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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
54/74

054話 暗闇の前衛戦 ― ノア初戦闘

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

無音の夜、開始から四十分。

砲兵は沈黙し、装甲は止まり、歩兵は理由も分からず倒れていく。

戦場はもう戦場の形をしていない。

だが、その瓦礫の中を前進できる部隊がひとつだけあった。

《ヴァルキリー8》。

そしてノアの初戦闘は、

音も視界も失った戦場で“読む”という能力そのものを証明する。

この夜、狙撃手アシュレイは確信する。

――あの影がいる限り、この戦線はまだ死なない。ーー





――無音の夜、開始から四十分。


ガリレア砂漠の戦線は、すでに“戦場”としての体裁を失っていた。

砲兵隊は沈黙し、装甲部隊は動けず、

歩兵は自分たちが撃たれているのかすら分からないまま倒れていく。


音がない。

指示が届かない。

恐怖だけが、連鎖していく。


そんな中で――

ヴァルキリー8だけが、前進を続けていた。


 


ノアは、砂丘の縁に片膝をついていた。


視界は最悪だ。

夜、砂嵐、そして光源の制限。

だが彼の意識は、視覚よりも“変化”に向いている。


砂の沈み方。

粒子の舞い上がり。

影の濃淡。


(……いるな。)


次の瞬間、

ノアは合図もなく踏み込んだ。


音は出ない。

だが、砂の流れがわずかに乱れた。


敵兵――黒砂部隊の一人が、

ノアの視界に入った瞬間には、もう遅い。


ノアの刃が、最短距離を描く。


首。

正確に、神経の通り道だけを断つ。


敵は声も出せず、その場に崩れ落ちた。


 


エンフィールドがすぐに背後をカバーする。

リザが倒れた敵を引きずり、砂に埋める。


「……無駄がないな。」

タリヤが小さく息を吐く。


ノアは答えない。

すでに、次を見ている。


(敵は三人一組。

 音がない分、距離を詰めてくる。)


彼は指を二本立て、

ガルシア兄妹へ送る。


“左右、同時”


兄妹は一切の迷いなく動いた。


右から兄。

左から妹。


敵が反応した瞬間、

すでに挟まれている。


ナイフ。

関節。

急所。


三人が、ほぼ同時に崩れた。


 


この戦いには、

“撃ち合い”という概念がなかった。


どちらが先に気づくか。

どちらが先に間合いに入るか。


それだけだ。


そして――

その速度で、ノアは異常だった。


 


――右翼戦線、砂丘上。


アシュレイ・ケインは、

その様子をスコープ越しに捉えていた。


夜目補正。

熱反応。

距離測定。


それでも、

完全には追えない。


(……速すぎる。)


敵が倒れる“前”に、

ノアはもう次へ向かっている。


無音の中、

敵の配置を把握し、

最短で潰していく。


(前衛で、あの判断速度……

 普通じゃねぇ。)


アシュレイは、

思わず狙撃を控えた。


撃てば、

流れを乱す。


今は――

あの部隊に、任せる方が正しい。


 


その判断が、

次の瞬間に正解だと証明される。


敵の増援。

十数名規模。


通常なら、

ヴァルキリー8でも引く状況。


だがノアは、

一切の躊躇なく前へ出た。


(……正面から?)


アシュレイは思わず息を止める。


ノアは、敵の“中心”に踏み込んだ。


刃が振るわれる。

だが、それは“斬る”ためではない。


動線を切る。


一人を倒し、

一人を転ばせ、

一人を後退させる。


その瞬間、

敵の陣形が崩れる。


「今だ!」


――声は出ていない。

だが、その“意図”は、

ヴァルキリー8全員に伝わった。


四方からの突入。

連携。

制圧。


十数名の敵が、

わずか数十秒で沈黙した。


 


砂の上に、

静寂が落ちる。


ノアは刃を下ろし、

短く息を吐いた。


(……適応できる。)


音がなくても。

視界がなくても。


戦場は、

“読むもの”だ。


 


その姿を見て、

アシュレイは確信する。


(……あいつがいる限り、

 この戦線はまだ死なない。)


顔は見えない。

名前も知らない。


だが、

この夜の戦場で、

彼の存在は確実に刻まれた。


 


無音の夜。

第一段階。


この時点で、

戦局はすでに変わり始めていた。


そして――

ノアにとっても、アシュレイにとっても。


“忘れられない影”が、

互いの戦場に生まれた夜だった。




――次回更新:12月28日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、055話「ファンネル隊全滅 ― 敵の異常性」――


をお楽しみに!


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