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心の在処  作者: Jemko
本編
3/10

クインシーンの姫

衛兵に追われる身となった二人は、リリィに助けを求めるべく街道を走っていた。

―街道―


ジーク「はぁはぁ・・・。ここまで来れば平気だろ」

レオン「そうも言ってられないようだ」


衛兵「むわぁああぁぁてぇぇえええい!!」


休憩する暇も無く、衛兵が追いかけてくる。


ジーク「ぬわああああ!!もうしつけーよ!!」

レオン「もうすぐクインシーンが見えてくるはずだ」


衛兵から全力で逃げる二人。


ジーク「ゼーハーゼーハー」

レオン「王子の警護ともあろうものがだらしないぞ」

ジーク「よ、鎧が重いんだよ!」

レオン「脱げよ」

ジーク「この鎧は騎士の魂なんだよ!」

レオン「そんな事知るか」

ジーク「おまえなー!薄情だなー!」

レオン「ジーク、見えてきたぞ」

ジーク「おっ?やっとか」


ようやくクインシーンの門前に到着すると、見張りの兵士に呼び止められる。


兵士「そこの二人、止まりなさい」

レオン「私はレオンハルト=シュタインだ。ここを通してもらえないか?」

兵士「これはレオン様!失礼致しました、どうぞお通りください」

レオン「すまないな。ついでに一つ頼みがある」

兵士「なんでしょうか?」

レオン「これからシュタイン城の兵士の格好をした奴らが来ると思うが」

レオン「奴らはただの盗賊だ、絶対に通してはならない」

兵士「ハッ!承知しました」


兵士にそう頼むと、二人は町に入っていく。



―クインシーン―



ジーク「はぁ~、やっと一息つける」

レオン「心の準備もあるし、城に行く前に少し休むか」

ジーク「へへへ、そうこなくっちゃな。あそこに飯屋があるぜ」

レオン「別に腹は減ってないが」

ジーク「いいからいいから」


ジークに連れられ、近くの店に入っていく。


店員「いらっしゃーせー」

ジーク「二人ね」

店員「あーい、二名様ごあんなーい」


テンションの高い店員に案内され、席に座る二人。


店員「注文が決まったら呼んでね」


ジーク「どれにしよっかな~」

レオン「俺は決まった」

ジーク「はえーなおい」

レオン「お前はテリヤキセットで良いだろ」

ジーク「嫌だ、絶対嫌だ」

レオン「わがままだな」


それから数分後。


レオン「そろそろ決めろ」

ジーク「う~ん」

レオン「もう店員呼ぶぞ」

ジーク「おいバカ!まだ決まってねぇよ」


テーブルに置いてあったベルを鳴らすと"リンリン"と音を出し、店員を呼び寄せた。


店員「決まった?」

レオン「ざるそば二人前」

店員「はーい、すぐもってくるね」


店員は厨房に注文を伝えに行く。


ジーク「二人前ってもしかして・・・」

レオン「お前が遅いのが悪い」

ジーク「ぐぬぬ」


3分も経たない内に料理が運ばれてくる。


店員「おまた~」

ジーク「はえーな!」

店員「ざるそば二人前です」

レオン「ご苦労」

店員「ごゆっくりどうぞ」


料理をテーブルに並べ終えると、店員はその場を去っていく。


二人「ずるるるるるるるるる!」

レオン「うまいな」

ジーク「うん、うまいな」


二人は黙々とそばを食べ進め、辺りにはそばをすする音だけが響き渡る。

そんな状態がしばらく続くと、唐突にジークが口を開く。


ジーク「ひひいにあうのあひはひふりははあ」

レオン「飲み込んでから喋れ」

ジーク「ゴクン」

ジーク「リリィに会うのは久しぶりだなぁ」

レオン「あまり会いたくはないがな」

ジーク「お前も罪な奴だよなー」

レオン「なにがだ?」

ジーク「リリィは曲り形にも姫だぜ?外見もかわいいっちゃかわいいし」

レオン「姫だとか外見だとか、そんなものに価値は無い」

ジーク「ならよ、何に価値があるんだ?」

レオン「心だ」

ジーク「ブーーーーッ!!」


レオンの率直なセリフに思わずソバを吹き出す。


レオン「汚いな」

ジーク「ハハハハハハ!!」

レオン「なにがおかしい?」

ジーク「よくもそんな恥ずかしいセリフが言えたもんだな」

レオン「思った事を言ったまでだ」

ジーク「それが恥ずかしいって言ってるんだよ」

レオン「そういうモノか・・・」

ジーク「まっ、気持ちはわかるけどな」


そんな話をしながら食事を終えると、ある事に気づく。


ジーク「ふぅ~、食った食った」

レオン「ところでジーク、金は持っているのか?」

ジーク「いんや~、いきなり城飛び出してきちゃったからな、サイフ持ってきてないぞ」

レオン「フハハハ!気が合うな俺もだ」

ジーク「ハハハハ、はぁ!?」

レオン「どうするかな」

ジーク「兵士から逃げ切ったのに、食い逃げして捕まるとかシャレにならんぞ」

レオン「ジーク・・・、ここはお前の鎧を担保にしてくれ」

ジーク「ダメだダメだダメだ!」

レオン「役に立たん奴だな」

ジーク「ぐぬぬ」

レオン「仕方ない、俺が交渉してくる」


レオンは店員に交渉しに向かう。


レオン「君、すこし話があるんだが」

店員「なに~?」

レオン「実はな・・・、ごにょごにょ」

店員「あぁ~、そういうことね。いいよ、立て替えといてあげる」

レオン「すまないな」


無事に交渉を成立させて、ジークのもとへ戻る。


ジーク「よぉ、どうだった?」

レオン「問題ない」

ジーク「さすがだな。なんて言ったんだ?」

レオン「ジークの鎧を担保にするから金を立て替えてくれ、ってな」

ジーク「・・・」

レオン「なにやってる、いくぞ」

ジーク「ばかやろー!!」

レオン「元はと言えば、お前が店に誘ったのが原因だぞ?」

ジーク「それとこれとは話が別だろ~」

レオン「お前も騎士なら潔く諦めろ」

ジーク「ぐぬぬ」


ジークは泣く泣く鎧を脱いで店員に預けると、二人は店の外に出る。


ジーク「はぁ・・・」

レオン「落ち込んでる暇はないぞ、早く金を作って取り戻さないとな」

ジーク「そうだな・・・、そうだよな!」


一瞬で立ち直ったジークと共にクインシーン城に向かうと、城の前にいた兵士が二人を呼び止める。


兵士「そこの二人、止まりなさい」

レオン「私はレオンハルト=シュタインだ。ロバート王にお会いしたい」

兵士「これはレオン様!失礼致しました」

兵士「しかし、いくらレオン様でも、予定の無いモノをいきなり会わせる訳には・・・」

レオン「確かにその通りだな。それならリリィを呼んで貰えないか?」

兵士「それくらいなら構いませんが」

レオン「頼む」

兵士「では、少々お待ちください」


兵士は城の中へリリィを呼びに行き、しばらくすると派手なドレスを着た少女を連れて戻ってくる。


リリィ「レオーン!」


金髪に青瞳を持ち。身長は155cm。体は細身で、髪は腰の辺りまで伸びている。

服装はというと、純白のドレスを身に纏い、手には何故かムチが握り締められていた。


ジーク「うひゃー、でたー」

リリィ「もう!レオンったら全然会いに来てくれないんですもの」

レオン「それはすまなかった」

ジーク「よぉ、久しぶり」

リリィ「なんだ、ジークもいらしたの」

ジーク「ひでぇー」

リリィ「それでぇ~、わたくしに会いに来てくれたの?」

レオン「いや、ロバート王に」

リリィ「お父様に?まぁいいですわ。参りましょう」


ジーク「ヒソヒソ・・・(ちょっとは女らしくなったんじゃないか?)」

レオン「ヒソヒソ・・・(それはどうかな)」

リリィ「二人共なにやってますの!早く行きましょう」

兵士「リリィ様!勝手な事をされては困ります」

リリィ「おだまり!」


容赦なく兵士をムチで打つ。


兵士「ヒィィィ!!」

リリィ「わたくしに意見するなど、許されませんことよ!」

兵士「ハハァ!申し訳ありません」


兵士は土下座して謝る。


リリィ「さぁ参りましょう♪」

レオン「あぁ、そうだな」

ジーク「(全然変わってなかった・・・)」


こうしてリリィの力添えにより、国王ロバートに謁見できる事となった。



―クインシーン城 王の間―



リリィ「お父様~、レオンがいらっしゃったわよ♪」

ジーク「俺もいるぞー」

ロバート「なぁにぃ~?」

レオン「お久しぶりでございます」

ロバート「おおー!二人ともよく来たな!」

レオン「突然の訪問、申し訳ありません」

ロバート「構わん構わん」

レオン「ロバート王にご相談したい事がありまして」

ロバート「うむ、申してみよ」

レオン「実はかくかくしかじかで」


レオンはバーレンシュタインで起きた事の一部始終を話した。


ロバート「ふーむ、話はわかった。マモノが世に解き放たれたとなれば一大事だな」

レオン「そこで、私が王家のモノとして、マモノを封じる旅に出ようと思うのです」

ロバート「良く言った!それでこそ俺の見込んだ男だ!」

レオン「旅をするにあたって、ロバート王にお願いがございます」

ロバート「申してみよ」

レオン「正門には我が城の兵士が待ち伏せていると思われるので、裏門を通らせて頂きたい」

ロバート「そんな事なら容易いぞ」

レオン「それと、町で異変が起きていないか調べて頂きたい」


ロバート「衛兵!」

衛兵「ハッ!」

ロバート「裏門を開けておいてやれ。それから、町に異変が起きていないか調べてくるように」

衛兵「了解しました!」


レオン「ありがとうございます!」

ロバート「うむうむ」

レオン「それでは我々はこれで・・・」

ロバート「まてまて、マモノ退治をするのなら教えておく事がある」

レオン「なんでしょうか?」

ロバート「心の鍵と心の剣についてだ」

レオン「なにかご存知なのですか?」

ロバート「うむ、心の鍵は元々は我が城の宝だからな」

レオン「そうでしたか」

ロバート「話というのは他でもない、使い方についてだ」


レオンは真剣な表情で話しに耳を傾ける。


ロバート「まずは鍵についてだが。心の鍵とは、人の精神世界に入る為の道具である」

レオン「精神世界?」

ロバート「うむ、人間誰もが心の中に自分の世界を持っている」

ジーク「おいおい、人の心に入れる道具なんてヤバいんじゃねえか?」

ロバート「もっともな意見だな。しかし、いきなり鍵を使っても入れる訳ではない」

ジーク「どういう事だ?」

ロバート「心の扉が出現していなければ、鍵は使用できない」

レオン「心の扉とは?」

ロバート「心の扉とは精神世界と現実世界を繋ぐ門。扉を出現させる方法は二つある」

ジーク「いよっ、待ってました」

ロバート「その1:相手を動揺させる その2:相手の信頼を得て心を開かせる」

レオン「ふむ・・・。おい、ジーク」

ジーク「ん?」

レオン「お前、小さい頃にリリィのパンツ盗んだよな」

ジーク「なななな、なにいってんだよ!!」

リリィ「ジーク!あなたって人は!」

ジーク「いやいやいやいや、盗んでない!盗んでない!」


ジークがわかりやすい動揺をしたその時、胸の辺りに白い光が表れた。


レオン「(これが心の扉か・・・)」

レオン「ジーク、ご苦労だった。ロバート王の言うとおり扉は表れた」

ジーク「てめぇー!俺を実験に使いやがったなー!」

レオン「フハハハ、すまんすまん」

リリィ「でも、わたくしには見えませんでしたわよ?」

ロバート「うむ、鍵の所有者にしか見えないのだ」

レオン「面白いな」

ジーク「俺をおもちゃにするなよ・・・」


レオン「(次は後者の方法を試してみるか)」

レオン「リリィ、俺に心を開いてくれないか?」

リリィ「喜んで♪」

レオン「(白く光っているな・・・)」

レオン「ありがとう。扉は確認できた」

ロバート「心の鍵について私が知っている事はこれくらいだが、まだ秘密があるかもしれん」

レオン「はい、旅の途中で色々調べてみます」


ロバート「次は心の剣についてだが、心の剣とはマモノを封印するための道具」

ロバート「マモノを再び封じるには、鍵を使って精神世界に入り、心の剣でマモノにトドメを刺すのだ」

レオン「なるほど」

ロボート「そして、心の剣を扱えるのは王家の血を引く心正しきモノだけである」

ジーク「やっぱ王家の人間だけなんだな」

ロバート「うむ、剣についてはこれくらいしかわからんが、まだ隠された能力はあるだろう」

レオン「心しておきます」

ロバート「以上で私の話は終わりだ。引き止めて悪かったな」

レオン「いえ、ありがとうございます」


リリィ「さてさて、話が終わった所で行きましょうか」

ジーク「ん?なにいってんだ?」

リリィ「わたくしもお供しますわよ」

レオン「・・・」

ジーク「おいまて、なに勝手に決めてんだよ」

リリィ「あら?なにか文句がおありかしら?」

ジーク「いやいや、ロバート王が許さないだろ」

ロバート「構わん構わん、行ってきなさい」

リリィ「これで決まりね」

ジーク「こんな危険な旅に姫を行かせていいのかよー」

ロバート「一国の王女たるもの、旅の一つや二つしなくてどうするか」

リリィ「お父様はわかってらっしゃいますわね」

ジーク「レオンもなんか言ってやれよ」

レオン「・・・」

ジーク「はぁ・・・、ダメだこりゃ」


マモノ退治の旅に無理矢理ついて来る事になったリリィ。

新たな仲間を加えた一行は、城の外に出る。



―クインシーン―



城の外に出てみると、調査を終えた衛兵が待っていた。


衛兵「ご報告致します。町人に聞き込みをした所、特に異変は確認できませんでした」

レオン「そうか、ご苦労だった」

衛兵「ハッ!それでは私はこれで」


リリィ「これでこの町に用はなくなりましたわね」

レオン「いや、まだ一つやり残した事があってな」

リリィ「なんですの?」

レオン「そば屋に金を返さないといけないんだ」

リリィ「お金?」

レオン「実はな、そばの代金が払えなかった為に、ジークの鎧を担保にして金を立て替えてもらってるんだ」

リリィ「なーるほど、だからジークが上半身裸なのね」

ジーク「てへっ☆」

レオン「だから、金を貸して貰えないか?」

リリィ「レオンの頼みなら喜んで♪」


リリィを連れてそば屋に向かい、店員に金を渡して無事に鎧を取り戻した。


ジーク「やっほー、俺の鎧~♪」

リリィ「ジーク、わたくしを一生崇め奉りなさい」

ジーク「やだねー、鎧が戻ればお前のムチも怖くないぜ」

リリィ「ムキー!」

レオン「リリィ、怒るとかわいい顔が台無しだぞ」

リリィ「まぁ!レオンったら・・・///」

ジーク「アホやってないで、次の町に行こうぜ」

レオン「裏門の先は確か海に繋がっていたな」

リリィ「ええ、サンシャインという町があって、そこには観光名所のサンビーチがありますわ」

ジーク「(水着ギャル・・・。デュフフフ)」

リリィ「ジーク、はしたないわよ」

ジーク「な、なんの事だよ」

リリィ「いやらしい事でも考えていたんでしょう?」

ジーク「フフフ、残念でした」

レオン「扉が表れているぞ」

ジーク「ぐぬぬ!」


こうして、マモノ退治をする事になった一行は、常夏の町サンシャインへ向かうのであった。


第二話 完

第二話は大まかな設定うんぬんに関する話です。

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