」
レオン「いえ、気持ちだけで十分ですよ」
もっさん「いーや!このままじゃわいの気がおさまらへん」
ジョージ「座長、こういうのはどや?」
もっさん「なんや?ゆうてみい」
ジョージ「この後の劇が終わったら、集まった客に聞いてみるんや」
もっさん「おまえ、なかなかやるやんけ」
ジョージ「ドヤァ!!」
もっさん「そういう事やから、自分らはここで待っとき」
レオン「わかりました。お願いします」
もっさん「おまえら、はよいくで」
新喜劇のメンバーが次々と部屋を出て行くが、ミラだけがその場に残る。
リリィ「あら?ミラさんは行きませんの?」
ミラ「自分らに話があんねんけど、ちょっと来てくれる?」
レオン「わかりました」
ミラに連れられて部屋を出ると、人気のない倉庫に案内される。
―グランドきゃべつ 倉庫―
ミラ「ここなら誰にも聞かれへんやろ」
レオン「それで、話とは?」
ミラ「さっきは皆の前だったから知らん言うたけどな、実は心当たりがあんねん」
レオン「聞かせて頂こう」
ミラ「誰にも口外せんと、約束できる?」
レオン「約束しよう」
ミラ「ほんなら、特別に教えたるけどな。タタルの仕業やと思うねん」
ジーク「あの小僧はタタルって言うのか」
ミラ「せや。今までにも色々なモノを盗んでんねんけど、うちが怒ればちゃんと持ち主に返してたんや」
リリィ「根は悪い子ではないのかも知れませんわね」
ミラ「せやけど。最近はうちがゆうても、全然返そうとせんのや」
レオン「最近ですか・・・。それはマモノの仕業かもしれません」
ミラ「どうゆうことや?」
レオン「かくかくしかじかで」
例の如く事情を説明する。
ミラ「ほんなら、最近のタタルの行動とも辻褄が合うわけやな」
レオン「そういう事です。後は剣が取り戻せれば・・・」
ミラ「そんなん、うちに任せとき!力ずくでも取り返したるさかい」
レオン「それはありがたいが、居場所を知っているのか?」
ミラ「あの子は今頃ニャンプーの自宅で寝とるはずやで」
ジーク「ニャンプーってなんだ?」
ミラ「獣人の町や」
ジーク「獣人か~、これは厄介だな」
マリン「なんでー?」
ジーク「むか~しむかしのお話だが、人間と獣人は戦争してるんだよ」
マリン「へぇー」
ミラ「せやけど、最近は人間と交流する獣人も増えとるんやで。うちもその中の一人や」
そう良いながら被っていた帽子を脱いでみせる。
マリン「あー!ねこみみー!」
レオン「貴方も獣人でしたか」
ミラ「せや。人間相手に商売しとるから、普段は隠してんねんけどな」
ジーク「もっさん達は知ってるのか?」
ミラ「もちろんや」
レオン「犯人が分かった所で、早速ニャンプーへ行くとしよう」
ミラ「まちぃな。いきなり自分らが行っても、力ずくで追い出されるだけやで」
ジーク「じゃあどうすんだ?」
ミラ「うちが町に行って村長に話つけてきたる」
レオン「ふーむ。お願いします」
ミラ「素直な事はええことやで。ほな、うちはすぐに向かうさかい、自分らは楽屋にもどっときや」
ジーク「おう、頼んだぜ!」
こうしてミラはニャンプーへと向かい、四人は楽屋へと戻る。
―グランドきゃべつ 楽屋―
ジーク「もっさん達は、まだ戻って来てないみたいだな」
レオン「座って待たせてもらおう」
待つこと数十分。新喜劇メンバーがガヤガヤと楽しそうに楽屋へと戻ってくる。
もっさん「いやー、今日もめっちゃウケたな」
ジョージ「ワシの渾身のギャグが効いたんでっしゃろ」
アカシヤ「ないない」
サカタ「僕つかれましたわ」
アカシヤ「サカタ兄さん、隅に立ってただけですやん」
ジーク「もっさん、おつかれさん」
もっさん「おう、待たせたな」
ジーク「なんかわかった?」
もっさん「すまんなぁ、全然アカンかったわ」
ジーク「良いって良いって」
もっさん「このままじゃ、わいの気がおさまらん!」
ジーク「もっさんも熱い人だな」
ジョージ「ガハハハ!ワシら、兄さんの男気に惹かれて入団したようなもんやからな!」
アカシヤ「俺は金やけどな」
もっさん「せや、自分ら腹減ったやろ?」
ジーク「おうよ!」
もっさん「ほな、皆でメシ食いにいこか」
ジーク「いよっ、太っ腹」
もっさん「自分らなに食べたい?」
アカシヤ「寿司」
もっさん「お前には聞いとらんわ」
ジーク「うーぬ、折角だし名物が食べたいな」
もっさん「よっしゃ!ナンバ名物、ヤマダのお好み焼きやな」
ジーク「なんかわからんがすごそうだ」
もっさん「そうと決まったら、はよいくで」
もっさんの奢りでごはんを食べに行く事となった。
―ヤマダ本店―
ヤマダの店内に入ると、店員が出迎えて席に案内される。
店員「ごゆっくり~」
もっさん「好きなもん選んでええぞ」
アカシヤ「そんじゃ、人魚焼きにしよかな」
マリン「えぇー!」
もっさん「安心せえ、アカシヤお得意のホラや」
アカシヤ「しょうゆうこと」
マリン「なんだ~」
もっさん「おまえらもはよ決めや」
ジョージ「ワシはチャーハンと塩らーめんとビール」
アカシヤ「おれはどうしょかな~、特上寿司でええか。後ビール」
サカタ「僕、お茶漬け」
ジーク「どうしよっかな~」
レオン「俺は決まった」
ジーク「はえーよ!」
リリィ「わたくしは、レオンと同じモノにしますわ♪」
レオン「ざるそばだぞ?」
リリィ「構いません」
マリン「あたしはイチゴパフェ!」
ジーク「マリンにはピッタリだな」
もっさん「そろそろ店員さん呼ぶで」
ジーク「よし!もっさんに任せる!」
もっさん「よっしゃ。店員さーん!」
大声で店員を呼んで注文を伝えると、数分後には料理が運ばれテーブルに並べられた。
もっさん「よっしゃ食べよか」
アカシヤ「寿司、美味いわ~」
ジョージ「ガハハハ!ええ気分や」
アカシヤ「ジョージ兄さんもう酔うてますやん」
ジョージ「お前も飲めや!」
アカシヤ「ゴボゴボッ!アホか殺す気か!」
ジーク「もっさん~、これどうやって作るんだ?」
もっさん「なんや焼き方しらんのか?しゃーない、わいが直々に見せたるわ」
ジョージ「坊主~、サカモト兄さんに焼いて貰えるなんて滅多にないで?」
ジーク「あざーっす」
レオン&リリィ「ずるずるぅぅ」
マリン「ねーねー、おそばっておいしいの?」
レオン「食べてみるか?」
マリン「うん!」
レオン「ほら」
ざるそばを小皿に分けてあげる。
マリン「ずるぅぅぅぅぅぅぅぅ。おいしーけど、食べるのがむずかしいよ」
レオン「一気に吸うからだ。キリの良い所で噛み切りなさい」
もっさん「ほれ、焼けたで」
ジーク「いただきやーす!」
ジョージ「うまそうやな、ワシもいただくでぇ」
ジーク「アチチ!アツッ!ホッホッホッ!」
ジョージ「だらしないのう、通は一口で食べんねや!」
ジーク「いやいや無理だって」
アカシヤ「兄さん、男を見せたってくださいよ」
ジョージ「やったらぁー!!」
アツアツのお好み焼きを、口いっぱいに頬張るジョージ。
ジョージ「あっちゃあいいぃーーー!!」
あまりの熱さに悶絶するジョージ。
アカシヤ「ハハハハ!ッアー!!」
もっさん「おまえら、悪ふざけもええ加減にせえよ」
サカタ「静かに食べようや」
ジョージ「すんまへーん」
そんなこんなで、賑やかに食事をしていると、ニャンプーへ行っていたミラが入店してきて、一同のもとへと歩いてくる。
ミラ「みんな、こんな所におったんか」
もっさん「ミラちゃん、舞台放っておいて何処いっとったんや?」
ミラ「すんまへんなぁ、レオン君の剣を取り戻しに行ってたんですわ」
もっさん「そら、しゃーないな」
レオン「剣は取り戻せましたか?」
ミラ「ごめん、アカンかったわ」
レオン「そうですか・・・。村長の方は?」
ミラ「うちが同伴ならええって」
レオン「では、ニャンプーへの同行をお願いしたい」
ミラ「もちろん、そのつもりやで」
ジーク「この町には良い人しかいないのかよ~」
もっさん「ワハハハ!せやせや」
ジョージ「ミラァー!お前も飲めや~」
ミラ「ほんなら、いただきます」
ミラを交えての食事会は賑やかに進み、気がつけば店の閉店時間を過ぎていた。
店員「お客さん、そろそろ帰ってくださいよ」
もっさん「いやー、すまんすまん。おまえら帰るで」
ジョージ「ぐごー、ぐごー」
アカシヤ「・・・」
マリン「すやすや」
サカタ「三人共寝とりますわ」
もっさん「ジョージ、アカシヤ、はよ起きんかい」
ジョージ「頭痛いわ~」
アカシヤ「朝でっか~・・・?」
もっさん「ホンマしょーもない奴らやな。君達もこんな時間まで付き合わせてしもうて悪いなぁ」
ジーク「さすがに眠いぜ」
もっさん「せや、自分ら宿決まってないやろ?」
ジーク「そりゃもう全く」
もっさん「ほんなら、今日はうちの劇団の宿舎に泊まってくとええわ」
レオン「よろしいのですか?」
もっさん「かまへんかまへん。ミラちゃん、送ったってあげてくれるか?」
ミラ「ほなら、みんないこか」
ジーク「よいしょ、っと」
ジークが寝ているマリンを背負い、ミラに案内されて坂本新喜劇が使用している宿舎へと向かう。
―宿舎 空き部屋―
部屋の中に入ると、六畳程の部屋に四枚布団が用意されていた。
ミラ「狭い所やけど、堪忍な」
ジーク「タダで泊まれるだけで十分だぜ」
ミラ「そうゆうてくれると助かるわ。布団は自由に使ってええよ」
ジーク「おっけー」
ミラ「ほなら、おやすみ」
リリィ「おやすみなさい」
ミラが部屋を出てドアを閉めると、レオンとリリィが布団を敷き始める。
レオン「四人一緒の部屋で寝るのは始めてだな」
リリィ「なんだかワクワクしますわね」
ジーク「とりあえず、マリンを寝かせないと」
しばらく待っていると布団の用意ができたので、マリンをそっと寝かせてようやく一息つく。
ジーク「だぁー。マリンは小さい割に重いんだよな」
レオン「下半身は筋肉質だからな」
ジーク「もう俺は寝るぞー」
レオン「俺も寝るよ」
リリィ「おやすみなさい」
ジーク「ぐがーぐがー」
左からレオン、ジーク、マリン、リリィの順に並んで就寝する。
そして翌朝。レオンの体に何かがのしかかり、その重さで目が覚める。
レオン「(ん~・・・、重い・・・)」
ジーク「ぐがーぐがー」
どうやらジークが足を乗せていたようで、起こさないようにそっと足をどけると、外の空気を吸いに部屋を後にする。
レオン「すぅー、はぁ~・・・。ん?あれはミラか?」
外に出て深呼吸をしていると、ふと、ミラの姿が目に飛び込んでくる。
レオン「(あれは・・・、コロモがやっていた舞というヤツか?)」
舞を演るミラの姿は女神の様に美しく、思わず見惚れてしまう。
レオン「・・・」
ジーク マリン「ワッ!!」
レオン「ぬわっ!?」
舞に夢中になっていたので、背後から忍び寄ってきていた二人の気配に気づかず、突然発せられた大声に普段はクールなレオンも思わず声を上げてしまった。
ジーク「ハハハ!」
マリン「あはは」
レオン「脅かすなよ・・・」
ジーク「日頃のお返しだぜ」
そのバカ騒ぎに気づいたミラは舞を止め、三人に声を掛ける。
ミラ「みんなおはよう、朝から元気やね」
ジーク「元気も元気、元気ビンビン丸だぜ!」
レオン「なんだそれは」
マリン「ミラさん、なにしてたの?」
ミラ「うちは舞の稽古や」
ジーク「最高にクールだったぜ」
ミラ「ふふっ、おおきに」
そんな話をしていると、今の騒ぎで目が覚めてしまったのか、リリィがぼさぼさの髪で部屋から出てくる。
リリィ「おはようございます」
ジーク「おっす」
マリン「おはよー」
レオン「リリィ、髪型がなんというか、芸術的だぞ」
リリィ「えっ?」
何の事かわからず髪を手で触って確かめると、ようやく事の重大さに気が付いたようで慌てて部屋に戻っていく。
リリィ「見ないでー!」
ギィー!ガチャン!
ジーク「もう遅いっての」
マリン「どっかーんってなってたね」
ミラ「皆起きたようやし、そろそろいこか?」
ジーク「その前に、もっさんに挨拶してかないとな」
レオン「そうだな」
ミラ「ほな、うちはリリィちゃんを待ってから出口に向かうさかい、三人で挨拶に行っとき」
ジーク「もっさんはどこにいんだ?」
ミラ「せやね・・・。多分、新喜劇の楽屋におるよ」
ジーク「オーライ、行こうぜ」
ミラと別れ、もっさんのいる新喜劇楽屋へと向かった。
―グランドきゃべつ 楽屋―
楽屋前に到着すると、ドアをノックして中へと入る。
トントン!
ジーク「失礼しやーす」
中に入ってみるともっさんしかおらず、椅子に座って暇そうにしていた。
ジーク「おはようっす」
もっさん「おっ?おはようさん。ここに来たっちゅうことはなんか用か?」
レオン「これから町を出るので一言ご挨拶をと思いまして」
もっさん「ワハハハ!感心やな、自分出世するで」
レオン「(一応王子なんだが)」
ジーク「もっさん世話になったな!」
もっさん「おう!また遊びにこいや」
マリン「またねー」
もっさんに挨拶を済ませると、町の出口へと向かい、到着するとそこには既にミラとリリィの姿があった。
レオン「待たせたな」
ミラ「うちらも今来たとこやで」
ジーク「そんじゃ出発しようぜ!」
レオン「そうだな」
一同はニャンプーへ向かい歩き出すが、リリィだけがその場に佇んでいた。
レオン「リリィ、どうしたんだ?」
リリィ「・・・」
ジーク「これは・・・、事件だ!」
普段なら絶対に無視するはずのないリリィ。
これは明らかに様子がおかしかった。
レオン「ヒソヒソ・・・(あの髪型を見られたのが、相当ショックだったのかもしれんな)」
ジーク「ヒソヒソ・・・(意外と繊細なんだな意外と)」
マリン「ヒソヒソ・・・(元気付けてあげようよ!)」
レオン「ヒソヒソ・・・(そうだな・・・。よし!)」
レオンは何かを閃いた様子でリリィに向かいこう述べた。
レオン「お前はすごくかわいい」
突然の言葉に驚愕する一同。
リリィ「えっ?」
ミラ「あらま」
ジーク「ん?ん?」
マリン「わー」
その言葉を聞いたリリィは一瞬驚いた様子だったが、段々と状況を理解して笑い始める。
リリィ「あははは」
レオン「何か変な事言ったか?」
リリィ「みんな勘違いしてますわよ」
ジーク「どういうこった?」
リリィ「わたくしがボーッとしていたのは、考え事をしていただけです」
レオン「そうだったのか・・・」
リリィ「でも、レオンからあんなセリフが聞けるなんて感激ですわ♪」
ジーク「相当レアだからな」
レオン「さっさと行くぞ」
こうしてナンバを出発した一行は、マモノにとり憑かれたと思われる少年【タタル】を助けるべく、獣人の芸子【ミラ】と共にニャンプーへと向かうのであった。
第七話 完