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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー灰の街とゼロバレットーー
6/74

06話 星を映す湖の夜

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ゴウン……ゴウン……。


ジープのエンジンが低く唸り、坂を登り切った。

視界が一気に開ける。


そこに広がっていたのは、

自然と人工が静かに共存する――ひとつの「要塞」だった。


森を背に建つ複合拠点。

コンクリートと鋼鉄を組み合わせた建物群が、山肌に沿って幾重にも連なっている。

風力発電のタービンがゆっくりと回り、

水路の先には、先ほど見た透き通る湖が光を反射していた。


「……着いたわね」

ソフィアが小さく呟いた。


カサンドラが手早く門を開けると、

鋼の扉が**ギィ……ギィ……**と重たい音を立てて開いた。


「ただいま」

ソフィアが車から降りて、腕を広げる。

黒猫が肩から飛び降り、三毛猫と白猫が後を追うように走り出した。


施設の入り口前に数人の影が現れる。

訓練着姿の若者たち――ゼロバレットの初期メンバーだ。


「リーダー、おかえりなさい!」

その中から明るい声が響いた。

先に出てきたのは、裸エプロン姿のカインだった。


「おぉ〜、みんな戻ったか! 夕飯はもうすぐ出来るぞ!」

カインは両手を腰に当て、笑顔を浮かべている。

その姿にネロが呆れ顔をした。

「お前、まだその格好で料理してんのかよ」


「この格好が一番いいんだよ! 動きやすいし、熱くない!」

「……見た目が暑いんだよ」

カサンドラがため息をつく。


ノアは思わず目を逸らした。

(……この人、本当に戦場に出るのか?)


「ふふっ、まあまあ」

ソフィアが笑いながら手を叩く。

「今日は新しい仲間を紹介する日よ」


周囲が静まる。

ノアは一歩前に出た。

風が吹き、彼の黒髪を揺らす。


「ノア。“空白ブランク”と呼ばれてる」

短くそう名乗ると、誰もが息を呑んだ。


数秒の沈黙――

やがて、カインが破顔した。

「おぉ〜! マジか! あの“空白”が仲間入り!? 最高じゃねぇか!」


「……信じられない。本当にこの子が?」

カサンドラが呟く。

ネロは肩をすくめ、口角を上げた。

「まぁ見りゃ分かる。目が違ぇ」


「よし、それじゃ歓迎会といこうか!」

カインが手を叩く。

「今日は俺の特製ローストと豆スープ、それにソフィアが持ってきたワイン!」


ソフィアが頷く。

「このワインはね、ゼロバレットを結成した日に飲んだの。

 安物だけど……思い出の味よ」


「それは最高だな」

ネロが笑う。


――やがて、食卓が整った。


長い木製テーブルの上には、湯気を立てる料理が並ぶ。

肉の焼ける香ばしい匂い、スープの温かな湯気、

パンをちぎる音、グラスがぶつかるカランという音が混ざり合う。


「乾杯!」

カインの声とともに、皆がグラスを掲げた。

「ノア、これがうちの味だ。しっかり食え!」


ノアは小さく頷き、肉を口に運ぶ。

……柔らかい。

口の中で溶ける脂の旨味に、思わず目を細めた。


「どうだ?」

「……うまい」

「だろ!」

カインが満足げに笑う。


ソフィアはグラスを傾けながら、静かに言った。

「こうしてみんなで食事できること。

 それが、私たちにとっての“戦いの報酬”なの」


ノアはその言葉に目を伏せた。

戦場では、飯も笑いもなかった。

今、この小さな空間だけが、確かに“生”を感じさせた。


――宴は続く。


カインが料理を追加し、リリスが酒を注ぎ、

カサンドラは笑いながら酔いつぶれそうなネロを支える。

ソフィアは黒猫を膝に乗せ、三毛猫と白猫が足元をくるくる回っていた。


「……ふふ、賑やかね」

ソフィアが呟く。


ノアは小さく笑った。

その笑顔を見て、彼女も安心したように目を細めた。


――宴の後。


夜風が吹く。

外に出たノアは、月明かりの中を歩く。

足音が**ザク……ザク……**と砂を踏み、湖畔へ向かう。


湖は、星を飲み込むように輝いていた。

水面には無数の星が映り込み、空と地の境が消えている。


「……こんな景色、初めて見た」

ノアは息を飲む。

風が頬を撫で、静かな波紋が広がる。


少し遅れて、ソフィアが現れた。

「眠れないの?」

「……なんか、静かで」

「ふふ、そういう夜もあるわ」


二人はしばらく言葉を交わさず、星を見上げた。


虫の声。波の音。

遠くで猫たちの鳴き声。


ソフィアが小さく呟く。

「この湖の星、綺麗でしょ? ゼロバレットのメンバーは、みんなここで“願い”をひとつだけ言うの」


「願い?」

ノアが顔を向ける。

ソフィアは優しく微笑んだ。

「そう。叶うかどうかはわからないけど……

 “死なずにまた、この星を見られますように”ってね」


ノアはゆっくりと頷いた。


風が流れ、湖面の星々が揺れる。

その光がノアの瞳に映り、

静かに、確かに――“空白”が、少しずつ色を取り戻していった。



――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、07話「朝のざわめきと白い息」――


をお楽しみに。



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