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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー灰の街とゼロバレットーー
9/75

09話 援護の風

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ドゥオォォォォンッ!!


ヘリのローターが灼けた空を切り裂く。

熱風が吹き荒れ、地平線の砂を巻き上げていく。

ノアは無言で機内の床に片膝をつき、戦場の座標を確認した。


『第2班、交戦中。敵の増援多数。装備は中規模兵装――

 歩兵70、車両4、対空機関銃2。制圧率30%。』

ネオンの声が通信に乗って届く。

『風向き南西、湿度15%。視界2キロ未満、砂煙濃い。』


「了解」

ノアの声は低く、無機質だった。


風の音が機体を震わせる。

ヘリの機体の隙間から、戦場の閃光が見える。

――爆煙。弾道。閃光。

それらすべてがノアの網膜に映り、無音の情報として脳に刻まれた。


「ノア、もうすぐ現地だ。高度100。降下準備!」

パイロットの声と同時に、後部ドアが開く。

ゴォォォォッ!

乾いた風と砂が一気に流れ込み、熱気が頬を打つ。

ノアはロープを握り、迷いなく飛び降りた。


――ドスッ。


着地と同時に、足元の砂が焼けた匂いを立てた。

耳を劈くような銃声。

ダダダダダッ!! 

機関銃の連射が空を削り、金属片が雨のように降る。


視界の先では、ネロとカサンドラが交戦していた。

瓦礫を盾に、冷静に撃ち返す二人。

ネロの白いリネンシャツはすでに灰と血で染まり、

カサンドラの刀が光を反射して一閃するたび、敵が沈む。


「増援か?」

ネロが無線に呟く。

『いや……違う。こっちに“嵐”が来る。』

通信のノイズ混じりに、ネオンの声。


次の瞬間、カサンドラが叫んだ。

「――頭上ッ!!」


爆発。

ドゴォォォォォン!!

地面が揺れ、瓦礫が宙を舞う。

熱風と砂煙が一瞬で世界を灰色に変えた。


視界ゼロ。

だが――ノアには“全て”が見えていた。


空気の流れ。足音の震え。火薬の燃焼速度。

敵が動く“前”の呼吸を感じ取り、身体が勝手に動く。


バシュッ! バンッ! バンッ!

三発の弾丸が、砂煙の向こうにいる敵兵の喉元を正確に撃ち抜いた。

――呼吸の乱れで位置を読んだ、たった一瞬の反応。


カサンドラが振り向く。

「……来たのね」

ノアは無言で頷くと、素早く状況を整理した。


「敵戦力、残りおよそ五十。右側高所に四、車両が二。

 前方の廃墟の二階に狙撃。カサンドラ、右へ展開。

 ネロ、正面の機銃座を潰す。」


ネロがニヤリと笑い、銃を構えた。

「命令すんなよ。……だが、乗った。」


ドドドドドドッ!

ネロの弾丸が機銃の砲手を貫き、爆炎が上がる。

同時に、カサンドラの白刃が跳ねた。

シュパッ! ギャッ……!

鮮血が舞い、白いスーツの裾を赤く染める。


ノアは地面を滑るように移動し、敵の背後に回り込む。

手榴弾のピンを抜き、静かに転がす。

カチ……カチ……ボンッ!!

爆炎が一瞬で敵陣を包み、砂が宙に舞う。


『第2班、北側陣地の圧力低下確認! ノアの侵入成功!』

ネオンの声が高揚を含む。

『敵、指揮系統乱壊。完全に崩れてる!』


「よし、押し込む!」

ネロが叫び、再び撃つ。

ダン、ダン、ダン――ッ!


ノアは廃墟の上へ跳び上がり、銃を構えた。

見下ろした戦場は、炎と煙の海。

金属臭と焦げた布の匂い、熱風が頬を刺す。


その中で、ノアは静かに呟いた。

「……もう、終わらせる。」


パンッ! パンパンッ!

三発。

正確に、敵の残ったリーダー格の頭部を撃ち抜いた。

爆炎の音が遠ざかり、世界がゆっくりと静まり返る。


風が通り抜け、灰と砂が空へ吸い込まれていく。


「――第2班、敵勢力殲滅確認。被害軽微。」

カサンドラが通信に報告する。


『了解。……ナイスチームワーク、みんな。』

ソフィアの穏やかな声が本部から届く。


ネロが銃を肩にかけ、煙草を口に咥える。

「はぁ、疲れた。」

カサンドラは血のついた刀を拭いながら、微笑んだ。

「ノア――可愛いくて強いのね。」


ノアは空を見上げる。

濃い灰色の雲の間から、一筋の光が差し込んでいた。

風が頬を撫で、乾いた血の匂いが薄れていく。


――沈黙。

戦いの終わった世界に、ようやく“音”が戻ってくる。

風の音、瓦礫の崩れる音、遠くで猫が鳴くような微かな声。


ノアは拳銃をホルスターに戻し、呟いた。

「……援護、完了。」


そして、静かに立ち去った。


その背中を見送りながら、カサンドラは小さく笑った。

「――ゼロバレットに、“新しい風”が吹いたわね。」


――夕陽が差し込み、赤い砂が黄金色に染まった。

その日、戦場を吹き抜けた風は、確かに“空白”の名を持っていた。


(つづく)


――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、010話「弾丸の値札」――


をお楽しみに。


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