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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
41/75

041話 包囲突破 ― 灰の突破口

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ガリレア砂漠戦線・第七補給区画外縁。

時刻 04時42分。


照明弾が夜空を裂き、

砂丘の影が千の兵影を形作る。


ノアたちゼロ班は、完全に包囲されていた。

敵兵は推定1200名。

重機関銃、迫撃砲、装甲車まで揃っている。


対して、こちらはたった 8名。


だが誰一人、怯えてはいなかった。



バルド(隊長)が通信越しに声を張る。


『ノア!東側はどう見える!』


ノアは砂丘の稜線を走り、

双眼鏡代わりのモノキュラーを覗き込む。


「……東は200。

 北から増援が来て、すぐ300になる。

 こっちは“囮の壁”です。突破は不可能。」


バルドが歯を噛みしめる。


『そっちは――地雷原だ。

 俺たちは動けん。』


「分かってます。」


ノアは静かに言った。


「敵が一番“薄い”のは、南側。

 砂丘の斜面の奥に、遮蔽物が少しある。」


サーシャが息を飲む。


「でも南には重機関銃が三基……!」


「だからこそ、そこを突破します。」


ジャドが笑った。


「お前の“だからこそ”は信用できる。」


イリヤが肩を竦める。


「死ぬ気で走る作戦ね……。」


ノアはそれに否定もしない。


「……ゼロ班は、死ぬ気で走るために集められた部隊です。」


サーシャがフードを深くかぶり、

ライフルを抱えた。


「……分かった。

 どうせ死ぬ気なら、生き残るつもりで走ろう。」



ノアは短く指示を出す。


「まず俺が南斜面のMG(機関銃)を潰します。

 その間に、全員は地雷原の“穴”を探して前進してください。」


レオンが驚く。


「待てノア!

 MGは3基だぞ!?

 あんな密度を一人で――」


ノアは淡々と答えた。


「走りながら撃ちます。」


ジャドが吹き出した。


「お前……なんでそれを“普通に”言えるんだよ。」


サーシャは反対しそうになるが、

ノアの目を見て言葉を飲み込んだ。


――本気だ。


この男は“できるから言っている”。



照明弾が消える。


その0.5秒後――


ノアが“飛んだ”。


砂を蹴り、斜面を滑り降り、

敵陣へ一直線に突っ込む。


敵が一斉に叫ぶ。


「前方!敵影一!距離70!」

「射線取れ!!」

「撃てッ!!」


重機関銃の銃口が火花を散らす。


ノアは伏せず、止まらず、

ただ最短距離で走り続けた。


砂が跳ねる。

弾丸が彼の頬を掠め、

防弾服の表面に火花が散る。


だが――ノアは止まらない。


(……撃つ位置、呼吸、弾の癖……全部、見える。)


ノアは走りながら、

わずか1秒以内で銃の角度を読み、

MGの射線が止まる“最短の隙”を探し出す。


そして――


跳んだ。


跳躍は高くない。

むしろ人間らしい“約1.2m程度”の小さな跳躍。


しかしそのわずかな高さで、

MG三基の射線が一瞬揃う。


(ここだ。)


ノアは空中で銃を三度引いた。


――パンッ、パンッ、パンッ。


乾いた銃声。

走りながら放たれた弾丸は、

まるで導かれたように三つの銃座の射手を撃ち抜いた。


MGの火が止まる。


敵兵が悲鳴を上げる。


「一人で……!?一人で撃ち抜きやがった!!」


「馬鹿な……!あの距離で……!」


ノアは砂に着地し、

もう一度だけ大きく滑る。


砂丘の窪みに身体を落とし込むように伏せ、

背後へ合図を送った。


「――今です!」



イリヤが叫ぶ。


「全員、前進!!」


ミアが必死に端末を操作し、

地雷の密度を推測する。


「ノアが走った地点の“南寄り”……

 そこだけ地雷の反応がない!」


サーシャが息を切らしながら言う。


「ノアが通れる場所……

 つまり――“人間がギリギリ通れる幅”だけ空いてるってことね!」


バルドが吠える。


『全員、死ぬ気で走れ!!』


ゼロ班が一斉に前へ走り出す。


MG三基が沈黙した今、

敵は乱れ、

射線も散っている。


その“数秒”が、ゼロ班にとって最大の好機だった。



ノアは斜面の中腹から仲間たちを見ていた。


(……あとは、合流まで持たせるだけ。)


敵兵が怒号を上げながら

ノアへ一斉に向かってくる。


その数、50以上。


ノアはゆっくり立ち上がる。


「……時間稼ぎ、です。」


ジャドの声が無線に入る。


『ノア!!持ちこたえろ!!』


「はい。

 楽勝ですこんなの!」


ノアの足元の砂が、

敵兵を迎えるように鳴った。



――近距離戦。


ノアは斜面を利用して、

突っ込む敵の勢いを“利用”する。


前方から切りかかる兵の腕を掴み、

そのまま体重と重心をずらし、

背後へ放り投げる。


後ろの兵にぶつかり、

二人同時に倒れる。


ノアはその倒れた兵のライフルを拾い、

射線をわずかにズラしながら三点バーストで撃つ。


敵三名が崩れ落ちる。


(……息、右足の重心、ライフルの指癖、照準の癖。)


(全部見える。)


ノアはただ、淡々と敵を捌いていく。


やがて仲間たちが地雷原を抜け、

ノアの元へ到達した。


バルドが叫ぶ。


『ノア、後退しろ!!

 全員揃った、次の遮蔽へ行くぞ!!』


ノアは深く息を吐いた。


「了解。」


――全員、生存。


それだけで十分だった。



サーシャがノアの肩を支える。


「……本当に走りながらMG三基落とすなんて……人間じゃないわよ。」


ノアは苦笑する。


「人間ですよ。

 ジャドよりは。」


ジャドが怒鳴る。


「おい、なんで俺基準なんだ!!」


レオンとミアが笑いながら立ち上がる。


「ノアが生きてる……」

「それだけで、隊が崩れない……」


バルドが最後尾から声を張る。


『まだ終わっていない!

 次の目標地点に移動する!

 “包囲を抜けた”だけだ!』


全員が頷く。


ノアはふと、夜空を見上げた。


照明弾の残光――

その上空、遠くの山脈に閃光が走る。


その方向は――アシュレイがいた戦線。


(……あいつも、戦ってる。)


ノアは目を細めて呟いた。


「――行こう。まだ終わりじゃない。」


ゼロ班8名は砂丘を駆け、

次の戦闘区域へ向かった。


敵1200名に包囲されながらも、

彼らはただの1名も欠けなかった。


“ゼロ班”は、この夜において――

すでに伝説となりつつあった。

――次回更新:12月2日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、042話「戦況反転 ― ガリレア走廊の死闘」――


をお楽しみに!




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