表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
55/75

055話 ファンネル隊全滅 ― 敵の異常性

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

ーーー無音領域の外縁で見つかったのは、

“静かすぎる死”だった。

連合軍精鋭《ファンネル隊》百名。

銃痕も爆発も白兵戦の痕跡もなく、たった七分で全滅。

恐怖の表情すら残らない死体は、

戦闘ではなく“処理”を示していた。

敵は強い兵士を倒す方法を、すでに知っている。

そして、その中心はヴァルキリー8に近づいてくる。

次に処理されるのは誰か――

その答えを確かめるため、八人は無音の夜の中心へ歩き出す。ーーー







――ガリレア砂漠戦線・無音領域外縁

時刻 22時41分。


砂の上に、

“静かすぎる死体”が並んでいた。


「……なあ」


カロルが、普段よりずっと低い声で言った。


「これ、本当に戦闘後か?」


誰もすぐには答えなかった。


倒れている兵士は、百名以上。

全員が伏せるように、あるいは立ったまま崩れるように死んでいる。


銃は握られたまま。

安全装置も外れていない。


エンフィールドが、しゃがみ込んで一人の兵士の肩を揺らす。


「……死後硬直、始まってるな」


タリヤがすぐに隣に来て、手首を取った。


「脈なし。瞳孔反応なし……」


彼女は一人、また一人と確認し、やがて静かに言った。


「……全員、即死よ」


「即死?」

ユナが思わず声を上げる。


「この人数が?

銃撃も爆発もなしで?」


リオが辺りを見回した。


「弾痕、ないよな?

地雷も、焼け跡も……」


リザが地面を蹴る。


「血も少なすぎる。

斬られた形跡もない」


沈黙が落ちた。


――ここは、

連合軍精鋭《ファンネル隊》の最終通信地点。


世界ランク上位者を含む、百名規模の特殊部隊。


その全員が、

“戦った痕跡すら残さず”死んでいる。


レインがホログラム地図を開き、低く言った。


「ファンネル隊は、無音領域の内部に侵入後、

七分で通信が途絶えている」


「七分?」

カロルが笑えない顔で言う。


「俺たちが一個中隊潰すのに、

最低でも十分はかかるぞ」


「ええ」

レインは頷く。


「しかも彼らは、

“無音対応訓練”を受けた部隊だった」


その言葉に、空気が一段冷えた。


エンフィールドが立ち上がり、ノアを見る。


「ノア。どう思う」


ノアは、倒れている兵士の顔を一人ひとり見ていた。


恐怖で歪んだ表情はない。

苦痛の痕跡もない。


まるで――

スイッチを切られたように。


「……これは戦闘じゃない」


「は?」

ユナが振り返る。


「じゃあ何よ」


ノアは、はっきり言った。


「処理です」


一瞬、誰も言葉を発せなかった。


タリヤが、静かに問い返す。


「……どういう意味?」


「敵は、

“倒す”ことを考えていない」


ノアは、死体の一人の額に指を当てた。


「機能を停止させている」


「人間を?」

リオが喉を鳴らす。


「神経系を、一気に焼かれてる」

タリヤが続けた。


「でもこれ……

熱傷じゃない。電撃でもない。

神経“だけ”が壊されてる」


リザが歯を食いしばる。


「……兵器ね」


レインが視線を上げる。


「ええ。

しかも、かなり完成度が高い」


カロルが乾いた声で言った。


「なあ……

これ、俺たちでもヤバくないか?」


誰も否定しなかった。


エンフィールドが、低く笑う。


「百人が七分で“無音のまま”死ぬ。

敵は、俺たちと正面からやる気がねぇ」


ノアは、ゆっくり拳を握った。


「……だから厄介なんだ」


「ノア?」

ユナが不安そうに見る。


「相手は、

“強い兵士”を殺す方法を、もう知ってる」


沈黙。


そのとき、

無線が一瞬だけ、ノイズ混じりに復活した。


『……た……け……ろ……』


レインが即座に拾う。


「こちらヴァルキリー8!

応答せよ!」


数秒の沈黙。


『……聞こ……な……い……』


声は、すぐに途切れた。


位置情報だけが、地図に残る。


ユナが呟いた。


「……また、消えた」


ノアは、地図のその点を見つめる。


ファンネル隊の全滅地点から、

わずかに“内側”。


(……近づいてきてる)


ノアは顔を上げ、全員に言った。


「いいですか」


その声は、静かだが強かった。


「これから先、

俺たちは“無音の夜”の中心へ行く」


エンフィールドが頷く。


「つまり、

次に処理されるのは――」


「俺たちかもしれない」


ノアは、はっきり言い切った。


誰も笑わなかった。


レインが、短く命令する。


「――ヴァルキリー8、移動準備。

この地点を離れる」


「撤退?」

リオが聞く。


「違うわ」

レインは目を細めた。


「確認に行く。

この戦争が、どこで“狂った”のかを」


ノアは最後に、死体の列を見た。


(これは自然現象じゃない。

そして、ただの敵でもない)


彼は確信していた。


――この夜、

“戦争のルールそのもの”が書き換えられたのだと。


無音の砂漠で、

ヴァルキリー8は再び歩き出した。


次に待つのが、

戦闘なのか、

それとも“処理”なのかも分からないまま。




――次回更新:12月29日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、056話「敵の中枢へ ― ヴァルキリー8の進軍」――


をお楽しみに!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ