表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロバレット  作者: 水猫
ーー力を持った者は、戦場を選ぶ(灰港都市)ーー
77/104

077話 依頼という名の確認 ― 値段のつけられない力

――灰港連絡都市・中層区。

翌日、午前。


灰港の朝は遅い。

夜の取引が終わってから、人々がようやく動き出す。


そして――

“情報”も、動き出す。


◆◆◆


「……来たわね」


第二拠点・通信室。

ソフィアは端末に映る暗号通信を見て、静かに言った。


発信元は、灰港調停商会とは別系統。

だが、昨日の“交渉区域”と、はっきり繋がっている。


「商会じゃない」

カサンドラが分析を進めながら言う。

「もっと奥。

 都市管理層の一部……正式には“存在しない窓口”ね」


ネロが苦笑する。


「便利な言い回しだな」


ネオンが割り込む。


「翻訳完了。

 内容は単純よ」


ソフィアは頷いた。


「“依頼”ね」


◆◆◆


簡易作戦室。

全員が揃っていた。


ノアとアシュレイは、壁際に立つ。



「今回の話は、護衛でも排除でもない」


ソフィアは、そう切り出した。


「灰港中層区で起きている“摩擦”の調停」


アシュレイが眉を上げる。


「揉め事の仲裁か?」


「ええ。

 ただし、武装組織同士よ」


ネロが口を挟む。


「つまり、普通にやれば血が出る」


「出続けてるわ」

ソフィアは淡々と言った。


「だから、都市側が困っている」


◆◆◆


ホログラムに、二つの勢力が映る。


・港湾荷役ギルド

外縁武装請負団体レッドバンク


「どちらも灰港に必要な存在」

「だが、どちらも引かない」


カサンドラが補足する。


「放置すれば、街の流通が止まる」

「下手に介入すれば、都市側が敵になる」


ネロが腕を組んだ。


「面倒なやつだな」


「ええ」

ソフィアは頷く。


「だから――」


一拍置く。


「ゼロバレットに話が来た」


◆◆◆


アシュレイが、低く笑った。


「俺たち、

 いつの間に“使える存在”になったんだ?」


「昨日からよ」

ソフィアは即答する。


「撃たずに止めた」

「触れずに退かせた」


「それが、

 一番“都市が欲しがる力”だった」


ノアは静かに言う。


「……条件は?」


「報酬は、情報と通行権」

「金は、向こうも出す気がない」


ネオンが肩をすくめる。


「つまり、“試験運用”ね」


◆◆◆


沈黙。


誰もすぐに答えない。


ノアは、ゆっくり口を開いた。


「その調停……」

「戦わずに済むんですか」


ソフィアは、まっすぐに答えた。


「分からない」


「でも、

 戦わずに終わらせられる可能性が一番高いのは、

 今のゼロバレットよ」


その言葉は、

評価でも称賛でもなかった。


現実的な判断だった。


◆◆◆


アシュレイが、ノアを横目で見る。


「どうする?」


ノアは、少し考えてから言った。


「……戦場を選べるなら」


一拍。


「選ばない理由は、ありません」


ネロが、ニヤリと笑う。


「決まりだな」


◆◆◆


ソフィアは、通信端末を操作した。


『ゼロバレットは、

 調停の“場”に立つ』


『ただし、

 条件が一つ』


返答は早かった。


『聞きましょう』


ソフィアは、静かに言った。


『私たちは、

 どちらの味方にもならない』


『街のためでもない』


『――“戦わずに終わらせるため”だけに立つ』


数秒の沈黙。


やがて、短い返答。


『……理解しました』


◆◆◆


通信が切れる。


アシュレイが、肩を鳴らした。


「交渉の交渉か。

 ややこしい」


「いいえ」

ソフィアは微笑む。


「これが、力を持った者の立ち位置よ」


ノアは、窓の外を見た。


港が動いている。

人が流れている。


「……戦わずに、

 守れるものがあるなら」


小さく、しかし確かに言った。


「俺は、そっちを選びたい」


◆◆◆


その日。


灰港に、ひとつの噂が流れ始めた。


ゼロバレットは、

もうここら一帯では“頭一つ抜けている”


場を選ぶ側になった


ゼロバレットは、

確実に次の段階へ進んだ。


戦場は、もう“撃つ場所”だけじゃない。

選ばれた場所で、

選ばれた終わらせ方をする――


――次回更新:2月1日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、078話「調停前夜 ― 静かな配置」――


をお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ