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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー力を持った者は、戦場を選ぶ(灰港都市)ーー
91/105

091話 余波 ― 選ばれなかった戦争

――灰港連絡都市・外縁区。

夜。


この街では、戦争は突然“起きなくなる”。


撃ち合いが始まらない。

脅しも、報復も、いつの間にか延期される。

理由は誰も説明しない。

だが、皆が同じ結論に辿り着く。


――今は、やらない方がいい。


◆◆◆


港湾区の一角。

半地下のバー。


武装請負団体レッドバンクの下士官が、

グラスを乱暴に置いた。


「……おかしいだろ」

「三日前まで、

 あれだけ揉めてた荷役ギルドが、急に黙った」


向かいの男が、低い声で答える。


「黙ったんじゃない」

「“動けなくなった”」


「誰が止めてる?」


男は、しばらく黙ってから言った。


「名前は出てない」

「だが、言わなくても分かるだろ…」


その一言で、会話は終わった。

これ以上踏み込むのは――

“選択を間違える”行為だからだ。


◆◆◆


同時刻。

第二拠点・情報区画。


ダリオの前には、新しい指標が並んでいた。


・敵対発言:自然消滅

・武装移動:未発生

・裏市場価格:安定


「……余波、来てるな」


彼は、軽く指を鳴らす。


「“戦わない前例”が出来た」

「これ、しばらく続くぞ」


ラザロが、補給ログを確認しながら言った。


「物流は、もう戻り始めてる」

「だが、前と同じじゃない」


「前より――慎重だな」


「そう」

ラザロは頷く。

「“止められる”って事実を、

 全員が知ったからだ」


◆◆◆


作戦室。


ソフィアは、静かに報告を聞いていた。


「……説明責任は、都市側が引き受けた」

「表向きは“偶然の調整”」

「裏では、“不可視の抑止”として扱われてる」


ネロが笑う。


「いい落とし所だ」

「俺たちは、

 何も言ってないのに、

 勝手に“理由”が付いた」


カサンドラが言う。


「危険なのは、ここからよ」

「“次も出来る”と思われ始める」


ソフィアは、即答した。


「ええ」

「だから――次は、選ばない」


その言葉に、

ノアがわずかに顔を上げる。


◆◆◆


「力を見せ続けると、

 それは“常識”になる」


ソフィアは、淡々と続けた。


「常識になった力は、

 いずれ“試される”」


「だから――」

一拍置く。


「次は、何もしない」


ネロが、少し驚いた顔をする。


「完全に引く?」


「ええ」

「街に、“自分で静かになった”と、

 思わせる」


カサンドラが、微笑んだ。


「……一番、嫌らしいわね」


◆◆◆


ノアは、静かに口を開く。


「……戦場が、

 こっちを見失う」


ソフィアは、彼を見る。


「そう」

「見失った時、

 初めて“次の一手”が効く」


アシュレイが、肩を鳴らした。


「つまり――」

「嵐の前の、凪か」


◆◆◆


夜。

灰港の灯りは、いつも通り揺れている。


だが、その裏で――

いくつもの戦争が、

“始まらないまま終わっていく”。


選ばれなかった戦争。

撃たれなかった弾丸。

結ばれなかった報復。


そして、

誰も口にしない一つの事実。


――この街は、

 もう一度“選ばされる”のを、

 無意識に待っている。




――次回更新:2月18日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、092話「静かな評価 ― 数字にならない脅威」――


をお楽しみに!



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