人魚と海賊
サンシャインを出発した三人は、港町ミウミウを目指して街道を歩いていた。
―海沿いの街道―
ジーク「ヒュー、暑いなぁ~」
レオン「だから鎧を脱げって」
ジーク「やーだー」
リリィ「どうしてそんなに鎧に執着してますの?」
ジーク「これにはふかぁ~い訳があってだな」
レオン「そうかそうか」
リリィ「レオンー、おんぶしてくださらない?」
レオン「断る」
リリィ「そんな事言わずにぃ~」
レオン「ジークにしてもらえ」
リリィ「いやですわ!」
ジーク「俺の話をきけぇーい!」
レオン「また今度な」
ジーク「ぐぬぬ」
そんな話をしているとミウミウに到着する
―ミウミウ―
リリィ「ここが海の玄関と呼ばれている町ですわ」
レオン「すごい船の数だな」
ジーク「おい、アレ見てみろよ」
ジークが指差す方を見てみると、網の中で泣いている人魚の少女がいた。
リリィ「かわいそうですわね」
ジーク「女の子を捕らえるなんて許せないぜ」
レオン「そうだな」
ジーク「待ってろよー!騎士が助けにいくぜー!」
人魚を助けに港の方へ走り出すジーク。
―港―
人魚「えーん、だしてよー」
彼女は肩まで伸びた青い髪に琥珀色の瞳を持ち。身長132cm。色白で童顔。
服装の方は貝殻ブラのみで、上半身はムチムチ、下半身はピチピチしている。
漁師「ダメだダメだ。お前は高く売れそうだからな」
ジーク「おっさん!そこまでだ」
漁師「ぬっ!なんだ小僧」
ジーク「小僧じゃねぇ、ジークニール様だ」
漁師「それで、俺になんの用だ?」
ジーク「人魚ちゃんがかわいそうだろ~?逃がしてやれよ」
漁師「これは俺が捕まえたもんだ、どうしようが俺の勝手だろ?」
ジーク「それは違うな」
漁師「ぬわぁにぃ?」
ジーク「世界中の女の子は全て俺のモノだ」
レオン「それも違うだろ」
後から来た二人も話しに参加する。
漁師「なにを言うかと思えば・・・、仕事の邪魔だ!あっちいけ」
ジーク「いーや、力ずくでも助けてやるぜ!」
レオン「待てジーク」
ジーク「止めるなレオン!」
リリィ「珍しく真剣ですわね」
ジーク「ここであの子助ければ、俺に一目惚れするんだ!」
レオン「わかったから、話を聞け」
ジーク「ぬぅ・・・」
レオン「俺に試してみたい事がある」
リリィ「なんですの?」
レオン「見てのおたのしみだ」
レオンが意識を集中し始めると、心の剣から黒いモノが飛び出し、漁師の中に吸い込まれていく。
レオン「おっさん、人魚を売るなんて面倒じゃないか?」
漁師「なにいってんだ?そんなわけ・・・、そんな・・・わけ・・・」
漁師「はぁ~・・・、だるいなぁ」
レオン「人魚を俺にくれないか?」
漁師「そうだなぁ・・・、でもなぁ・・・、網から出すのめんどいなぁ」
レオン「自分で出すよ」
漁師「そうかぁ?ならくれてやるよぉ」
レオン「遠慮なく頂くとしよう」
漁師「それじゃあ、俺は家に帰るよ・・・」
漁師は面倒臭そうにその場を離れていく。
ジーク「ヒュー、やったな」
リリィ「なにをなさったの?」
レオン「怠惰が持っていた負の感情を使って、無気力状態にした」
ジーク「なんも見えなかったぜ?」
レオン「心の扉と一緒で、所有者にしか見えないんだろう」
ジーク「折角だし、技に名前をつけようぜ?」
レオン「そうだな・・・、【脱力】とでも呼ぶか」
ジーク「普通だな」
人魚「おにいさん達ー!たすけてよー!」
レオン「すまん、忘れてた」
ジーク「よーし!今助けてやるぜ!」
ジークは槍を使って網を破り、人魚を海に放してあげた。
バシャーン!
人魚「ありがとー」
ジーク「じゃあ俺とデートしようぜ」
人魚「やだー」
レオン「フハハハ!人魚にもフラれたな」
ジーク「ちくしょおおおおお!!」
人魚「あはは」
ジーク「それじゃ、名前教えてくれよ~」
人魚「マリンだよ」
ジーク「かわいい名前だな~」
マリン「お兄さん達も教えてよー」
ジーク「知りたいか~?」
レオン「俺はレオンハルト。そこの鎧男がジークニール」
リリィ「わたくしはリリィと申しますわ」
マリン「よろしくね♪」
ジーク「俺の出番が・・・」
レオン「マリン、聞きたい事があるんだが」
マリン「なーに?」
レオン「知り合いに、最近性格が変わった人はいないか?」
マリン「うーん、そういえばぁ~、アクマクアのお姫様が~、最近怒りっぽくなってるらしいよ」
レオン「アクマクアとは?」
マリン「人魚の町だよ」
レオン「それは何処にあるんだ?」
マリン「海の中」
レオン「ふーむ、マモノの仕業かどうか調べようにも、海の中ではな・・・」
マリン「マモノってなーに?」
レオン「実はかくかくしかじかでな」
マリンに事情を説明する。
マリン「ふ~ん、大変なんだね」
ジーク「そうなんだよ、大変なんだよ」
レオン「ここで足踏みしていても仕方ない、情報を集めに行くか」
リリィ「そうですわね」
ジーク「マリンまたなー」
三人がその場を離れようとすると、マリンが呼び止める。
マリン「みんな、まってよー」
ジーク「やっぱり、俺とデートしたくなったか?」
マリン「ちがうよー。あたしも連れてって欲しいの」
ジーク「ん?どうしてだ?」
マリン「ここまで船で運ばれたから、アクマクアへの帰り道がわからなくて・・・」
リリィ「それは大変ですわね」
レオン「連れて行くのは構わないが、そもそも陸を歩けるのか?」
マリン「うん!でも、砂浜みたいな場所がないと1人じゃ上がれないの」
ジーク「ほらよ、掴まりな」
海面にいるマリンに槍を差伸べて、掴まった所を引き上げる。
マリン「ありがとー」
ジーク「本当に歩けるのか~?」
マリン「みてて!」
マリンが一生懸命歩いて見せるが、どう見ても跳ねているだけだった。
ジーク「前には進んでるけどな・・・」
レオン「フハハハ!面白いぞ」
マリン「こう見えても、海でずっと泳いでるから下半身は強いんだよ!」
ジーク「ほ~う、なるほどな」
レオン「かなり目立つから、絶対に1人で行動したらダメだぞ?」
マリン「はーい♪」
人魚の少女マリンを仲間に加え、一行は情報集めに戻るのだった。
―ミウミウ―
レオン「さて、何処から手を付けるか」
ジーク「情報と言ったら酒場だな」
レオン「ジークにしてはまともな意見だ」
ジーク「俺だってたまにはな?」
レオン「そうだな」
リリィ「港町ですから、1軒くらいはありそうですわね」
マリン「れっつご~」
レオン「まぁそう慌てるな、あそこのご婦人に聞いてみよう」
ジーク「お前のナンパテクを見せてもらうぜ」
仲間が見守る中、女性に酒場の事を聞きに行くレオン。
レオン「そこの綺麗なご婦人」
おばさん「?」
レオン「今、魚をさばかれている貴方ですよ」
おばさん「あたしかい?」
レオン「そうです貴方です」
おばさん「綺麗だなんてやだねぇ」
レオン「ハハハ、私は嘘がつけないもので」
ジーク「(今まさについてるな)」
おばさん「あたしに何の用だい?」
レオン「酒場が何処にあるかご存知ですか?」
おばさん「酒場なら旦那が知ってるから案内させるよ」
レオン「よろしいのですか?」
おばさん「どうせろくに仕事もしないで、ふらふらしてる宿六だからね。それくらい問題ないよ」
レオン「ありがとうございます」
そう言うと、おばさんは家に入り旦那を大声で呼ぶ。
おばさん「アンタァアァァ!!ちょっとこっち来な!!」
レオン「(すごい迫力だな)」
すると、家の中からマジでダメそうなおっさんが出てくる。
マダお「なんだよ母ちゃん」
おばさん「このお兄さんがね、酒場に行きたいそうなんだよ。あんた暇だろ?案内してあげな!」
マダお「めんどくさいなぁ」
おばさん「あたしに殺されるか、酒場に行くかどっちか決めな」
マダお「わかったよ、行くよ」
マダお「そんじゃ兄さん、さっさと行こうか」
レオン「お願いします。おまえ達、行くぞ」
ジーク「おまえもなかなかやるな~」
レオン「まぁな」
リリィ「わたくしにも、あれくらい言って欲しいですわ」
レオン「その内な」
マダおに案内されて、酒場に到着する。
マダお「ここだよ」
レオン「ご苦労だった」
マダお「それじゃ俺は家に帰るよ」
ジーク「おっさんまたな」
マダおは家に帰り、一行は酒場に入る。
―酒場―
酒場に入ったみると、まだ昼という事もあり、客がおらず閑散としていた。
そんな中で、暇そうにしていたマスターから話を聞いてみる事にした。
マスター「ここは子供の来る所じゃないぞ?」
レオン「話だけでも聞かせてもらえないだろうか?」
マスター「話が聞きたいなら、注文しな」
レオン「それじゃあミルクを」
マスター「ほらよ」
レオン「リリィ、支払いを頼む」
リリィ「お任せください♪」
レオン「それじゃあ、話を聞かせてくれ」
マスター「何が聞きたい?」
レオン「この辺りで、最近性格が変わった人間を知らないか?」
マスター「また変な質問だな・・・。まぁいい、漁師の男がナマケモノになっているらしいぞ」
レオン「それは知ってる」
マスター「俺が知っているのはそれくらいだ」
レオン「そうか・・・」
ジーク「どうするよ?」
リリィ「町で聞き込みしますの?」
レオン「つい先ほど起きた出来事を既に知っているようだから、ここのマスターの情報網は確かだ」
ジーク「そうだなぁ」
レオン「そのマスターが知らないとなれば、この町には特に異変はないのだろう」
ジーク「そいじゃ次の町に行くか?」
レオン「そうだな」
話がまとまると、レオンはテーブルの上にあったミルクを飲み干す。
レオン「ゴクッゴクッ。マスターごちそうさん」
ジーク「よっしゃ行くか」
一行が酒場を出ようとすると、マスターが呼び止める。
マスター「お前達、この先の町に行くなら諦めた方がいい」
ジーク「なんでだ?」
マスター「橋が落とされているんだ」
ジーク「道は一本しかないのか?」
マスター「あぁ、橋を通るしかないよ」
ジーク「オーライ、ありがとよ」
話が済んだので外に出る。
―ミウミウ―
ジーク「マスターの言ってた事が本当なら、これ以上進めないぜ」
レオン「かといって戻ろうにも、シュタイン兵が待ち伏せていそうだしな」
リリィ「困りましたわね」
マリン「ねーねー、ふねにのろうよ」
レオン「そうか!その手があったな」
ジーク「お手柄だぜ、マリン」
マリン「えへへ」
リリィ「それじゃあ、船着場を探しましょう」
船に乗るために、船着き場を探す四人。
しばらく海沿いを歩いていると、大型の船が停泊している桟橋を見つける。
ジーク「見つかったな」
マリン「船がおっきーよ!」
ブォオオオオオオオオ!!
ジーク「うおっ!?」
レオン「まずいな」
四人が船を眺めていると、突然汽笛が鳴り始める。
リリィ「急がないと出航してしまいますわ!」
レオン「走るぞ!」
マリン「あたし走れないよー」
ジーク「しょうがねぇな」
急いで船に向かう四人。しかし、マリンは走れないので、ジークが抱き抱えて走る。
四人が船の前に到着すると、渡しの前には船員が立っていた。
船員「君達、急がないと出航しちゃうよ」
レオン「リリィ、支払いを頼む」
リリィ「はい♪」
ジーク「はぁ・・・はぁ・・・、マリン・・・重いな・・・」
マリン「おもくないよ!」
船員「よーし、金はもらった。はやく乗りな」
金を支払い、急いで船に乗り込んでいく。
船員「出発~」
四人が船に乗り込んだと同時に、渡しが外され船は出港する。
―船上―
ジーク「ぷはぁ~、間に合ったな」
マリン「ふねふねー♪」
レオン「勢いで乗り込んでしまったが、どこに向かっているんだ?」
リリィ「そういえば行き先を確認していませんでしたわね」
ジーク「まぁいいじゃねぇか。今は船旅を楽しもうぜ」
レオン「そうだな」
ジーク「なんか走ったら腹減ったな。おっさんから貰った弁当食おうぜ」
三人はビーチのおっさんから貰ったお弁当を食べ始める。
マリン「あたしもたべるー」
ジーク「はらよ」
マリン「もぐもぐ。おいしー」
レオン「あのホテルの料理は美味いよな」
リリィ「クインシーン城の料理よりも美味しいですわ」
ジーク「ふはひんほうおほうひお、ほんはひほいひふははっはひは」
レオン「飲み込んでから喋れ」
ジーク「ゴクン。シュタイン城の料理も、そんなに美味しくなかったしな」
レオン「野菜中心だったからな・・・。男には辛い町だ」
リリィ「だからわたくしと結婚してクインシーンの王になるべきですわ♪」
レオン「それは無理だ」
ジーク「そうだよなぁ、封印を守らないといけないしな」
リリィ「それならわたくしが王妃になりますわ♪」
レオン「それも無理だ」
リリィ「むー!」
マリン「ふたりは恋人なの~?」
リリィ「許婚ですのよ」
レオン「親が勝手に決めた事だ」
ジーク「そうだそうだ」
リリィ「お父様は関係ありませんわ。自分の意志で決めたのです」
レオン「俺も自分の意志で結婚は断る」
リリィ「そんな事言っていられるのも今の内ですわ♪」
レオン「なんだその自信・・・」
ジーク「いいよないいよなー、俺にもカワイイ恋人が現れないかな~」
レオン「リリィをくれてやる」
ジーク「いらねー」
リリィ「失礼ですわね!」
そんな話をしながらお弁当を食べていると、辺りが急に騒がしくなる。
乗客「キャー!」
船員「なんだお前たちは!!」
ジーク「ん?なんか騒がしいな」
マリン「おまつりー?」
レオン「それは違うと思うぞ」
リリィ「見に行きましょう」
四人は騒ぎの起きている場所へ向かってみると、そこには武装した女性が人質をとって何かを要求していた。
武装女「あたしらはミーノウ海賊団だ」
人質女「たすけて~」
武装女「あんたら!早く食料を持ってきな!」
船員「そんな事、俺たちに決められる訳ないだろ」
武装女「じゃあ船長を呼びな!」
船員「ちょっと待ってろ」
船長を呼びにその場を離れる船員。
ジーク「ヒュー、あの女できるぜ」
レオン「見ただけでわかるのか?」
ジーク「そりゃな」
マリン「ねーねー、あの人達なにやってるの?」
ジーク「ありゃ海賊っつってな、人を誘拐したり物盗んだりそりゃ悪い奴らだ」
マリン「こわーい」
レオン「しかし、海賊にしては数が少ないようだが」
ジーク「そういうやそうだな」
そうこうしていると、先ほどの船員が船長を連れて戻ってくる。
船長「わたしが船長です」
武装女「あんたが船長かい、うちの船にありったけの食料を積み込みな!」
船長「うーむ、仕方ないな。野郎共!準備するぞ」
船員「へい!」
船長「少々お待ちを」
武装女「早くしなよ」
船長と船員達が、食料を運び出す準備の為に船内へと戻る。
ジーク「食料しか要求しないなんて変な海賊だな」
レオン「盗みにかわりはないだろう」
マリン「でもでも、悪そうな人には見えないよ?」
ジーク「俺も同感だ」
レオン「勘か?」
ジーク「いや、あんなカワイイ娘が悪い子な訳が無い」
レオン「・・・」
数分後。
ジーク「レオン、トイレ行きたいんだが」
レオン「勝手に行け」
ジーク「いやいや、場所がわからん」
レオン「船内を適当に探してれば見つかるだろう」
ジーク「手伝ってくれよ~。な?な?」
レオン「わかったわかった」
トイレを探しに船内へ向かう二人。
―船内―
ジーク「やっべー、見つかんねぇ~」
船内をウロウロしていると、なにやら話し声が聞こえてくる。
レオン「シッ!静かにしろ」
ジーク「ん?」
レオン「話し声が聞こえる」
ジーク「こっちだな」
どうやら、話し声は貨物室の方から聞こえてくるようで、二人は盗み聞きを始める。
船長「あの女海賊め、ナメた事しやがって」
船員「お頭!爆弾の準備ができやした!」
船長「よーし、気づかれないように船に載せるんだぞ」
船員「アイアイサー」
船長「グフフ、これで奴らもおしまいよ」
船員が出口の方へ大きな荷物を運び始める。
ジーク「やべっ!こっちくるぞ」
レオン「この部屋に隠れるぞ」
二人はとっさに近くの部屋に隠れる。
ジーク「ふぅ~、あぶなかった」
レオン「狭いな・・・」
ジーク「おぉー!ここトイレじゃーん。ラッキー」
レオン「するなら俺が出てからにしろよ」
ジーク「わかってるって。つうか、あいつら爆弾って言ってたよな?」
レオン「あぁ、言ってたな」
ジーク「やばいじゃーん。早くあの子に知らせてあげようぜ」
レオン「海賊を助けるのか?」
ジーク「そりゃ、海賊は悪い奴らだけどよ~。なにも殺すことないだろ?」
レオン「ふぅ・・・。俺が適当にやってみるから、お前はトイレを済ませておけよ」
ジーク「オッケーイ」
レオン「・・・。誰もいなそうだな」
レオンは外から物音がしない事を確認すると、トイレから飛び出し、武装女のもとへ走り出す。
―船上―
レオン「はぁはぁ・・・。(爆弾はどこだ?)」
リリィ「レオン、どうなさったの?」
レオン「実はな・・・、ごにょごにょ」
リリィ「それは大変ですわね」
レオン「荷物は既に運ばれてしまったか?」
リリィ「えぇ、既に彼女達の船に」
レオン「仕方ないな」
レオンが武装女の前に飛び出していくと、武装女が警戒して呼び止める。
武装女「おい、おまえ!止まりな!」
レオン「話を聞いてくれ」
武装女「いいから戻りな!」
レオン「さっき、船員達が運び入れた荷物の中に爆弾が入ってるんだ」
武装女「そんな嘘には騙されないよ」
レオン「俺が嘘をついてなんの得があるんだ?」
武装女「それは・・・」
レオン「それじゃあこうしよう。もしも爆弾が入ってなければ俺の命をくれてやる」
武装女「なっ!?」
船長「コラ!勝手になにを言っているんだお前は!」
レオン「お前は黙っていろ」
意識を集中させると、船長に向かって脱力を放つ。
船長「はぁ~・・・」
レオン「早く決断しないと爆発するぞ?」
武装女「船に乗りな」
ジーク「俺もいくぜー」
トイレを済ませたジークが駆け寄ってくる。
武装女「何だお前は?」
ジーク「そいつの親友」
レオン「人畜無害な男だ、気にするな」
ジーク「そういう事」
武装女「まぁいいさ、ついてきな。」
武装女に連れられて、人質と共に船に乗り込む二人。
武装女「マイコ!さっきの船員が持ってきた荷物を開けな」
マイコ「ほぇ~?後ろの二人だれ?」
武装女「気にするな」
マイコ「は~い」
マイコと呼ばれる女性が荷物を開け始める。
マイコ「あけたよ~」
武装女「爆弾なんて何処にあるんだい?」
レオン「荷物は一つなのか?」
マイコ「いんや~、後二つあるよ」
レオン「そちらも調べたい」
マイコ「あいよ~」
残りの箱を開けると、一番最後に積まれた箱の中から、大量の火薬と時限爆弾が見つかる。
武装女「ッチ、ナメたマネしてくれたね・・・」
レオン「これで信用してもらえたかな?」
武装女「あぁ、疑って悪かったね」
マイコ「姉さん~、これどうすんの?」
武装女「こんなでかいものを運ぶとなると厄介だね」
ジーク「ここは俺にまかせな」
軽々と片手で箱を持ち上げるジーク。
マイコ「うひゃ~、すごいっすね」
武装女「なんて馬鹿力なんだい」
ジーク「そいじゃ捨ててくる」
ジークは箱を持って船の甲板に上がると、海に向かって投げ捨てる。
ザッバーン!
ジーク「あの箱には爆弾が入ってるぞー」
その言葉を聞いた乗客達が慌てふためき、その隙にレオンがリリィとマリンを呼び寄せる。
乗客「キャーキャー」
レオン「リリィー!マリン!こっちの船に乗れ!」
マリン「はーい」
リリィ「マリン、転ばないように気をつけてね」
マリン「うん」
二人がレオンのもとに到着するやいなや、海に沈んでいた箱が大爆発を起こす。
ザッバーン!
マリン「あぶなかったね」
レオン「そうだな」
リリィ「波がこちらにきますわ!」
武装女「お前達!早く船の中に入りな!」
言われるままに船の中に入ると、武装女がハッチを閉める。
―潜水艇―
全員が中に入ると、爆発の衝撃で起きた波で、船が大きく揺れ始める。
リリィ「キャー」
レオン「抱きつくな」
ジーク「キャー」
武装女「くっつくんじゃないよ!」
激しい揺れは次第におさまっていく。
ジーク「ヒュー、危なかったぜ」
マリン「目がまわるぅ~」
リリィ「気分が悪くなりましたわ・・・」
レオン「みんな無事そうだな」
武装女「あんた達、礼を言うよ」
ジーク「じゃあ俺とデートしようぜ」
武装女「断る」
ジーク「ぬ~ん」
マイコ「あたしがデートしてあげよっか?」
ジーク「マジでー!?」
マイコ「ウソぴょ~ん」
ジーク「ぐぬぬ!」
レオン「ところで、人質が乗ったままだが」
武装女「この子はあたしの妹だよ」
人質女「ウフフ・・・」
レオン「なるほど、全部芝居か」
マイコ「そういう事っすね~」
ジーク「ほら~、やっぱり俺の言った通り悪い子じゃなかった」
レオン「疑って悪かったな」
人質女「ヒソヒソ・・・(姉さん、島に戻った方がいいんじゃない?)」
武装女「そうだね・・・。食料は十分手に入れたし、引き上げるか」
レオン「ついでに俺達も連れて行ってくれると助かる」
ジーク「完全に海賊の仲間って思われてそうだしな」
武装女「あんた達には世話になったからね、乗せていってやるよ」
マイコ「お話中の所悪いんすけど、あの船が大砲撃ってこようとしてるっす」
ジーク「なにー!?」
武装女「本性を現したね」
レオン「どういう事だ?」
武装女「話は後だよ。マイコ、潜水しな!」
マイコ「あいあいさー」
マイコが機械を操作すると、船が海に潜り始める。
マリン「みてみてー、海にもぐってるよー」
マイコ「ふふふ、これは海に潜れるスペシャルな船なんすよ」
ジーク「カッコイイな~」
武装女「このまま潜行して、島まで行くよ」
マイコ「あいあいさー」
砲撃を避ける為に海に潜ると、島を目指して潜行を始める。
しばらくして落ち着いてきたので、レオンが話の続きを尋ねる。
レオン「先ほどの話の続きを教えてくれないか?」
武装女「あの船に乗っていた船員達はね、元は海賊だ」
ジーク「ふぇ~」
レオン「あの客船は改造されたモノなのか」
武装女「逆さ。海賊船を改造して客船っぽくしてるだけで、中身は海賊船のまんまだよ」
ジーク「そういや、トイレ探してる時に色んな部屋見たけどよ、客船にしては狭いし汚かったな」
レオン「奴らはなんで客船の真似事をしているんだ?」
武装女「乗客から預かった荷物から金品をくすねてるのさ」
ジーク「海賊にしてはせこいな」
武装女「今時、海賊なんてやってても稼げないからね」
ジーク「なのに、お前らはやってんのか?」
武装女「あたしらは金の為にやってる訳じゃないからね」
ジーク「ふぇ~」
マイコ「みなさん~、そろそろ島に着くっすよ」
ジーク「やっと外の空気が吸えるぜー」
こうして、海賊達が根城にしている島へと上陸する事となった。
第四話 完