マモノ
物語りはバーレンシュタインという小さな町から始まる。
この町にはシュタイン城という城があり、若き王子がいた。
彼は外交や市民の声を聞いたりと、忙しくも充実した時間を過ごす日々。
そんな中、今朝も早くから国王ディランに呼び出しを受けて王の間に来ていた。
―シュタイン城 王の間―
レオン「父上、ただいま参りました」
彼の名は【レオンハルト】この物語の主人公であり王子である。
年齢は18歳、身長181cm。金髪に青い瞳を持ち。美形で細身。
服装はマントに貴族っぽい服という、いかにも王子といった感じだ。
国王「レオンよ、お前を呼んだのは他でもない、封印の洞窟へ向かってもらう為だ」
レオン「それは構いません・・・が、理由を教えて頂けますか?」
国王「うむ、よかろう。実はな、封印の洞窟には【マモノ】が封印されておる」
レオン「マモノとは?」
国王「マモノとは、人々の心に巣食う悪しき心。シュタイン家のモノは、代々マモノの封印を守る役目を担っている」
レオン「そんな役目があったのですか」
国王「うむ。お前に封印の洞窟へ向かってもらうのは、マモノの事で気になる事があるからだ」
レオン「気になる事ですか?」
国王「うむ。マモノが封印されてから今年で100年。そろそろ封印が解ける頃なのだ」
レオン「なんと・・・。それではこんな悠長に話をしてる場合ではありません。早速向かいます」
国王「そう焦らなくてもよい」
レオン「しかし!」
国王「話は最後まで聞きなさい」
レオン「申し訳ありません・・・」
国王「封印の洞窟に入るには、この【心の鍵】が必要だ」
そう言ってレオンに鍵を手渡す。
レオン「確かに、お預かりしました」
国王「それとな、洞窟には心の剣というモノが安置されておるのだが。もしも、剣が光を放っていたのなら抜いてくるのだ」
レオン「わかりました」
国王「うむ。それでは任せたぞ」
心の鍵を受け取ったレオンは王の間を後にして、封印の洞窟へ向かう準備をする。
―シュタイン城 レオンの部屋―
レオン「一応、これも持っていった方がいいかな」
荷物を整理していると、"コンコン"と誰かがドアがノックする音が響く。
レオン「開いてるよ」
"ガチャ" "ギィー"と音を立てながらドアが開いていくと、一人の青年が入ってくる。
青年は銀髪に緑の瞳。身長は194cm。体格はガッシリとしてて、背中に槍を背負い、左手に大きな盾を持ち、銀色の鎧に身を包んだ騎士風の格好をしていた。
騎士風の青年「よぉ、レオン。封印の洞窟に行くんだってな?」
レオン「ジークか。もう聞付けたのか?」
どうやら騎士風の青年の名はジークと言うらしい。
ジーク「俺の情報網をナメるなよ?」
レオン「お前は警備より、諜報活動が向いてるんじゃないか?」
ジーク「冗談言ってないで、質問に答えろよ」
レオン「これから行く所だ」
ジーク「やっぱりな。お前が俺に何も言わない時は、決まって面白そうな事をする時だ」
レオン「遊びに行くわけじゃないんだぞ?」
ジーク「それくらいわかってるさ。俺は王子の警護で仕方なくついて行くだけだ」
レオン「はぁ・・・、わかったよ。お前は一度言い出したら聞かないからな」
ジーク「ハハハ、さすがは親友だな」
レオン「荷物はこんなもんでいいか」
ジーク「オーライ、行こうぜ」
荷物の整理が済んだレオンは、ジークと共に封印の洞窟を目指す。
―封印の洞窟―
洞窟に辿り着くと扉の前で兵士が見張りをしていた。
兵士「これはレオン様、如何なされましたか?」
レオン「父上の命により、封印の状態を調べにきた」
兵士「了解しました。それはそうと、なぜジークが一緒に?」
レオン「ジークには、俺の警護で来てもらっている」
ジーク「フフフ、そういう事なのだよ」
兵士「・・・。まぁいいでしょう、お通り下さい」
洞窟の扉の前に立つと、鍵穴に心の鍵を差し込む。
すると、しばらく使われていなかったせいか、重く鈍い音を立てて扉が開いていく。
ジーク「ヒュー」
レオン「入るぞ」
洞窟の中へ入っていく二人。
松明で辺りを照らしながら慎重に通路を進むと、開けた場所に辿り着く。
―封印の洞窟 封印の間―
レオン「ここが封印の間か」
ジーク「なんもねぇな」
レオン「そりゃ、宝物庫じゃないからな」
ジーク「おい、剣が刺さってるぜ」
封印の間には階段があり、その先には台座があって、そこには一本の剣が刺さっていた。
レオン「父上が言っていた心の剣とはあれの事か」
ジーク「近づいてみようぜ」
2人は階段を上り台座へと近づいていく。
ジーク「それで、何しにきたんだ?」
レオン「剣が光を放っていれば抜け、との事だ」
階段を上り終えた二人の目に映ったのは、目映ゆい光を放っている剣の姿だった。
ジーク「ギンギンに光ってるぞ」
レオン「これは・・・、抜くしかないな」
ジーク「なぁなぁ~」
不適な笑みを浮かべながらレオンに話しかけるジーク。
レオン「ダメだぞ」
ジーク「まだなんも言ってないだろ!」
レオン「お前が抜くって言うんだろ?」
ジーク「ッチ、バレたか」
レオン「どうしても、って言うなら抜かせてやらん事もないが」
ジーク「マジかよー!?俺にやらせてくれよ~」
レオン「フハハハ、いいぞ」
ジーク「やったぜ」
ジークはニヤニヤしながら台座の前に立つ。
ジーク「いくぞ!」
剣の柄の部分を両手で握ると、全力で引き上げる。
ジーク「ぬをおおおおおおおお!!」
全力で引き抜こうとするが、先にジークの腰が抜けてしまう。
ジーク「はぁ・・・はぁ・・・。な、なんでだ・・・」
レオン「差詰め、王家のモノにしか抜けないとかそんな事だろう」
ジーク「先に言えよ・・・」
レオン「言ったら面白くないだろ?」
ジーク「おまえなー!」
レオン「フハハハ、そう怒るな」
ジーク「あぁ~、疲れて怒る気にもなれん・・・」
レオン「今度は俺がやろう」
そう言うと、今度はレオンが台座の前に立つ。
レオン「何が起こるのか・・・」
剣の柄を握り、引き抜いた途端、剣の中から禍々しい気を放つ黒いモノが溢れ出す。
???「パオオオォン!!ヨクモフウインシテクレタナ!!ユルサンゾオオォォウ!!」
???「ツラカッタ・・・クルシカッタ・・・」
???「マタハタラクノカ・・・メンドクセーナ」
???「ホントチョームカツク マジアリエナインデスケド」
???「セカイヲ、キョウフノドンゾコニ、オトシテヤリマショウ」
???「コノセカイオレノモノ、ゼンブオレノモノ」
ジーク「お、おい!なんだよこれ!?」
レオン「マモノが復活したのか!?」
二人は剣の中から次々と溢れ出すマモノをただ見ている事しかできなかった。
???「スベテハマボロシ・・・、イツワリノヘイワ・・・」
???「ハラヘッタナー!ハラヘッタナー!!」
???「グスッグスッ・・・、ナンデアタシガコンナメニ・・・」
???「ウフフフフフ、オトコヲアサリニイカナイト」
???「オギャー!オギャー!」
???「オロカナニンゲンヨ、フウインヲトイタコトヲホメテヤルゾ」
解き放たれたマモノ達は洞窟の外に向かって消えていく。
レオン「この事を父上に報告しなければ」
ジーク「よっしゃ帰ろうぜ」
レオン「この剣は持っていくか」
マモノが復活した事実を伝える為、シュタイン城に戻るのであった。
―シュタイン城 王の間―
レオン「父上、ただいま戻りました」
国王「うむ。どうであったか?」
レオン「剣が光を放っていたので引き抜いたところ、マモノと思われるモノが復活してしまいました」
国王「そうか・・・。わかった下がっていいぞ」
レオン「それだけですか?」
国王「何が言いたい?」
レオン「復活したマモノはどうなさるのですか!?」
国王「我らの手に負えるものではない」
レオン「それでは、放っておけと?」
国王「うむ。それしかあるまい」
レオン「わかりました・・・。失礼します」
レオンは部屋を出て行き自分の部屋へと向かう。
それからしばらくすると、国王が大声で衛兵を呼び始める。
国王「衛兵!衛兵はおらぬか!」
兵士「お呼びでしょうか?」
国王「レオンを捕らえよ」
兵士「は?」
国王「聞こえなかったか?レオンを捕らえよ」
兵士「いくら国王様の命令とはいえ、理由も無しに王子を捕らえる訳には・・・」
国王「理由ならある。奴は王家の宝である心の鍵を勝手に持ち出した」
国王「それだけならまだしも、あろう事かマモノの封印を解いてしまったのだ」
兵士「封印を解いてしまったのですか!?」
国王「うむ。いくら王子とはいえ、許されるものではない」
兵士「わかりました。すぐに兵士を集めます」
兵士は部屋を飛び出し、仲間の兵士を集めに行く。
―シュタイン城 レオンの部屋―
その頃、レオンはマモノについて部屋で考えていた。
レオン「父上は何を考えておられるのだ・・・」
レオン「王家のモノの務めを放棄なされるおつもりなのか・・・」
そんな事を考え込んでいると、"ギィー" "ガチャン"と勢いよくドアが開かれた。
ジーク「おい!こんな所でボーッっとしてる場合じゃないぜ」
レオン「どうした?」
ジーク「どうしたじゃねえよ。衛兵がお前を捕まえる為に集結してるぞ」
レオン「衛兵が?どういう事だ?」
ジーク「そんな事知るか。とにかくここにいたら捕まるぞ」
レオン「父上に理由を聞いてくる」
ジーク「お、おい!まてよ!」
国王から話を聞くため部屋を飛び出していくレオン。
ジークはその後を慌てて追いかける。
―シュタイン城 王の間―
レオン「父上!」
ジーク「レオン待てって!
国王「来たな反逆者共め」
ジーク「共、って俺もかよ」
レオン「父上、何をおっしゃっているのですか?」
国王「マモノの封印を解いた罪は重い、死をもって償うのだ」
国王と話していると、準備を終えた衛兵達がやってくる。
ジーク「逃げ道を塞がれちまったな」
レオン「父上!どういう事なのですか!」
国王「貴様に話す事などない」
レオン「なっ!」
衛兵「王子・・・。信じたくはありませんが、これも命令です。大人しく捕まってください」
レオン「・・・」
ジーク「レオン、行けるか?」
レオン「あぁ、問題ない」
国王「お前たち、何をする気だ?」
ジーク「こうするのさ!」
ジークは盾を構えて窓に向かって走ると"ガシャーン"という音を立てて外に飛び出す。
その後に続くようにしてレオンも飛び込む。
国王「おのれ・・・。衛兵!早く追いかけるのだ!」
衛兵「ハッ!」
―シュタイン城 中庭―
ジーク「いててて」
レオン「ジーク、大丈夫か?」
ジーク「ノープロブレムだ」
レオン「お前まで巻き込んでしまってすまないな」
ジーク「何言ってんだよ、困った時こそ親友を頼れよ」
レオン「フハハハ!そうだな」
衛兵「あっちにいたぞー!」
ジーク「おっと見つかったか。早いとこ逃げようぜ」
レオン「あぁ、そうしよう」
出口を目指して全力で逃げる二人。
ジーク「んでよ、どこに逃げるよ?」
レオン「あまり気は乗らないが、リリィに助けを求める」
ジーク「ハハハ!リリィか、そりゃいい」
レオン「はぁ・・・。俺にとっては笑い事じゃない・・・」
なにか訳がありそうなレオンであったが、こんな状況では贅沢を言っていられず、
嫌々ながらもリリィに助けを求めるのであった。
第一話 完
虹の彼方での経験を踏まえて書いていこうと思います。キャラの喋りが多いのは仕様ですのでご了承下さい。※1/13 少し文章をイジったので見易くなった・・・、と思います※