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ゼロバレット  作者: 水猫
ーーガリレア砂漠前線ーー(過去編)
39/75

039話 砂塵の夜襲 ― ゼロ班第二区画強襲

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ガリレア砂漠戦線・第二区画。

時刻 23時41分。


砂漠は夜になると別の姿を見せる。


冷たい風が皮膚を切り、

砂粒が銃身に貼りつき、

視界の全てを灰色に変えていく。


「……敵、動きが変わった。」


サーシャがドローン映像を見ながら低く言った。


「前線の歩兵が後退。

 代わりに――重装爆破班が前に出てきてる。」


レオンもヘッドセットを押さえた。


「信号を傍受……爆破波形。

 おそらく次、主力陣地ごと吹き飛ばすつもり。」


バルドが即座に判断した。


「狙いは第18大隊か。

 砲兵を潰して押し込んだ今がチャンスだと思ってんだろうな……」


イリヤが息を飲む。


「ゼロ班がいなければ、あの大隊はもう壊滅よ。」


ノアはライフルを肩にかけ、

静かに言った。


「行きますか。」


その声音は淡々としているのに、

全員がその背中に“異常な静けさ”を感じる瞬間。


ジャドがニヤッと笑った。


「お前の“行きます”は、もう合図なんだよな。」


バルドが短く命令を下す。


「目標:敵重装爆破班および護衛歩兵200。

 ゼロ班は右斜面より高低差利用して奇襲。

 ノア、先頭。グレン、後方狙撃支援。」


全員の足が自然に前へ向いた。


■敵重装爆破班の索敵区域


第二区画は、両翼を砂丘に挟まれた天然の回廊になっていた。

見晴らしは悪く、隠密にも最悪。


だが、ゼロ班には関係がなかった。


ミアがドローン映像を切り替える。


『敵爆破班、中心に30名。

 その外側に護衛歩兵150。

 重機関銃、計6門。

 スナイパーらしき影、砂丘上に3名。』


グレンがすぐに狙撃姿勢に移る。


「スナイパーは俺が落とす。」


サーシャが補足。


「敵の動きから見て……五分以内に爆破作業に入る。

 その前に仕留める必要があるわ。」


バルドが確認する。


「ノア、いけるか?」


ノアは短く答えた。


「五分あれば、十分です。」


誰も疑わなかった。


ノア・アルト。

世界ランキング29位。

ただの兵士ではない。

敵軍が情報室で“例外値”として扱う存在。


気配の消し方、動きの癖、判断速度――

人類戦闘データの統計にも載らない。


■奇襲開始:0分00秒


サーシャが指を鳴らす。


「開始。」


ノアが砂丘から滑り降りる。

足が砂を蹴る音も最小限。

銃口は揺れず、視線は迷わず、呼吸は乱れない。


レオンが後方で囁く。


「ノアの心拍……安定してる。」


イリヤが微かに微笑んだ。


「戦闘に入る前が一番落ち着くタイプなのよ、あの子は。」


ノアが距離を詰める。


敵まで――120メートル。

110。

100。


砂丘上の敵スナイパーが動いた瞬間――


――パン。


無音に近い、抑えられた銃声。

グレンの弾丸が敵スナイパーの眉間を貫いた。


続けざまに二発、三発。


「上の3名、排除。」


同時にノアの身体が影のように滑り込む。


爆破班のひとりが不意に首を傾けた。


「……今、何か――」


その言葉が終わるより早く、

ノアのナイフが喉を断っていた。


倒れる前に、次の兵士に移動する。


「敵だ――!」


悲鳴が上がると同時に、サーシャの声。


「ミア、ジャミング。」


『はい!』


電波が一瞬で遮断され、

敵の通信が途絶えた。


「これで増援の呼び出しは不可能。」


ジャドとサーシャが横から歩兵の陣地へ突っ込む。


ジャドは盾を持ち、爆撃班の前に立ちはだかるように前進。

イリヤが背後から正確に援護射撃を行い、

サーシャが敵の“指揮役”にあたる兵士だけを狙い撃った。


グレンが上空から状況を見て言う。


「敵徒歩部隊、混乱してる。

 ……ノアが中心を崩した。」


バルドが短く命じる。


「左右から押すぞ。

 ノア、爆破班は任せた。」


ノアは敵の重装爆破担当へまっすぐ走る。


相手は防爆スーツを着た屈強な男ばかり。

ライフルでは倒れにくい相手。

だが――ノアの動きはそれさえ計算内。


敵が爆破スイッチに手を伸ばした瞬間、

ノアの足がその腕を踏みつけた。


「っ……!?」


ノアは無表情のまま刃を突き立て、

スイッチを奪い取って背後へ放り投げる。


「後ろ!」


ジャドがキャッチし、即座に安全装置を解除する。


「回収! 爆破阻止!」


イリヤが敵の隙を探し、

ジャドとノアの死角に入ろうとした敵兵を射抜く。


「これで――」


ノアは最後の爆破装置担当を倒し、

自分の呼吸を確かめるように立ち止まった。


「……終わりです。」


敵陣は、

わずか“2分47秒”で崩壊した。


■戦区はまだ焼けている


敵の死体が散乱する回廊で、

ゼロ班は陣形を戻す。


ミアがドローンを戻しながら言う。


『第18機械化大隊、突破成功。

 これで第二線は維持できる。』


グレンがライフルを背負う。


「ノアが全部中心抜いたからな。」


イリヤが微笑しながら近づく。


「ちゃんと無事?」


「問題ありません。」


ノアは短く答えた。


その瞬間――


遠く、別の丘から狙撃弾が飛び、

ノアの足元に砂が弾けた。


「っ……狙撃!?」


サーシャが反射的に遮蔽物に飛び込む。


レオンが叫ぶ。


「距離1700!

 砂丘後方の高台!

 単独スナイパー!」


ジャドが舌打ちする。


「敵にあんな腕のやついたか?」


グレンがスコープを覗きながら、

小さく呟いた。


「……いや。あいつは敵じゃない。

 撃ってきた位置、弾道……」


そして、笑った。


「“Silver-3”。

 ――味方側の別戦線狙撃手だ。」


イリヤが聞き返す。


「じゃあなんで撃ってくるの?」


サーシャが即座に解析。


「狙いはノアじゃない。

 ……ノアの“後ろ”にいた敵重狙撃手を撃ち抜いた。」


ノアが振り返る。


砂の上に、敵のスナイパーが倒れていた。

自分に狙いをつけていた男――

その頭部には、遠距離狙撃による正確な穴が空いている。


遠くの砂丘の影に、

一瞬だけ“白いスコープの光”が反射し、

すぐに消えた。


ノアは小さく呟いた。


「……助けてくれた。」


サーシャが肩をすくめる。


「あなたのことを知っている者がいるのかもね。」


グレンが笑う。


「いや、あいつはただの“狙撃バカ”だよ。

 強いやつを見つけると、勝手にフォローしたくなるタイプ。」


その名を、

このときのノアはまだ知らない。


――アシュレイ・ケイン。

のちのゼロバレット第八席。


この夜、彼は初めて“ゼロ班”の存在を遠くから目にした。


直接会ったわけではない。

だが、彼は確かに見ていた。


砂塵を裂く影。

八人で戦線をひっくり返す狂気。

その中心で――誰より静かに敵を切り裂く少年。


「……面白ぇ。」


アシュレイは遠くの丘でスコープを閉じた。


「いつか会うんだろうな。

 あの“黒い影”とよ。」


その未来は、

すでに運命の線の上を走り始めていた。



――次回更新:11月29日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、040話「補給基地急襲 ― 夜明け前の罠」――


をお楽しみに!


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