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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー集合と選択 ― アシュレイ加入編ーー
36/74

036話 宴と砂の記憶

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――ゼロバレット臨時拠点《HANGAR–13》。


鉄骨の天井を伝って、潮風の音がわずかに響く。

戦闘を終えたばかりの仲間たちは、補給倉庫の片隅で即席のテーブルを囲んでいた。

食料と呼べるものは、缶詰・乾パン・冷めたコーヒー。

それでも、誰も文句を言わなかった。


戦地から生還した直後というだけで、それは“ご馳走”だったからだ。


「よっしゃー! おつかれさんたちに特製カイン飯を届けに参上ッ!!」


ガチャリと扉が開き、油の臭いとともに現れたのは、

裸にエプロン姿の男――カイン・クロウリー。


彼の両腕には酒瓶と鍋。

上半身は筋肉、下は軍用サンダルというカオスな出で立ち。

見慣れているはずのメンバーも、毎回反応に困る。


「……それ、何度目だと思ってる?」

ソフィアが眉を押さえる。


「十七回目!」とカインは即答した。

「戦場のストレスは酒と笑いでしか抜けねぇ! あと裸は正義!!」


リリスが苦笑しながら医療箱を片づける。

「正義っていうより、通報案件よね。」


「通報する暇があったら飲め!」

カインは大声で笑いながら、無理やり全員のグラスに酒を注いでいく。

ラベルも剥がれた密造酒。だが、戦場帰りの喉には甘い。


ネオンが端末を閉じ、ため息をついた。

「まぁ……死人が出なかったのは奇跡。乾杯ぐらい、悪くないわね。」


乾いた金属音が響き、グラスが触れ合う。

しばしの沈黙。

その音だけが、この地下拠点で唯一“人間らしい”音だった。


アシュレイは缶詰をつまみにしながら、苦い顔をした。

「戦地の灰よりましだな。味は薄いけど、生きてる感じはする。」


「お前にしては詩的なセリフだな。」

ノアが静かに笑う。

「詩とか言うなよ、柄じゃねぇ。」

「そうか? 悪くない言葉だ。」


二人のやり取りを見て、ソフィアはグラスを持ち上げた。

「……まるで、ずっと一緒にいたみたいね。」


カサンドラが小さく頷く。

「呼吸の合い方が自然すぎる。

 まるで、長年の戦友。」


その言葉に、アシュレイがわずかに目を細めた。

「長年ってほどじゃねぇが――まぁ、昔ちょっとな。」


カインが即座に食いつく。

「お、来た! それそれ! 俺が聞きたかったのはそれだ!」


「……なにをだよ。」

「お前らが“まだ顔も知らないまま共闘してた”あの戦争だよ!

 ガリレア砂漠戦線! 《無音の夜》! 伝説の地獄だろ?」


リリスが目を上げた。

「そんな昔話、よく覚えてるわね……。」


カインはニヤリと笑ってエプロンのポケットから酒瓶を取り出した。

「この身体は全部アルコールで動いてんだ。記憶だって酔ってる方が冴える。」


ネロが呆れ顔で言う。

「アル中の言い訳だろ、それ。」


ソフィアは静かにグラスを置いた。

「……ガリレア砂漠。

 あなたたちが“無音の夜”を生き延びた理由、

 聞かせてもらえるかしら。」


室内の空気が、すっと静まる。

風の音も止み、発電機の低音だけが響く。


ノアはカップを置き、ゆっくりと立ち上がった。

「……あれは、夜でも昼でもない場所だった。」


アシュレイも、煙草の火を消して目を伏せる。

「風も音もねぇ。息するだけで砂が喉を削った。」


ノアは少しだけ笑った。

「――あれが、俺たちの始まりだ。」


カインが酒を注ぎ足す。

「よっしゃ、語れ。今夜は誰も寝かせねぇぞ。」


ノアは静かに息を吸い、低く語り始めた。

「2年半前。

 俺は“イレヴン・ユニット”の指揮下にいた。

 任務は簡単だった――“砂嵐下での捕虜救出”。」


アシュレイが続けるように言葉を足す。

「だが実際は、“罠”だった。

 俺たちは互いの存在を知らないまま、同じ地獄に放り込まれた。」


室内の灯りがひとつ落ち、

倉庫の中が、まるで砂漠の夜のような薄闇に包まれる。


誰もが息を潜め、ノアの声に耳を傾けた。


「――あの日、世界から“音”が消えた。」


低い唸り。

遠くで鳴る波のような残響。


その一瞬、部屋の照明がちらつき、

まるで過去の“砂の夜”が、再びこの地下に降りてきたようだった。


「風は止み、通信は絶たれ、銃声すら吸い込まれた。

 ――それが、《無音の夜》の始まりだった。」


静寂。

そして――場面は、ゆっくりと過去へ沈んでいく。

――次回更新:11月16日(日)公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、037話「砂の境界線」――


をお楽しみに!


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