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心の在処  作者: Jemko
本編
7/10

騎士の魂

一行は、海賊の本拠地ラウミー島を出発して、人魚の町アクマクアへと向かっていた。

―潜水艇―


潜水艇に乗り込んだ四人は、窓から海中の景色を楽しんでいた。


マリン「みてみてー、おさかな~」

ジーク「お前も魚じゃーん」

マリン「人魚だよ!」

ジーク「似たようなモノだろうが」

マリン「ちがうもん!」

レオン「あまりマリンをイジめるなよ、泣いてしまうぞ」

マリン「泣かないよ!」


マイコ「そろそろ夜光虫の洞窟に着くっすよ~」

ジーク「なんだそりゃ?」

マイコ「人魚の町に続く洞窟っす」

ジーク「ふぇ~」


しばらく海中を進むと、ぽっかりと口を開けた洞窟が見えてくる。


ジーク「洞窟って、あれか~?」

マイコ「そうっす」

マリン「おねえちゃん、心配してるだろうなー」

ジーク「なにっ!お姉さんがいるのか!?」

マリン「うん」

ジーク「是非紹介をだな」

マリン「いいよー」

ジーク「やったぜ」

マイコ「洞窟に入るっす」


洞窟の中に入ると、淡い緑色の光に包まれた美しい光景が広がっていた。


ジーク「うおー!なんだこりゃー!?」

マイコ「夜光虫、ってのが壁一面に張り付いてて、緑色の光を放ってるっす」

マリン「あの虫まずいよー」

ジーク「お前、虫食ったのかよ・・・」

マリン「えへへ」


レオン「・・・(次のマモノは一体どんな奴なのか・・・)」

リリィ「レオン?どうかなさったの?」

レオン「いやな、景色が綺麗だと思ってな」

リリィ「そうですわね」


マイコ「そろそろ浮上するっすよ」


潜水艇が浮上すると、そこは町の中心と思われる場所だった。



―アクマクア―



マイコ「みなさーん、到着したっす。外には空気があるっすから出て平気っすよ」

レオン「町は海の中にあるんじゃなかったのか?」

マイコ「正確には、海の中からしか行けないって事っすよ」

レオン「なるほどな」

マリン「レオン、はやくー」

ジーク「はやくー」

レオン「わかったわかった」

マイコ「うちはここで待ってるっす。用事が済んだら戻ってきて欲しいっす」

レオン「あぁ、できるだけ早く終わらせる」


四人がハッチを開けて外に出てみると、そこには驚いた人魚達が集まってきていて、

マリンは彼らを安心させる為に、無事に帰ってきた事を伝える。


マリン「みんなー!かえってきたよー」

人魚A「あれはマリンじゃないか!?」

人魚B「無事だったのね」

マリン「レオン達がねー、助けてくれたの」

人魚A「そうかそうか。皆さん仲間を助けてくれてありがとう」

レオン「礼には及ばん」


マリン「みんなー、あたしの家にいこうー」

ジーク「お姉さんを安心させてやらないとな」


マリンに連れられて、家へと向かった。



―アクマクア マリン家―



マリン「おねえちゃーん!かえってきたよー!」

人魚姉「あらあら~?マリンちゃん、どこに遊びに行ってたの~?」

マリン「遊んでたんじゃないよー!」

ジーク「ワーオ!実にお美しいお姉さんだ!」

人魚姉「あら~?そちらの方達はどなたかしら~?」

マリン「あたしを助けてくれ人達だよ」

人魚姉「あらあら、そうなの~?」


レオン「レオンハルトと申します」

リリィ「リリィと申しますわ」

ジーク「俺はジークニール!お姉さんのお名前は?」

人魚姉「私はアクアよ~。皆、マリンちゃんを助けてくれてありがとう~」

ジーク「フフフ、それじゃあ私とデートしましょう」

アクア「あらあら~?私でいいの~?」

ジーク「もちろんです!!」

レオン「そんな事してる場合じゃないだろう。人魚の姫に会わなければ」

アクア「あら~?ディーネちゃんに会いたいの~?」

レオン「ディーネちゃんとは?」

マリン「お姫さまの名前だよ」

レオン「なるほど。ここに来た理由は、ディーネ姫にマモノがとり憑いていないか調べる為です」

アクア「マモノ~?」

レオン「実はかくかくしかじかで」


例の如く事情を説明する。


アクア「あらあら、まぁまぁ、それは大変ね~」

ジーク「そうなんだよ~」

レオン「仲間を船で待たせているので、早い所確認したいのだが」

アクア「それじゃ~、私が会わせてあげるわよ~」

レオン「それは願っても無い、是非お願いします」

アクア「でもその前に、海王様にご挨拶しないとね~」

レオン「海王様とは?」

マリン「海王様はねー、ディーネちゃんのお父さんでねー、海で一番偉い人なんだよ!」

レオン「確かに、ご挨拶するのが礼儀ですね」

アクア「それじゃあ行きましょうか~」


アクアに案内されてアクマクア王宮へと向かうと、

入り口に二人の兵士が立っていて、一行を呼び止める。


人魚兵A「まてまてぇーい!怪しい奴らめぇーい!」

アクア「あらあら~、私よ~」

人魚兵A「おぉーう!アクアさんじゃありませぇーんか!」

アクア「この子達は私のお友達なのよ~、通してあげてくれないかしら~?」

人魚兵A「うむむ~ん、どうするべきか・・・」

アクア「お願いきいてくれたら~、うれしいな~♪」

人魚兵A「でへへ~。しょうがないな~ん、特別だぞ~ん」

人魚兵B「おいおい、いいのかよ?」

人魚兵A「大丈夫大丈夫、へーきへーき」


アクアの色仕掛けのおかげで通してもらえる事となり、王宮内に入っていく。



―アクマクア王宮―



王宮に入った一行は、会話をしながら王の間へと向かっていた。


レオン「アクアは王宮に仕えているのか?」

アクア「そうよ~」

ジーク「だから品が良いんだな、うん」

レオン「お前も城に仕えているはずなのに、こうも違うものか」

ジーク「それはだってあれだよ、男のあれだよ」

レオン「何だそれは」

アクア「海王さまの部屋が見えてきたわよ~」


王の間の前にはやはり兵士が立っていた。


人魚兵E「おや?アクアさんじゃないですか」

アクア「警備、ご苦労様~」

人魚兵E「いえいえ、これも仕事ですから」

ジーク「ご苦労様でーす」

人魚兵D「こらこら、勝手に入っちゃいかん」


自然に中に入ろうとするが止められてしまう。


ジーク「惜しかったな」

アクア「その子達を通してあげてくれないかしら?」

人魚兵D「色々と手続きがあってですね」

人魚兵E「別にいいんじゃないか?」

人魚兵D「お前なぁ、そんな簡単に決めれないだろう」

人魚兵E「お前は硬いんだよな、そんなんじゃ彼女できないぞ?」

人魚兵D「それとこれとは関係ないだろうがー!」


アクア「みんな~、入っていいわよ~」

レオン「行こうか」

マリン「はーい」


人魚兵がモメ始めたので、そっと王の間へと入る。



―アクマクア王宮 王の間―



王の間に入ると、そこには腕が六本、足が二本ある、巨大なハゲたおっさんが玉座に座っていた。


アクア「海王様~、お客様を連れてきましたぁ~」

海王「ヌ~ン?」

ジーク「でっけー、おっさんだな」


レオン「海王様、お初にお目にかかります。私の名はレオンハルト=シュタインと申します」

海王「シュタイン・・・?おー、シュタイン家のモノか」

レオン「ご存知なのですか?」

海王「100年前にも、シュタインと名乗るモノが訪ねてきたからな」

レオン「(もしかして、お爺様か・・・?)」

海王「シュタイン家のモノが来たと言う事は、マモノが復活してしまったのか?」

レオン「封印を守りきれず、申し訳ありません」

海王「なーに、また封印すりゃ良いだけの事だ」

レオン「恐れ入ります。それで用事と言うのは、ディーネ姫にマモノがとり憑いているかもしれません」

海王「やはりそうか」

レオン「やはりというと?」

海王「最近ディーネの奴がな、一緒に風呂に入ってくれんのだ」

ジーク「なんだよそれ・・・」

海王「それだけではない、気にいらない事があると急に怒り出したりなぁ」

レオン「間違いなさそうですね」

海王「早いところ封印してくれると助かるぞ」

レオン「それでは、ディーネ姫に会わせて頂けるでしょうか?」

海王「うむ。部屋にいるだろうから行ってくるといい」

レオン「ありがとうございます」


海王の許可を得たので、姫の部屋に向かう事にし、しばらく廊下を歩いて部屋の前に着くと、アクアがドアをノックする。


トントントン!

アクア「ディーネちゃん~、入るわよ~」


すると、中から返事が返ってくる。


ディーネ「アクアか?入ってよいぞ」


アクアを先頭に順番に部屋へと入る。



―アクマクア王宮 姫の部屋―



アクア「ディーネちゃ~ん、お客様を連れてきたわよ~」

ディーネ「むむ、だれじゃ?」

レオン「ディーネ姫、お初にお目にかかります」

ディーネ「おぬしら人間か!」

ジーク「おう!人間だ」

ディーネ「人間はきらいじゃ!でていけー!」

ジーク「えぇー!?もうちょっと話そうぜ」

ディーネ「いやじゃ!いやじゃ!人間は悪い奴じゃ!」

マリン「ディーネちゃん!みんないい人達だよ!」

ディーネ「なんじゃマリン、最近姿が見えなかったではないか?」

マリン「えっと~、漁師の人に捕まっちゃってて」

ディーネ「ほれみろ、やっぱり人間は悪いやつじゃ!」

マリン「あう~」


レオン「ディーネ姫、なぜそこまで人間を嫌っておられるのですか?」

ディーネ「人間には教えぬ!」

マリン「それじゃあ、あたしに教えてよ~」

ディーネ「おぬしなら、まぁいいじゃろ、耳を貸すのじゃ」


マリンにコッソリと理由を教える。


ディーネ「喋ってはならぬぞ」

マリン「はーい」

リリィ「私達にも教えてくださらない?」

ディーネ「いやじゃ」

ジーク「まぁまぁ、これでも食べてリラックスしようぜ」


一本のバナナを差し出す。


ディーネ「なんじゃこれは?」

マリン「バナナって言って、すっごーい甘くておいしいの」

ディーネ「むぅ・・・。どうしてもと言うのなら、受け取ってやらんでもないぞ」

ジーク「どうぞどうぞ~」

ディーネ「うむ。それじゃあ頂くとするかの」


嬉しそうにバナナを食べ始める。


ディーネ「もぐもぐ。こ、これは!とってもおいしいのう~♪」


バナナを食べて幸せ気分になるディーネ。

すると、胸の辺りに黒い光が表れ、レオンはそれを見逃さなかった。


レオン「ヒソヒソ・・・(心の扉が表れたぞ)」

ジーク「ヒソヒソ・・・(バナナ作戦大成功だな!)」

リリィ「ヒソヒソ・・・(勝手に入ってよろしいのかしら?)」

レオン「ヒソヒソ・・・(海王様には許可を頂いているんだ、問題ないだろう)」

リリィ「ヒソヒソ・・・(そうですわね)」


レオン「ディーネ姫、動かないで下さいね」


ディーネがバナナを食べている隙に、扉に鍵を差し込むと、辺りは光に包まれていく。


ディーネ「な、なんじゃー!?」



―精神世界―



精神世界に侵入した四人の目に映ったのは、溶岩が流れる灼熱の火山地帯だった。


レオン「ここは火山か?」

ジーク「あっちー!」

マリン「焼き魚になっちゃうよ~」

リリィ「あら?マリンまで連れてきてしまいましたわね」

マリン「ここどこー?」

レオン「マモノが作った世界だ」

マリン「心の中なの?すごーい」


到着して間もなく、辺りに爆音が響き渡る。

ドッカーン!


ジーク「なななんだ!?」

リリィ「火山が噴火したようですわ!」

レオン「このままだと溶岩に巻き込まれるな」

マリン「みんなー、あっちに洞窟があるよー」


マリンが遠くに洞窟を発見する。


レオン「行くぞ!」


四人が慌てて洞窟に駆け込むと、入り口が赤黒い溶岩で覆い尽くされて塞がれてしまう。


ジーク「セーフ」

レオン「しかし、戻れなくなったな」

リリィ「洞窟が奥の方に続いてますわ」

レオン「進むしかないか」


しばらく薄暗い洞窟を進むと、出口が見えてくる。


ジーク「おー、外だ」

レオン「ここは・・・、火山の火口付近のようだな」

マリン「みんなー、あれみてー」


マリンが指差した先には、カメの胴体にゾウの脚と鼻を足したような、奇妙なマモノがいた。


レオン「奴がここのマモノか」

ジーク「ありゃ、怠惰よりでかいぜ」

リリィ「まだこちらには気づいてないようですわね」

レオン「まずは俺とジークで奴の動きを探る。二人は後方で観察してくれ」

リリィ「わかりましたわ」

マリン「はーい」


ジーク「噴火したすぐ後に戦うのかよ~」

レオン「落石は避ければ問題ない」

ジーク「無茶言いやがって」

レオン「俺は奴の後ろに回りこむから、お前は正面から注意を引き付けてくれ」

ジーク「オッケー」


作戦会議を済ませると、四人は行動を開始する。

まずはジークがマモノの注意を引き付ける。


ジーク「おーいカメちゃん、遊ぼうぜ」

???「パォーン?ナンダオマエハ?」

ジーク「俺かぁ?俺の名はジークニール!人呼んで俊足のラストナイトだぁ!」

ジーク「お前も名を名乗れぇーい」

???「ワガナハ【フンド】・・・。パォオオオオオン!」


自己紹介が終わると、唐突に鼻から溶岩を噴射してくる。


ジーク「おわっ!?」


とっさに盾を構えて防ぐ。


ジーク「このやろー!いきなり攻撃するなんて卑怯だぞ!」

憤怒「ウルサイゾオォォォォン!」


憤怒は容赦なく溶岩を噴き出し続け、ジークは防ぐので手一杯であった。


ジーク「くっそー、うごけねぇ・・・。ん?あれはレオンか?」


憤怒がジーク相手に夢中になっていると、いつの間にかレオンが憤怒の甲羅の上に乗っていた。


ジーク「(こいつ・・・、弱点が見当たらないぞ・・・?)」

憤怒「ヌヌヌ!?ダレダ!セナカニノッテイルノハ!」

ジーク「気づかれたか!」

憤怒「パォォォオオオオオン!!」


背中に乗っている事がバレると、憤怒は激しく暴れだす。


レオン「(マズい、掴まる場所がない!)」

憤怒「パォオオオオオン!」


甲羅の上はツルツルしていて掴まる場所など無く、レオンは吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。


ザザザザァァァー!

レオン「ぐはぁ!」

憤怒「トドメダゾォォオオオン!!」


倒れているレオンを踏み潰そうと、足を大きく上げる。


ジーク「させるかあぁぁ!!」


とっさに走り出すと、勢いよく下ろされる足を盾で受け止める。


憤怒「パオパオパオ、ヨクトメラレタナ」

ジーク「ぬおおおお!!」

レオン「げほっ!げほっ!、ジークすまんな・・・」

ジーク「レオン、今の内にここを離れろ!」

レオン「お前を置いて逃げれるわけないだろう」


レオンは立ち上がると、憤怒の懐に潜り込み、下から剣を突き刺す。


レオン「ハァッ!」

ザシュ!

憤怒「イタイゾォオオオウ!!」


あまりの痛みに、足を再び大きく上げる。


レオン「今だ!逃げるぞ!」

ジーク「うぇーい」


憤怒が足を下ろす前に、二人はその場から離れる。


ジーク「ヒュー、助かったぜ」

レオン「それはこちらのセリフだ」

憤怒「オマエラ!ユルサンゾォオオオオウ!」


憤怒の怒りは激しさを増し、噴き出す溶岩の量が更に増えていた。

弱点も見つからず、防戦一方の二人、その頃、後方で観察していたリリィとマリンは・・・。


リリィ「このままでは二人が危ないですわ」

マリン「どうしよー」

リリィ「わたくしも加勢するべきかしら・・・」

マリン「あぶないよー」

リリィ「でも・・・」

マリン「う~ん、あたしが歌ってみる!」

リリィ「歌?」

マリン「うん、人魚の歌にはね~、不思議な力があるの」


そう言うと、マリンが唄い始める。


マリン「ラララ~♪」

ジーク「ん?なんだこの歌?」

レオン「わからん・・・が、なにか不思議な力を感じる」

憤怒「パオーン?」


憤怒も怒りを忘れ、思わず耳を傾ける。


マリン「ラララ~・・・。わかったー!」


唄い終えたマリンが何かに気づき、レオン達に大声で伝える。


マリン「レオーン!その亀さんの弱点は頭だよ~!」

ジーク「なにぃー!?」

レオン「頭・・・。そうか、甲羅の中か!」

ジーク「なるほどな、弱点さえわかればこんな奴相手じゃないぜ!」

憤怒「パオパオパオ!バショガワカッタトコロデ、コウゲキデキマイ」

レオン「ジーク耳を貸せ・・・。ごにょごにょ」

ジーク「おっけー」

レオン「リリィー!ジークにムチを投げろ!」

リリィ「えぇ!?」

ジーク「いそげー!」

リリィ「わかりましたわ!」


思い切りムチを投げると、ジークが受け取り装備する。


レオン「行くぞ!」


レオンとジークは左右に分かれ、的を散らした事により、憤怒はどちらを攻撃するか迷う。


憤怒「コザカシイマネヲ・・・」

ジーク「ヘイヘーイ!こっちに攻撃しな!」

憤怒「ソノテニハノランゾ!」


先程の経験を踏まえて、レオンに狙いを定めて溶岩を噴射する。


レオン「フッ」

ジーク「かかったなー!」


ジークが横から回り込むと、憤怒の鼻にムチを絡めて頭を引きずり出そうと試みる。


ジーク「ぐぉおおおおお!!でてこいやぁぁあ!!」

憤怒「コザカシイゾォオウ!!」


憤怒はムチを振り解こうと必死に暴れるが、切れる様子も解ける様子もなかった。


憤怒「ナンダコレハ!」

ジーク「このムチはスペシャルなんだぜ!!」

憤怒「クソゥ!」


解くのを諦めた憤怒は、ジークめがけて突進を始める。


憤怒「コレデヒッパルコトハデキナイゾウ!」

ジーク「バカバカ!やめろって」


逃げ回るだけで引っ張る事ができず、作戦は失敗かと思われた。


レオン「(どうなるかわからないが、脱力を使ってみるか)」


意識を集中し、憤怒めがけて脱力を放つが、まるで効いている様子はなかった。


レオン「(マモノには通用しないとなると。他にいい手はないものか・・・)」


脱力も通じず途方に暮れるレオン。すると、逃げ回っていたジークがアイデアを閃く。


ジーク「レオーン!俺に考えがあるぜ!」


そう言うと、火口に向かって走っていく。


憤怒「ナニヲスルキダ!」

レオン「まさか!?」

ジーク「レオーン、後は任せたぞー!」


火口に到着したジークは、躊躇無く飛び降りる。


憤怒「ヤメロォォォォン!」


しばらくしてムチがピンと張った状態になると、

甲羅から頭がグイグイと引っ張り出され、コアが露出する。


レオン「ジーク!お前の死は無駄にはしないぞ!」


ジーク「おーい!死んでないぞー!」


ジークが命をかけて作り出した隙を無駄にしない為にも、レオンはコアめがけて全力で走り出す。

一方、憤怒はその場で踏ん張っているのが精一杯で、近づいてくるレオンに成す術も無かった。


憤怒「マテヤメロ!ハナセバワカル!」

レオン「問答無用!!」

ズシュ!、パキパキパキパキパキッ!パリーン!

憤怒「パオォォォオオオン!!」


剣を突き立てると、コアは粉々に砕け散り、憤怒の体は黒いモノとなって剣に吸い込まれていくが、

それと同時に鼻を縛っていたムチが解けてしまう。


レオン「マズい!ムチが!」


とっさに掴もうとするが、あと少しの所で掴む事ができず、もうダメかと思われた、その時。


マリン「うぅーん!重いよー!」

リリィ「レオーン!早く手伝ってー!」


岩場に隠れていたはずの二人が、いつの間にかムチを掴んでいた。


レオン「二人共、よくやったぞ!」


急いで二人のもとへ向かい、ムチを手に巻きつけると、力一杯引き上げ始める。


レオン「ジーク!大丈夫かー!?」

ジーク「なんとかな~」

リリィ「無茶しすぎですわよ」

ジーク「へっへっへ」

レオン「それにしてもお前、重過ぎるぞ」

ジーク「この重さのおかげで倒せたようなもんだぜ」

リリィ「そうですわね」


一同がある事を忘れていると、それは突然やってきた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


マリン「わわわ!」

レオン「いかん!精神世界が崩れ始めた」

ジーク「早く引き上げてくれぇ~」

レオン「全力でやっている」

ジーク「おい!やばいぞ!火山が噴火しそうだ!」

マリン「えー!?本当に焼き魚になっちゃうよー」


レオン「ジーク!鎧を捨てろ!」

ジーク「いやいや、これは騎士の魂だから」

リリィ「そんな事言っている場合ではありません!」

マリン「そうだよー、このままだとみんな死んじゃうよー」

ジーク「でもなー」


レオン「ジーク、お前のしたかった事はなんだ・・・?」

ジーク「えーっと」

レオン「大切なモノを護る為に騎士なったんだろう・・・?」

ジーク「そうだった」

レオン「鎧なんて無くとも、お前の心の中に騎士の魂はあるはずだろ・・・!?」

ジーク「おっ、そうか」


ジークはレオンとの問答の末に、ラストナイトの境地に辿り着き、思い切って鎧を脱ぎ捨てた。


レオン「よく決断したな・・・」

ジーク「おうよ!」

リリィ「大分軽くなりましたわね」

マリン「これならいけそうだよー!」


三人は精一杯ムチを引っ張り、ようやくジークを引き上げる事に成功する。


ジーク「はぁ~、助かった~」

レオン「はぁはぁ・・・、早く逃げないとな」

ジーク「マリーン!俺が抱っこしてやるぜぇ」

マリン「うん」

レオン「よし、行くぞ!」


四人は休む間もなく、心の扉を目指して走り出すが、洞窟の出口は相変わらず塞がれていた。


ジーク「そいや、溶岩で塞がれてたんだっけか」

リリィ「どうしますの?」

レオン「新たな力を試してみる」

ジーク「おっ?おっ?」


レオンが意識を集中すると、心の剣が輝き始める。


ジーク「なんだなんだ?」

レオン「ハァッ!!」


輝きを纏った剣の一撃は、固まった溶岩の壁を跡形もなく打ち砕いた。

ドッカーン!


ジーク「ヒュー」

レオン「さぁ行くぞ!」


洞窟を抜ける事ができた四人は、無事に現実世界へと帰還する。



―アクマクア王宮 姫の部屋―



レオン「ふぅ・・・、戻れたか」

ディーネ「おまえたち!なにをしたのじゃ!」

レオン「ディーネ姫、今のは心を癒す魔法ですよ」

ディーネ「魔法?」

レオン「はい、ご気分が良くなったのではありませんか?」

ディーネ「う~む。言われてみれば、なんだか清々しい気分なのじゃ♪」


ジーク「ヒソヒソ・・・(姫様は俺たちが消えた事に気がついてないのか?)」

レオン「ヒソヒソ・・・(恐らくだが、精神世界にいる間は時間が進まないのだろう)」

ジーク「ヒソヒソ・・・(だから怠惰の時もおっさんが目を瞑ってたのか)」

レオン「ヒソヒソ・・・(そういう事だ)」


ディーネ「なにをヒソヒソ言っておるのじゃ?」

ジーク「いや、そろそろ帰ろうかと」

レオン「マイコが待っているしな」

ディーナ「そうか、またな。バナナおいしかったぞ」

ジーク「またバナナ持ってきてやるよー」

レオン「アクアさん、帰りもお願いします」

アクア「は~い」


五人はディーネと別れて部屋を出る。



―アクマクア王宮―



しばらく廊下を歩いていると、唐突にレオンが口を開く。


レオン「マリン、さっき姫から教えてもらった理由を聞かせてくれないか?」

マリン「いいよー。えっとねー、人間が海を汚したり、人魚にひどい事するのが許せないんだってー」

レオン「そうか・・・。みんな、先に王の間に行っていてくれ」


そう言うと、姫の部屋に引き返し、部屋の前に到着するとドアをノックする。


トントントン!

レオン「姫様、入ってもよろしいですか?」


すると、中から返事が返ってくる。


ディーネ「ダメじゃ」


レオン「それならば、ここで話しますので聞いていてください」


部屋からは何も反応が返ってこない。


レオン「姫様がなぜ人間を嫌っているのか、その理由を先程知りました」

レオン「人間が犯した罪は決して許される事ではないでしょう・・・。ですが、一度だけ私にチャンスを下さい」

レオン「今している旅を終わらせた暁には、人魚と美しい海を守る為に尽力する事を誓います・・・」


やはり何も反応は無い。


レオン「私からの話は以上です。失礼しました」


その場を離れようとすると、ドアがゆっくりと開いてディーネが少し顔を出すと、小さな声で喋りかける。


ギィー・・・

ディーネ「人間は嫌いじゃ。嫌いじゃが、お前を少しだけ信用してやる」

ディーネ「わらわが女王になるまでに、人間達の行いが改善されぬようなら・・・、その時は覚悟しておれよ?」


その言葉を聞いたレオンは、そっと振り返り一言だけ述べる。


レオン「ありがとう」


そう言うと、仲間達が待つ王の間へと向かう。



―アクマクア王宮 王の間―



レオン「みんな、待たせたな」

リリィ「何をしてらしたの?」

レオン「秘密だ」

海王「封印の方はどうであった?」

レオン「無事に憤怒を封印する事ができました」

海王「ハッハッハ!よくやった。この調子で他のマモノも頼んだぞ」

レオン「はい!」

アクア「それじゃあ、そろそろ失礼しましょうか」

ジーク「マイコが待ちくたびれてそうだぜ」

レオン「それでは海王様、お世話になりました」

海王「うむ。困った事があれば相談しにきなさい」


海王に挨拶を済ませ、マイコの待つ潜水艇へと向かう。



―潜水艇―



レオン「マイコ、待たせたな」

マイコ「用事が終わったっすか?」

ジーク「おう、バッチリ」

マイコ「それじゃ発進するっすよ」


レオン「アクアさん、お世話になりました」

アクア「みんな~、また遊びにきてねぇ~」

マリン「あたしも行きたいよ~」

レオン「お前は子供だからダメだ」

マリン「けちー!」


ジーク「アクアさん!次こそはデートしましょうね!」

アクア「うふふ、そうね」

ジーク「あぁ、別れたくない・・・」

リリィ「それじゃ閉めますわよ」


マリンとアクアに別れを告げ、ハッチを閉めて潜水を開始する。


マイコ「それでぇ~、次はどこに向かうっすか?」

レオン「そういえば次の行き先を決めてなかったな」

マイコ「特に行き先がないなら~、ナンバなんてどうっすか?」

レオン「ナンバ?」

マイコ「芸人の町で~、ここからかなり近い所にあるっす」

レオン「では、お願いしよう」

ジーク「これで行き先は決まったな」

マイコ「そんじゃ向かうっすね」


こうしてアクマクアで憤怒を倒した一行は芸人の町、ナンバに向かうのであった


第六話 完

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