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七番目の黙示録  作者: 凛月
第一章
6/10

呪文

ST.922 「『  』」


 転生してから二年が経ち、ハインとの戯れを続けた俺の魔力回路は全身に行き渡り、今やどこから落ちても傷ひとつ付かなくなった。膂力もハインを一瞬だけ受け止められるくらいまで上がった。二歳児が大型犬の突進を止められると考えると、本当にここは異世界なんだと実感する。

 一番変わったのは魔弾が解放されたことで、さらに緊張感が高まったところだ。最小出力だったとしても、今までに感じたことのない痛みが全身に渡る。ほんの一瞬気を緩めたら、視界外にいようとも師匠の魔眼の賜物だろう、追尾して貫いてくる。一度内臓が飛び出たことがあったけど、師匠が治癒魔術で気づかぬ間に治していた。即死でない限り、安心しろ言われたときは心底恐怖した。


「魔術は無から有を生む。水は宙を浮き、火は酸素を必要とせず、土は形作り躍る。そして魔術は有を無にする――この世界の法則は不規則で、無秩序だ。それ、気を抜くな」

「いっだあい」


 二年の内に俺の脳には、師匠の魔術が焼き付いている。魔術の三原理の一つ「魔素の変換」または「想像」――それには明確であることが必要で、向こうの世界で出来ないことを出来ると錯覚させるか、思い込みでもしないと、師匠の使う原初の魔術「空想魔術」が使えない。空想魔術は実在する魔術体系で最も自由で、応用のきく魔術だ。それ以外だと、絶対にタイムラグが発生してしまうから、一瞬を争う界異戦では足手まといになる。意地でも、師匠の魔術をまじかに見られる、残りの十年間で使いこなせるようにならないといけない。


「魔術は「基礎」「初級」「中級」「上級」「特級」「極致」と大まかに区分されている。まあ、貴様が扱うことになる空想魔術はそれに該当しないがな」

「空想魔術は自由が売りですもんね」

「区分化されるなど以ての外、使った魔術に名づけされる身にもなれ、詩人に大層な名を与えられた暁には、使うたびに恥ずかしい思いをせねばならん」


 師匠にも恥ずかしいという感情があるんですね。なんて言ったらどうなる事やら、喉元で押し込んだ。


「師匠って、そういうのが嫌になってこの場所に引きこもってるんですか?」

「そうではない。が、禁忌指定された魔術に手を染めた身の上だ、出ように出られん。まあ、出るつもりもないがな」

「そういえば、不老不死でしたね」


 四大禁忌。不老不死・死者蘇生・時間遡行・人体生成。師匠は過去にその全てをやらかしている。「あやつ」に心底絞られたそうだ。クファ様の時間遡行はこの世界外だからセーフ――のはず。


「でも、時間遡行ってバレるもんなんですか?」

「そういうのに聡い権能(スキル)持ちや魔眼持ちが稀にいるんだ。付きまといが出来た時は、本当に気色が悪かった」

「ストーカーですか……まあ、師匠は見た目も良いですし、それも相まってでしょう。微笑みかけられただけで勘違いする輩もいますし」


 褒めたが無表情である。何なら気色悪いと言ったのも無表情である。


「その表情は付きまといがあったからですか?俺は師匠が笑った顔とか見たいんですけど」

「これは”縛り”によるものであって、好きでしているんじゃない」

「縛りって魔術強化のための代償行為ですよね……表情を失くすなんて縛りで強化できる魔術なんて――」


 そう思ったが束の間、あることに気づいた。


「……その無表情いつから続けているんですか」


 師匠は無言でただ、俺のことを見降ろしている。言えない。それがどういうことか察しの悪い俺でもわかる、師匠のそれは神代から続くもの――。


「すみません。踏み込み過ぎました」

「かまわん。眉間を魔弾で撃ち抜くのを我慢してやれるほどには、いい察しだった」


 これで確定だ。師匠の感情はもう俺の脳内で補完するしかない。今のはおそらく愉快痛快とニヒルに笑っていたはずだ。……青筋立ってたらどうしよう。


「戯れも終いだ。授業に戻るぞ」

「はい」

「貴様の脳では空想魔術はまだ早い。まずは土台作りだ。魔術が存在することを再認識するために、簡単な魔術を自分で扱うとことから始める。私の知る魔術体系で最も簡単な魔術は「呪文」だ。触媒と発動に必要な魔力さえあれば、誰でも扱える」


 「呪文」は唱えるだけで扱える魔術だ。魔力消費量も出力も決まっているから、魔術を一から始める見習いはこれを足掛かりに成長していく。水の玉を出したければ、それに合う呪文を唱えればいい。しかし、それには魔術が「呪文」という”概念”に付与されている必要がある。何でもかんでも声に出せば魔術になるという訳じゃない。

 と言っても、呪文の総数は、ざっと数千を超えている。水を出すだけでも、「水の玉」「水球」「流水」「飲み水」――……数え始めたらキリがない。呪文は非常に簡単ではあるけど、その実、記憶力が必要な、結構面倒な魔術だ。


「最初は何が良いんでしょう」

「普通は基礎だろうが、それは魔力を自覚したての見習いが初めて学ぶときに使うものだ。貴様は最初から一番上の上級でいいだろう。魔力欠乏で死ぬことも無い」


 免許取り立てほやほやでレーシングカーに乗せる気満々だ。いや、レーシングカーで教習させる気だこの人。

 呪文はクファ様に貰った魔術書で学ぶ。想像するだけで開いてくれるなんて、ホントに便利な魔術書だ。音声認識も必要ないなんて、現実より進んでいるじゃないか。

 開いたところで、師匠が魔術書を覗き込んだ。


「……ああ、これはダメだな。こっちもダメ。あと、これもダメ。これもダメだ、あと――」


 師匠がダメといった部分が続々と消えていく。


「もしかして、師匠の魔術からついた呪文消してます?」

「死にたいならそう言え」

「すみません。検閲お願いします」


 そうやって魔術書を師匠に明け渡した結果、数十分の時間が経過することとなった。師匠って、昔かなりやんちゃしてたんじゃなかろうか。


「師匠の魔術が呪文になってるってことは、呪文って神代から存在するものなんですか?」

「いいや、ここ数千年で生れた技術だ。もう滅ぼし――……失われたがな。私の魔術が伝承として伝わった結果、呪文と成ったのだろう。直接視ずとも、おとぎ話や詩などで口伝された魔術でさえ、呪文になりうる。そうなってしまうほど神代の情報は異質なのだ。ほかにどんな危険性を孕んでいるのかは私でもわからん。だから、規制されている」


 異質な情報を悪意を以って振るう奴が現れたら、世界に異常をきたすところじゃなくなる。界異の封印にも影響があるかもしれない。――……一瞬滅ぼしたって言わなかった?


「でも、天使の血族には開示されてるんですよね?もし、悪意を孕んだ人間が生まれたら……これも何かの縛りですか」

「あえて”開示する”ことで情報の効力を弱めている。それに、天使から悪意は産まれない。天使の、神の血とはそういうものだ」


 俺の世界の神話じゃ神様なんてやりたい放題だったけど、こっちはそうではないらしい。世界の理が違うんだからそれもそうか。


「でも、悪が生まれないってのは僥倖です。仲間にするときの懸念が一つ減りました。では、呪文を――ってほとんど消えてるじゃないですか…」

「残っているのだからいいではないか」


 存在することを知覚することが出来れば何でもいい――とはいっても、色々使ってみたかった……。

 「的は用意してやる」と師匠が言った時には俺の三十メートル前方に青年が立っていた。


「――人ですね?」

土人形(ゴーレム)だ」

「いや、完全に人じゃないですか」

土人形(ゴーレム)だ」

「だったら服着せる必要ないですよね!?」


 そこにいるのはどう考えても人だ。普通に準備体操始めたし、こっち向いて微笑んででもいる。師匠よりも人間らしい。


「これって人体生成では――?」

「ここは私有地だ。問題ない」


 免許無くても運転していいみたいに言うけど、ダメだろ普通に……息をするように禁忌を破るな。


「ここから出た後、対人戦があるやもしれん。あれは限りなく人に近い”土人形(ゴーレム)”だ。構造も人体と同じで、血も出る――今のうちに慣れておけ」

「……はい」


 きっと師匠は譲らない。もう、あれはゴーレムだということにしよう。


「では行きます。『水の槍(セイ・ディル)』」


 水の槍を生成して射出するシンプルかつ威力のある、上級の呪文だ。しかし、見当はずれの方に飛んで行った。


「はずれた――…呪文って命中補正は無いんですね」

「縛りの問題だ。魔術の付与は簡単なものじゃない。強大であればある程な。呪文の縛りとしてよく用いられるのは魔力消費の増加だ。一の消費で扱う魔術を千の消費で補うこともある。だが、それは呪文として使用する際のもの――付与にはそれ以上の魔力が必要だ。そういう縛りを重ねて、やっと呪文として扱えるようになる。上級以上の呪文が無いのがいい例だ」


 水の槍(セイ・ディル)に命中補正が無いのはそういう理由か。にしても師匠が恥ずかしがるほどの魔術って――あ、呪文が他人に誇張して与えられた二つ名――って思ってたら消したくもなるか。


「空想魔術に上も下もないのに、魔術が区別化されてるのって、やっぱり呪文のせいなんですか?」

「いいや。空想魔術以外は、ほとんど区別化されている。危険度もあるが、わかりやすという利点が一番大きいだろう。魔術は兵器であると同時に、学問でもある。師事する側もされる側も区別されている方が都合がいい」

「――基礎、初級は無害。中級は対一、上級は対多数、特級は対群――まあ確かに、戦場で術の名だけ言われても魔術師以外はピンときませんもんね。『水の槍(セイ・ディル)』」


 そういう風に考えると、区別化されていない空想魔術を使うには、その魔術の規模がどの程度なのかを共有できないとダメなのでは?誤爆する可能性も無きにしも非ずだし……。だとすると魔術の等級を全部覚えておかないといけない……。学問と言われるわけだ。


「そういえば、極致ってどの規模でしたっけ」

「地形が変わる。地図が変わる。国が亡ぶ」

「どこまでやったんですか……」


 師匠はだんまりを決め込んだ。全部やったなこの人。クファ様が教わってたのってその頃の師匠なんじゃ……くわばらくわばら――…。


「『水の槍(セイ・ディル)』」


 会話をしながらも、撃ち続けて入るものの……やはり狙いが定まらない。試行錯誤していると、急に師匠がゴーレムに指を指し、水の槍を撃ち込んだ。


「魔術は想像の世界だが、何もそれは脳内だけで完結させる必要はない。想像できないものは何かで補完すればいい。術具が杖の魔術師はそれを使って補完する。魔術書が術具の貴様は、指を使え」


 いつの間にか復元されていたゴーレムは置いておいて――なるほど、目算じゃなくて指で狙いを定めたほうが、ずっと想像しやすい。師匠がずっとノールック、ノーモーションで魔術使ってたから、頭から消えてた。じゃあ……師匠みたいに人差し指と中指でやってみるか。


「『水の槍(セイ・ディル)』」


 今度は、上手くゴーレムの方へ飛んで行った。が、軽々と避けられた。当てるには速度が足りない。ある程度の速度、「射出する」っていう明確な想像があるから出てくれるんだけど……何かで補完か――ああ、そういえば師匠の魔弾!一番最初に見たやつの速度を想像すれば――。


「『水の槍(セイ・ディル)』」


 少しは速度が増したと思うけど……うーん……どうしたものか。


「何をしている」

「速度を上げようとして……今のは、昔に師匠が見せてくれた魔弾を参考にしたんですけど……」

「それは――……ん?貴様、魔弾を魔術と勘違いしていないか?」

「え、魔術じゃないんですか!?」

「最初に”技”だと言っただろう。そもそも、何故魔術だと?三原理を忘れたか」

「忘れてないです!魔力の量・魔力の制御・魔素の変換……あ、魔弾は魔素を収束させるだけだから魔術じゃない……」


 この世界に来てまともに見た、魔術のようなものだったから、てっきり魔弾もそうなのかと思ってた。


「でも、魔弾は魔術でないにしろ、俺はその速度を、想像の補完にしようとしたんですけど」

「ふむ……別に知らなくともいい知識だったが……この際だ説明してやろう。魔弾というのは「非魔術的概念」だ。対する呪文は「魔術的概念」。この二つは例外なく魔術的に交わることは無い。速さも威力も制御も、魔弾は魔術の補完に成りえん」

「でも、さっきちょっとですけど、速くなりましたよ?」

「試した方が早い。魔弾を想像するしないで交互に、五発ずつ撃ってみろ」


 師匠に言われるがまま、試しに撃ってみる。


「……全部速度が違いますね。速くなったと思ってたのは単に上振れを引いただけですか」

「安定しないのは、魔力制御がまだ未熟だからだ。次は、私が使った魔術を想像の補完に使ってみろ」

「はい」


 次は、さっきの魔術を想像の補完に――…!


「『水の槍(セイ・ディル)』……あれ?発動しない」


 発動しなかった俺の呪文を見て「それでいい」と師匠はいった。そして、師匠は人差し指と中指の二本をゴーレムに向ける――。


「『水の槍(セイ・ディル)』」


 師匠の放った水の槍は、目にもとまらぬ速さで飛び、ゴーレムの首上だけを正確に撃ち抜いた。


「非魔術的概念は魔術的概念は交わらない。だが、魔術的概念同士は、何らかの要因で衝突すれば、消滅することがある。呪文という概念に付与された魔術を、空想魔術という概念で補完すると、魔力消費量の相違で概念の衝突が起こり、消滅し、発動しない――これが呪文の弱みだ。呪文は歴史も浅く、後付けの概念のため脆い。対する神代の空想魔術は魔術的概念で最も優先される――というのを始めに説明するつもりだったのだが、貴様の覚えが悪いせいで手間が増えた」

「すみません……」


 ぶつかり合うと砕け散り強度が高い方が生き残る。まるでガラスだ。


「魔力制御が確立しない内は、戦場で呪文を使うな。仲間に未熟な呪術師を加えるな。わかったな」

「はい」

「では、再開だ。撃て」

「『水の槍(セイ・ディル)』」


 速度は上がった――だけど、師匠が使った、高い精度と速度の呪文で想像を補完しても、完全再現とはいかなかった。多少ましになった程度だ。


「もう一度撃ってみろ」

「はい『水の槍(セイ・ディル)』」


 さっきとほとんど同じだ。ゴーレムに当たりはするものの、師匠の呪文とまではいかない。だけど、師匠は「それでいい」といった。


「今の貴様は魔力制御がまだ未熟。美味しいココアの入れ方を知らない半端者だ。私のようにいかないのは当然――ならば、貴様が制御の補完に適している方法を模索しろ」

「わかりました」


 自分なりの魔力制御方法か――体内での魔力制御は身体強化で出来てる。だけど、体外となるとまた難しい。呪文という補助機能のおかげで魔術にはなってるけど、照準を合わせるのは指での補完だより……指での補完が可能ってことは、速度を出すのも明確に想像が出来るなら、魔術と関係ないところでもいい

――だったら、体の動きで制御の補完をすればいい。


「『水の槍(セイ・ディル)』」


 導き出した答えはやり投げ。左手で狙いをつけて、身体を捻り、右腕を振る――すると速度は段違いに伸び、ゴーレムの腕を一本持って行くことが出来た。だけど……


「速度は上がったけど、これじゃ隙が多すぎるし、射出まで秒単位ですね……」

「もう一つ助言をしてやろう。その方法だと、制御できるのは射出系の魔術だけだ。汎用性も加味して考えておけ。私は釣りに行ってくる。ハイン、怠けていたら遠吠えで知らせろ」

「ぼふ」


 ゴーレムの修理は――と聞こうとしたけど、おそらく自動再生機能付きだ。既にぴんぴんしている。師匠はハインに俺の見張りを任せ、いつものように昼前の釣りに出掛けた。


「もう、お前といるのも慣れたよハイン」

「ぼふ」


 師匠の命令が無い限り、ハインは基本大人しい。お腹を撫でてやると喜ぶ。


「汎用性か……ハイン、汎用性ってわかるか?ってわかんないよなあ」


 呪文で魔術に慣れたら、次は空想魔術の授業が始まる。呪文はあくまで、足がかりでしかない。だったら空想魔術でも使えるような制御方法を考えたほうがいいな。師匠の言う汎用性には、これも含まれてるはずだ。


「師匠みたいにノールックはそもそも想像がつかない。多分あれは師匠が持ってる魔眼が必要な技術だ……。ノーモーションは空想魔術の完成形……なあ、ハイン。お前ってずっと師匠の側にいたんだから何か知ってない?」


 言葉の通じない魔物に問いかけても返事は返ってこない。


水球(セイ・ル)


 これは”水の球を生み出す”簡単な基礎魔術。これ制御は、形を保つこと移動の二種類。対して”水の槍を放つ”、水の槍(セイ・ディル)は射出のタイミングまで概念として付与されている以上、保存ができない。溜めて撃つ――そうやって速度を出す方法も考えたけど、性質上無理だ。


「指先ひとつで自由に動かせる基礎魔術と、工程が決まって自由度の低い攻撃魔術……水の球なら指先動かすだけで移動させられるのになー……」


 漂う水の球を動かしていると、ハインが水の球を目で追い始めた。


「お?お前も犬らしいとあるじゃん。ほらこっちだ!」


 水の球を大きく動かすと、ハインは立ち上がりそれを口に入れようと追いかける。


「そーれ、いってこーい」


 基礎魔術くらいなら制御は簡単だ。多分見える範囲ならどこへでも飛ばせる。それに移動の速度も簡単――。


「ハイン!わかったかも!」


 水球が身体を大きく動かさずとも、指先ひとつで速度が変わるなら、同じく呪文である水の槍(セイ・ディル)の速度も変えられるはず――。


「でも、指先が動くから精度に問題が出るな……左手で狙って右手で速度の調整は、走ったり飛んだりしたらブレる――片手だけで完結させるのが合理的だ。なら、目視に戻るか……?でもそれは狙いが定まらなかった。……!指を止めるタイミングで着点を決めれば!『水の槍(セイ・ディル)』」


 考え付いた方法で試した呪文は、さっきと比べものにならない速度でゴーレムの脇腹をかすめた。


「精度はさっきより落ちたけど、これは数をこなせば埋められるから、成功と言っていいのでは……?射出速度は指を振る速度と比例する。着点さえ決められれば、始点はどこからでもいい――指を動かすだけだから、他の魔術にも適応するはず!ハインやったぞ!」

「おおぉぉぉん!!」


 思えば、師匠は最初からヒントを出していた。”指を使え”――それは何も照準だけじゃなくなくて、速度にも適用されることだったのだ。俺の記憶違いが起こした遠回りで、完全に頭から抜けていた。

 俺はハインと喜びを分かち合い、ハインは二度目の遠吠えを上げた――そしてその数秒後、魔弾が俺の脇腹を撃ち抜いた。


「……違うじゃん。それは……」

「クーン……」


 ハインは申し訳なさそうにお座りをし、頭を下げる。いいんだ。俺の成功を喜んでくれただけなんだから……。

 そうして俺は、際限ない魔力を以って一日を呪文の鍛錬に費やし、魔術の存在を脳に叩き込んだ。明日からは、空想魔術の修行が始まる。身体強化を維持しながら、魔術の工程を全て自分で行う――…今から、魔弾が何発飛んでくるか予想しておこう……。

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