043話 千砂丘の狙撃戦 ― アシュレイ視点①
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――ガリレア砂漠戦線・北部千砂丘帯。
時刻 05時31分。
砂の海が、風で“さざ波”のように揺れていた。
夜明け前、まだ光は弱い。
その薄闇の上で、ただ一本――長い銃身が、静かに横たわっていた。
アシュレイ・ケイン。
当時、軍属ではない。
政府が緊急雇用した“特務狙撃隊”の一員で、
賞金稼ぎと現地部隊の混ざった半端な集団だった。
だが、その中で一人だけ規格外がいた。
アシュレイだ。
砂丘の上で、彼は独り、砂に寝そべっていた。
風の音、砂の揺れ、敵の無線のざらついたノイズ。
そのすべてが“獲物の居場所”を教えてくれる。
(……こっちはまだバレてないな。)
レシーバーから命令が入る。
【ケイン、目標は敵後衛の“通信部隊”。
こいつらを落とさなきゃ、南の走廊は突破される。】
「分かってる。黙っとけ。」
アシュレイは【×20スコープ】を覗く。
砂丘の向こう――
敵後衛陣地の奥に、通信車両が並ぶ。
アンテナが左方向に倒してあり、
砂嵐を避けるため、モードを変更している。
(……あれが動いてる限り、味方に砲撃座標は届かねぇ。)
アシュレイは息を吐き、
ゆっくりと呼吸を止めた。
狙うは “通信兵の右耳”。
そこが最も複数の配線に近く、
弾痕の振動だけで内部システムを“落とせる”。
――パン。
音は短く、鋭い。
2000メートル先の敵兵が、何が起こったかも分からず崩れ落ちた。
すかさず第二射。
スコープの端に映った影を撃ち抜く。
3秒以内に三名、
さらに通信車の制御盤のカバーを貫通して破壊。
警報が敵陣に響いた。
「狙撃だ!上だッ!!砂丘から――」
その瞬間にはアシュレイはもう移動していた。
砂丘の死角へ滑り込み、
スコープを切り替え、
新たな角度から別の通信車の運転席を撃ち抜く。
(よし……後衛の“声”は、これで封じた。)
彼がいたのはたった一ヶ所――
砂丘の影。
しかし結果は、
後衛陣の通信部隊 “42名、全壊”。
報告がレシーバーから飛ぶ。
【ケイン!後衛が沈黙した!南の走廊が動き始めてる!
ゼロ班が突っ込んでる……!】
アシュレイは眉をひそめる。
「ゼロ班?知らねぇ部隊だな。」
【少数精鋭と噂のやつらしい。
味方機甲部隊が一斉に動き出した!】
(……誰だ?
このタイミングで動くなんて、ただの兵士じゃねぇ。)
アシュレイは砂丘のてっぺんに登り、
南――走廊方向を見た。
遠くの地平線に、
砂煙が巨大な柱となって立ち昇り、
その中央を“誰か”が切り裂いていた。
距離は3キロ以上。
だが、分かる。
――あそこにいる何者かが、戦局を変えた。
(……なんだあれは。)
その動きは
“生きた戦斧”のように鋭く、
しかし無駄がなく、
まるで呼吸が読めるほど“静か”。
アシュレイは息を飲んだ。
(……まさか、人間か?)
その人物が誰なのか分からない。
顔も、声も、所属も不明。
ただ――“化け物のように強い”。
それだけは確かだ。
(……いつか会う気がする。
こういう奴は、必ずどこかで道が交わる。)
そしてアシュレイはもう一度スコープを覗き込む。
(……まずは目の前の戦場を片付ける。
あの“影”がいるなら、俺も遅れられねぇ。)
アシュレイは銃を構えた。
砂丘の影に身を沈め、
新たな標的へ狙いを合わせる。
――その瞬間、
遠くの地平の動きが、一瞬こちらを向いた気がした。
(……気のせい、か?)
ノアとアシュレイ。
まだ知らない。
同じ砂漠で、
同じ敵を、
同じ呼吸で撃っていることを――。
これが、二人の“最初の共闘”だった。
もちろん、互いの名も知らないまま。
――次回更新:12月6日17:30公開予定
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『ゼロバレット』続編、044話「無音の夜 ― アシュレイ視点②」――
をお楽しみに!




