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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
47/74

047話 無音の夜 ― ノア視点② ヴァルキリー8

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ガリレア砂漠戦線・中央前線

時刻 21時15分。


“音”が消えて二十二分。

世界はまだ沈黙のままだった。


砂嵐の視界は悪い。

照明弾の光は外側に吸い込まれ、

煙の中では敵兵の影だけが不気味に揺れている。


ノアは砂に足を沈めながら、戦場の中心へ進んだ。


刃を振るうたび、

敵の血が砂に染みる。

だがその飛沫すら音はない。


(……まだ前衛だけか。)


敵陣の中央、砂の塊の陰に――

大型のテントが張られている。


指揮官区画だ。


そこを落とせば、このエリアは終わる。

だが問題は――


(……敵が多すぎる。)


前方にはまだ400名。

後方に控える重装車両は10台以上。

さらに、テント周辺には護衛兵が密集している。


通常の歩兵部隊なら三時間以上かかる規模。


だが。


ノアは自分が孤立していることに、

少しも焦っていなかった。


(あと数分で来る。)


砂煙の奥――

黒い影が八つ。


“音のない戦場ですら、気配だけで分かる存在”。


ヴァルキリー8(EIGHT)


ノアを含む、戦線をひっくり返す“八人”。


――世界ランカーの怪物集団。


◆ノア・アルト(29位)

◆エンフィールド(17位)

◆リザ・ハートマン(23位)

◆ガルシア兄妹(双子|共に44位)

◆黒衣のヴェイル(55位)

◆医療兼戦闘のタリヤ(38位)

◆銃火術のカロル・ルード(41位)


全員、世界のどこかの戦場で名を馳せた“怪物”。


その八人が――

この“無音の夜”に投入された。


ノアが刃を構え直した瞬間。


砂が割れ、

空気が震え、

世界に“影”が降り立つ。


先頭の影が砂塵を蹴り上げた。


「遅かったじゃないか、ノア。」

軽い声。どこか楽しげ。


黒い外套を揺らしながら近づいてきたのは、

銃火術のスペシャリスト――


◆カロル・ルード(世界ランク41位)


ノアは顔を向けず、ただ言う。


「予定どおり二十分遅れ。状況は最悪だ。」


「見りゃ分かるさ。」

カロルはタバコを咥え、弾けるように笑う。

「……音がねぇ戦場なんざ初めてだよ。気味が悪ぃ。」


その背後から、

砂を裂くように鋭い声が飛ぶ。


「集中しろ、カロル。」

長槍を携えた姿。背筋の伸びた女性が歩み出る。


◆リザ・ハートマン(23位)

“貫く槍の女王”


彼女はノアの視界に入るだけで、

空気の密度が変わった気がした。


「ノア、後衛重火力は私とカロルで焼く。

 あなたは指揮区画へ。」


「了解。」


続いて双子の影が飛び降りる。


◆ガルシア双子(44位)


双子は全く同じ動きで、

全く同じタイミングで武器を構えた。


風を裂くように動く双子は、

敵陣の右側へ走る。


そして最後に――


白衣を纏った女性が歩いてきた。


◆タリヤ(38位)

“戦場医師”


「ノア、手は切れてる。止血しとく。」


いつの間に近づいたのか、

タリヤの指がノアの手を掴んだ。


彼女は医療班でありながら、

戦場では世界ランカーの実力を持つ。


「……助かる。」


ノアは淡々と言った。


タリヤは小さく微笑む。


「あなたは怪我の治療が雑すぎるのよ。」


その会話の間にも――

ヴァルキリー8の空気は変わっていく。


「――行くぞ。」


エンフィールドが姿を現した。


最も静かに、最も速く動く男。

黒い刀身の剣を引き抜くと――


風景が一瞬、揺れた。


(……来た。)


ノアは深く息を吸う。


次の瞬間。


“音のない戦場で、八つの影が同時に動いた。”


◆◆◆


敵は、まだそれに気づいていない。


無音の世界では、

声も足音も届かない。


だからこそ、

ヴァルキリー8の動きは“神速の襲撃”となる。


リザの槍が第一陣を貫き、

ガルシア双子が第二陣を切り裂き、

カロルの銃火が第三陣を焼く。


タリヤは味方の中に入り、

戦闘中の治療と斬撃を同時に行っていた。


(やはり……強い。)


ノアは刃を逆手に構えた。


敵の前衛がまだ混乱していないその瞬間――

ノアの目が鋭く細まる。


敵指揮官のテント。

その内側に、

重装兵三名の影。


(……中核は、あそこだ。)


砂を蹴り、

ノアは一瞬で距離を消した。


無音の世界でも、

彼の動きは“線”のように速かった。


敵重装兵の一人が振り向いた瞬間――

ノアはその首を刈り取った。


血飛沫が宙に弧を描き、

光を反射して消える。


もう一人が銃を構える。

ノアはその銃身を左手で押し下げ、

右手の刃を胸に深く刺した。


残る一人が後退しようとする。

だが――


ノアが疾駆。


敵兵の喉を切り裂き、

そのままテント内へ飛び込む。


そこには――


大型の通信機器と、

一枚の地図。


ノアはその地図を見て眉をひそめる。


(……これは。)


敵の侵攻ルートが、

この“無音の夜”を境に、

予想より遥かに速くなっている。


(何かが変わった。)


ノアが通信機を破壊したその瞬間。


テントが大きく揺れた。


外で――

一体何が起きている。


ノアが駆け出すと、

戦場の中心に“崩れた影”が見えた。


ガルシア兄の脚が傷ついている。


タリヤが即座に治療に入り、

妹のガルシアが肩を貸している。


(負傷……?)


ノアは走った。


そのとき、砂丘の上――

鋭い閃光が二度走る。


(……アシュレイ!)


狙撃手は依然として戦場を見ている。


ノアの視線を感じたのか――

アシュレイはほんのわずかにスコープを傾けた。


“気にすんな。こっちは抑えてる。”


そんな無音のメッセージのようだった。


ノアは息を吐く。


(……いい狙撃だ。)


無音の夜。

二人はまだ出会わない。


だが確かに“共闘”している。


ヴァルキリー8と、遠距離狙撃手。

彼らが組むことで――


ガリレア砂漠戦線は、

この夜を境に完全に“崩れた”。


(……次で決着をつける。)


ノアは刃を強く握り直した。


“音のない戦争”。

その中心で――彼は走り続ける。

――次回更新:12月13日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、048話「無音の夜 ― ノア視点③ 地獄の中心」――


をお楽しみに!


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