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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
59/76

059話 大砂丘崩落 ― 死者十万人

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

【ナレーション】


戦争は、人が起こすものだ。


だが時に――

戦場そのものが、意思を持ったかのように牙を剥くことがある。


それは兵器でも、

戦術でも、

誰かの命令でもない。


ただ積み重なった死と、

破壊と、

歪んだ均衡が引き起こす“必然”。


この夜、ガリレア砂漠で起きた出来事は、

後にこう記録される。


《大砂丘崩落》


死者、十万人。

理由――

「地形変動による事故」。


だが、それを“事故”と呼べる者は、

その場にいなかった。


――ガリレア砂漠戦線・中央部

無音領域周辺/時刻 23時38分


最初の異変は、

振動ですらなかった。


ノアは、足元の砂の感触が変わったことで気づいた。


(……沈む)


ほんの数ミリ。

だが、確実に。


砂丘が、

“呼吸するように”沈降している。


「……全員、止まれ」


声は出ない。

だが、ノアの動きが合図になった。


ヴァルキリー8が、一斉に静止する。


エンフィールドが、砂を掴んで確認する。


(……下、空洞だ)


視線が合う。

言葉はいらない。


地雷原。


しかも、

一つや二つじゃない。


(……連鎖式)


敵軍が仕掛けた、

広域殲滅用の旧式地雷。


通常なら、

爆発音で察知できる。


だが――

ここは、無音領域。


爆発は、

“音を伴わずに起きる”。


次の瞬間だった。


砂丘の向こう側で、

“地面が消えた”。


視界が、落ちる。


巨大な砂の塊が、

重力に従って滑り落ちていく。


それは崩落ではない。

砂の津波だった。


味方陣地。

敵陣地。

区別はない。


人も、装甲車も、

砲も、死体も――


すべてが、

飲み込まれていく。


(……来る!)


ノアは、即座に判断した。


(このままじゃ、全滅だ)


ノアは走った。


無音の世界で、

砂だけが轟音を立てているように見える。


ガルシア妹――ユナが、

崩れかけた砂に足を取られた。


(……まずい)


ノアは、考えなかった。


踏み込み。

跳躍。


ユナの腕を掴み、

自分の身体ごと砂丘の“縁”へ投げる。


その直後、

二人がいた場所が消えた。


(……間に合った)


だが――


視界の端で、

さらに大きな崩落が起きている。


死者数は、

一気に跳ね上がる。


――同時刻、砂丘上。


アシュレイ・ケインは、

もはや狙撃どころではなかった。


スコープの向こうで、

戦場が崩壊していく。


(……冗談じゃねぇ)


敵も味方も、

同じように飲み込まれていく。


狙撃手として、

やるべきことは一つ。


“これ以上、死者を増やさない”


アシュレイは、

崩落の上部を狙った。


砂丘の縁に残る、

重機関銃陣地。


あそこが崩れれば、

下にいる全員が死ぬ。


(……止める)


引き金。


音はない。

だが、銃座が沈む。


支えを失った砂丘が、

そこで止まった。


完全ではない。

それでも、

数百人分の崩落を抑えた。


(……これでいい)


アシュレイは、

スコープ越しに一人の影を見る。


砂の中から、

仲間を引きずり出す男。


ノアだ。


血まみれで、

それでも前へ進む。


(……あいつ)


アシュレイは、

その姿を目に焼き付けた。


崩落は、

およそ三分で終わった。


その後に残ったのは――

地形そのものが変わった戦場。


かつて砂丘だった場所は、

巨大なクレーター群になっている。


死体は、

数えきれない。


十万という数字は、

後からつけられたものだ。


ノアは、

その中心で立ち尽くしていた。


(……戦争ってのは)


剣でも、

銃でも、

兵器でもなく。


こうやって、人をまとめて殺す。


それが現実だ。


ユナが、震える声で言った。


(……生きてる?)


ノアは、ゆっくり頷いた。


(ああ。生きてる)


それだけで、

十分だった。


遠くで、

無音領域がわずかに揺らぐ。


崩落によって、

歪みが変質したのだ。


この戦場は、

もう制御できない。


ノアは、直感する。


(……次は、もっと大きい)


無音の夜は、

まだ終わらない。


だがこの瞬間、

一つだけ確かなことがあった。


この夜を生き延びた者たちは、

二度と“普通の戦争”には戻れない。


ガリレア砂漠は、

そういう場所になってしまった。


そして――

歴史は、この崩落を境に

次の段階へ進む。


無音の夜《第二段階》へ。



あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!


――次回更新:1月2日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、060話「敵総司令ヴァルキアス ― 無音に立つ者」――


をお楽しみに!



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