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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
53/74

053話 無音の夜《第一段階》

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

ーーー日没。

戦場から音が消えた瞬間、

兵士たちは自分の死を“予告なし”で受け取ることになる。

叫んでも届かず、無線も返らず、

仲間の倒れ方だけが答えになる。

――これが《無音の夜・第一段階》。

敵はすでに適応し、存在感を消して近づいてくる。

そして《ヴァルキリー8》は、

音がない世界で生き残るために、戦いを“撃ち合い”から“処理”へ変える。

その異常な進軍を、砂丘の影からアシュレイが見ていた。ーーー




――日没、ガリレア砂漠。


太陽が地平線に沈むと同時に、

戦場から“世界の輪郭”が失われ始めた。


本来なら、この時間帯は最悪だ。

視界は落ち、判断は遅れ、

砲撃と照明弾が夜を引き裂く。


だが――

この夜、砲声は上がらなかった。


 


ヴァルキリー8は、砂丘の陰に展開していた。


ノアは伏せたまま、腕時計を確認する。

秒針は動いている。

だが、音がない。


風は吹いているはずなのに、

砂が擦れる音が聞こえない。


「……来たな。」


ノアの呟きは、誰の耳にも届かなかった。


無線機のランプが一斉に点灯する。

しかし、通信はない。


タリヤが無線に向かって叫ぶ。

だが、彼女自身の声すら確認できず、

驚いたように自分の喉に触れた。


「声が……」


レインが即座にジェスチャーで制止する。

“冷静になれ”

“まだ動くな”


ヴァルキリー8は、

音を前提としない訓練を受けている。


それでも、

この“完全な欠落”は想定外だった。


 


ノアは、砂の流れを見る。


砂嵐の中、

粒子の動きが不自然に揃っている。


(……誘導されてる。)


敵は、もうこの環境に“適応済み”だ。


「合図は視覚のみ。」

ノアは、最小限のハンドサインを送る。

「光源、使うな。

 足跡は必ず消せ。」


ガルシア兄妹が左右へ散開する。

リザとカロルは後衛。

エンフィールドがノアの半歩後ろについた。


八人は、

音のないまま戦場を進む。


 


――その頃、右翼戦線。


アシュレイ・ケインは、

すでに“普通の戦い方”を捨てていた。


無線は意味をなさない。

弾着音もない。


頼れるのは、

視界・反動・呼吸だけ。


スコープ越しに、

味方の陣形が崩れていくのが見える。


敵は見えない。

だが、倒れる順番だけは、異様に正確だった。


(……撃たれてない。)


兵士たちは、

まるで“スイッチを切られた”ように倒れていく。


アシュレイは、

一人の兵士の倒れ方に違和感を覚えた。


前のめりでも、仰向けでもない。

その場で、崩れ落ちた。


(神経……やられてる。)


次の瞬間、

スコープの端を、黒い影が横切った。


速い。

だが、無駄がない。


(……あいつら、音を必要としてない。)


アシュレイは、即座に狙撃位置を変更した。

“撃たない”。


今は、

撃てるかどうかを試す段階じゃない。


 


――ヴァルキリー8前方。


最初の接触は、

音もなく起きた。


エンフィールドが、突然立ち止まる。

次の瞬間、彼の前方三メートルの砂が、

“切断”されたように沈んだ。


ノアは、即座に伏せる。


砂の沈下。

圧力の抜け。


(……空間作用兵器。)


「敵、前方六時方向。」

ノアは、最小の動作で指示を出す。


黒砂部隊――

無音領域に特化した敵精鋭。


彼らは走らない。

跳ばない。

**“存在感を減らす動き”**をしていた。


ガルシア兄がナイフを投げる。

だが、途中で軌道が歪み、

砂に突き刺さった。


(投擲も狂う……)


ノアは、瞬時に判断を切り替えた。


(近接のみ。)


彼は、音を立てずに踏み込む。


刃が閃く。

だが、衝突音はない。


それでも、

敵の身体が“崩れる”のが見えた。


一人、二人。


ヴァルキリー8は、

音のない殺し合いに完全に移行した。


 


その戦いを、

砂丘の向こうから見ている男がいた。


アシュレイは、スコープ越しに、

異常な光景を捉えていた。


八人。

確実に連携し、

確実に前進している。


(……なんだ、あの部隊。)


彼らは、

無音領域を“理解している”。


いや――

最初から、音に頼っていない。


その中心にいる影。

動きの起点。

判断の速さ。


(あれが……前線を変えてる奴か。)


アシュレイは、

まだその男の顔を知らない。


だが、

この夜のどこかで確信する。


――この戦場の流れを変えるのは、あいつだ。


 


完全な夜が訪れた。


銃声も、悲鳴も、爆発もない。

それでも、

死者の数だけが、確実に増えていく。


ガリレア砂漠戦線。

死者数、五百万へ向かう戦争。


その中心で――

“無音の夜”は、静かに牙を剥いた。


そしてこの段階は、

まだ“第一段階”にすぎなかった。




――次回更新:12月27日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、054話「暗闇の前衛戦 ― ノア初戦闘」――


をお楽しみに!


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