040話 補給基地急襲 ― 夜明け前の罠
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――ガリレア砂漠戦線・第七補給区画前線。
時刻 04時13分。
夜明け前の砂漠は、
体温を奪う凍える静寂に包まれていた。
敵補給基地は、砂丘に囲まれた窪地に隠されている。
巨大な燃料タンクが6基。
弾薬コンテナは推定200、装甲車20両以上。
ここを破壊できれば――
敵は三つの戦線で補給が絶たれ、
一気に前進が止まる。
ゼロ班は、砂丘の稜線に身を伏せながら、
基地の灯りを見下ろしていた。
サーシャが低く囁く。
「……見張り、思ったより多いわね。
歩哨だけで50。
内部の警備を入れれば200は固い。」
バルドが双眼鏡を下げ、短く指示を出す。
「予定通り二手に分かれる。
ノア、ジャド、イリヤ、サーシャは東側から潜入し、
燃料タンクの起爆装置を設置。
俺、グレン、ミア、レオンで西側を制圧する。」
ノアが確認する。
「敵指揮所の位置は?」
ミアがタブレットを操作しながら答えた。
「基地中心の管制テント。
ただ――」
ミアの指が震える。
「……内部、熱源反応が異様に少ない。
普通なら十数人はいるはずなのに……ゼロ。」
サーシャが顔を上げる。
「管制が無人?あり得ないわ。」
バルドは静かに結論を出した。
「罠の可能性が高い。
だが――予定は予定だ。」
全員が頷いた。
ノアはゆっくり立ち上がり、
砂丘の斜面を滑り降りた。
「……行きます。」
ジャドが笑いながらついてくる。
「“行きます”が出たら、全員動くのがゼロ班だ。」
■潜入 ― 04:21
基地の外周は、砂壁のように高く積まれた土嚢と鉄柵で囲まれている。
東側の警備は比較的薄いが、それでも歩哨は20名以上。
イリヤが耳に指を当て、囁く。
「ノア、行って。」
ノアは息を吸い、一歩踏み出す。
影が砂の上を滑るように動き、
次の瞬間――歩哨のひとりが黙って倒れた。
サーシャがすぐにその陰に入り、
もう一人の喉元にナイフを押し当てる。
「静かに寝てなさい。」
倒れた二人を砂地に引きずり、痕跡を隠す。
ジャドが警戒しながら呟く。
「……早すぎるぞノア。」
ノアは振り返る。
「急がないと、間に合わなくなります。」
イリヤが眉をひそめる。
「何に?」
ノアは基地の中心部を見つめた。
「――あの静けさが、不自然すぎます。」
基地中央のテント群は明かりがついていない。
人影もない。
夜間でも最低限の警備はあるはずなのに。
サーシャが息を呑む。
「まさか、本当に……」
ノアが答える。
「――囮です。」
その瞬間。
――ドォンッ!!
基地西側の地面が大きく揺れた。
レオンの悲鳴にも似た声が無線に入る。
『西側で爆発!! バルド隊長が――』
ミアが叫ぶ。
『地雷原……!!
敵は補給基地を放棄して“罠”にしてる!!』
ノアの瞳が瞬時に鋭くなる。
「全員、散開!!」
ジャドがノアの前に立つ。
「何が起きてる!?」
ノアは西側の炎を見つめ、短く言った。
「……敵は補給を捨てて、俺たち8人を殺しに来てます。」
イリヤが息をのむ。
「つまり、ゼロ班が狙い……?」
サーシャの声が震えた。
「待って。
地雷原を仕掛けるってことは――」
ノアが答える。
「敵本隊がすぐ近くにいるということです。」
そして本当に――
現れた。
砂丘の向こうから、
数百名の敵兵が一斉に照明弾を撃ち上げた。
夜空が白く染まり、
影が浮き上がり、
砂漠が昼のように照らされる。
イリヤが絶句する。
「うそ……規模、500人どころじゃない……!」
サーシャが現場を見て青ざめる。
「最低でも千はいる……!」
ノアの毛先が、照明弾の光に照らされる。
「――囲まれています。」
しかし、ノアは一歩も引かない。
ジャドが拳を握る。
「おい……どうする。」
ノアは短く言った。
「突破します。」
イリヤが叫ぶ。
「はあ!?千人よ!?」
ノアは静かに微笑んだ。
「いつも通りです。」
そして――
東側からは潜入班4人、
西側からは負傷したバルド、グレン、ミア、レオン。
この夜、
ゼロ班はたった8人で
敵兵1200名の包囲網を相手にすることになる。
――次回更新:11月30日17:30公開予定
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『ゼロバレット』続編、041話「包囲突破 ― 灰の突破口」――
をお楽しみに!




