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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
63/74

063話 無音の夜 崩壊 ― 音の津波

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

沈黙は、

壊れた瞬間に――

凶器へと変わる。


音を奪われた世界が、

無理やり元に戻されたとき、

そこに待っているのは

「日常」ではない。


それは、

溜め込まれた死の反動だった。


――ガリレア砂漠戦線

時刻 01時19分


世界が、

吠えた。


爆音。

衝撃。

振動。


無音領域に押し込められていた

すべての音が、

一斉に解放された。


砲声。

叫び声。

装甲の軋み。

爆発。

悲鳴。


それらが、

遅延も秩序もなく、

同時に叩きつけられる。


兵士たちは、

一斉に崩れ落ちた。


耳を押さえ、

地面を転がり、

嘔吐する者。

失神する者。


鼓膜が破れた者もいる。

神経が過負荷を起こし、

立てなくなる者もいた。


――音は、

人間にとって

武器にもなる。


――無音領域外縁。


アシュレイ・ケインは、

伏せたまま歯を食いしばっていた。


(……来やがった)


スコープ越しの視界が、

一瞬歪む。


距離感が戻る。

風が戻る。

反動が、正常になる。


だが同時に――

戦場が“現実”に戻った。


「……生き残ったか」


誰に向けた言葉でもない。


彼は、

即座に狙撃体勢へ戻る。


音が戻ったということは、

敵も動けるということだ。


(……ノア)


地下入口を見る。


砂煙の向こう。

まだ、動きはない。


――地下構造物。


ノアは、

壁に手をついていた。


頭が、

割れるように痛む。


耳鳴り。

視界の揺れ。


だが、

意識は保っている。


「……っ」


エンフィールドが、

すぐ横で呻いた。


「くそ……

 音ってのは……

 こんなに、重かったか」


ノアは、

ゆっくりと立ち上がる。


制御盤の表示は、

赤から黄へ変わっていた。


《音響遮断フィールド:停止》

《神経干渉レベル:低下》

《補助中枢:稼働中》


(……完全停止じゃない)


ノアは、

すぐに理解した。


これは、

“主装置”の破壊にすぎない。


この戦場には、

まだ複数の中枢がある。


「……エンフィールド」


「分かってる」


二人は、

言葉を交わさなくても

同じ結論に至っていた。


「ここは、

 “無音の夜”の終点じゃない」


――地上。


ヴァルキリー8は、

音の津波に飲まれながらも

踏みとどまっていた。


レインが、

耳を押さえつつ叫ぶ。


「全員、生存確認!」


タリヤが、

必死に応答する。


「ガルシア兄、

 一時的な聴覚障害!

 命に別状なし!」


「リザ、問題なし!」

「カロル、軽度の神経ショック!」


完全無傷はいない。

だが――

全員、生きている。


それが、

ヴァルキリー8の異常さだった。


レインは、

地下入口を見つめる。


「……ノアは?」


その瞬間。


砂煙の中から、

二つの影が現れた。


ノアと、

エンフィールド。


ノアは、

ふらつきながらも

前を見据えていた。


「……主中枢、一つ破壊」


その声は、

まだ掠れている。


「だが、

 装置は複数ある」


レインは、

一瞬だけ目を閉じ、

すぐに開いた。


「つまり?」


「“無音の夜”は、

 まだ終わらない」


――遠方、砂丘上。


アシュレイは、

その姿をはっきりと捉えた。


地下から出てきた、

一人の前衛。


身体は疲弊している。

だが、

歩き方が違う。


(……あいつだ)


この夜、

何度も彼の“進路”を撃ち抜いた。


顔は、

まだ見えない。


だが、

分かる。


(――生き延びる側の人間だ)


アシュレイは、

ライフルを下ろさなかった。


むしろ、

構え直す。


この戦場は、

まだ終わっていない。


――戦場全域。


音が戻ったことで、

戦闘は再開された。


だが、

もう“以前の戦争”ではない。


兵士たちは、

音を信じられなくなっていた。


叫びは信用できない。

砲声は判断材料にならない。


――無音を知った者は、

二度と、

元の戦場には戻れない。


ノアは、

砂漠を見渡しながら、

静かに言った。


「……これで、

 世界は気づく」


エンフィールドが、

苦く笑う。


「何に?」


「戦争が、

 次の段階に入ったってことに」


無音の夜は、

崩れ始めた。


だがそれは――

終わりではなく、進化の兆しだった。


ガリレア砂漠戦線。

死者数、五百万を超える戦争。


この夜を境に、

人類は知ることになる。


――

音を奪われるより、

 音を“戻される”ほうが、

 よほど残酷だということを。

――次回更新:1月10日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、064話「夜明け ― 交わらない出会い」――


をお楽しみに!


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