表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

上山家・坂本家の場合 1

『…お客様にご案内申し上げます。只今より、一階、ガーデンチャペルにおきまして

    上山家、坂本家、ご両家様の挙式を執り行ないます。ご参列のお客様は

    一階、ロビーまでお越しくださいませ。繰り返しご案内申し上げます…』


 憂いを帯びた、女性のアナウンスがホテル中に響き渡った。

アナウンスに従うように、シルケット加工されたカクテルドレスを着飾った若い女性たちが

にわかに移動を始める。その後に続いて一張羅で決める若者たち。

 さて、アナウンスが終わったらすぐに親族・新郎新婦を案内しなければならない。

その前に、インカムで式場前にいるスタッフに連絡を入れなければ。

 ホテルという手前無茶なダッシュはできないが、競歩並みのスピードで

下るエスカレーターをさらに駆け下った。

「ただいま上山・坂本のお客様下ろしました…開場準備お願いします!」


 最近はホテルウェディングが減ってきたとはいえ、やはり土日のピークは衰えない。

ここは県内でも有数のホテルに名を連ねる…とまでは行かないが、二流には入るだろうという

「アクア・コロナキャッスル」。

 五月・六月ともなればブライダル真っ只中なのだ。

 私はここで宴会サービススタッフのアルバイトとして働いている。

 宴会といっても、どこぞの会社のオヤジ達の立食パーティーやら、還暦祝いの和会席やら、

結婚披露宴まで、かなり幅広い作業をこなす。

 サービススタッフの中でも私は、滑舌の良さを推薦されて「式案」という仕事も傍ら

アルバイトをしているのだ。

「式案」と言うのが、今私が慌しくこなしている、この仕事のこと。


「お待たせいたしました。それではチャペルへご案内いたします」

 はっきり言ってこの仕事は、挙式が始まるまではほぼ走りっぱなし。

今日だって一階のチャペルから五階にある控え室までを何度往復したことだろう…。

けれど、この瞬間のためならば私はそんな苦労は知ったことじゃない。

そうこの、バージンロードへの扉を開ける瞬間のためなら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ