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ゼロバレット  作者: 水猫
ーー集合と選択 ― アシュレイ加入編ーー
35/75

035話 灰の市場 ― 一時の休息

『ゼロバレット』の世界観やキャラ画像はこちら ↓


作者X(Twitter)で公開中!


https://x.com/MizunekoZeroB

――港湾区外縁・市場区第三区。


崩れた高架道路の下、金属板を繋ぎ合わせた簡易市場が広がっていた。

瓦礫の街の中で、ここだけは人の声が生きている。

古い発電機が低く唸り、油の焦げる匂いと潮風が混ざっていた。


ノアたちは、ヘリを少し離れた駐機場に停め、徒歩で市場へ向かっていた。

アシュレイが周囲を見回す。

「……まさか、こんな場所がまだ生きてるとはな。」


ネロが肩をすくめる。

「港湾区の戦線から外れてたからな。ここは非戦闘地帯扱いだ。

 それでも、爆風と停電でまともな補給はできねぇ。」


ソフィアが短く頷く。

「各自十五分。必要なものだけ確保して。

 ネロは弾薬、カサンドラは通信端末の更新。」


「了解。」


ノアは人の流れの中を歩きながら、ふと足を止めた。

古びた屋台の上で、鉄鍋が音を立てて煮立っている。

年老いた屋台主が顔を上げた。

「旅の人かい? 温かいの、どうだ。」


ノアは少し考えてから、財布を取り出した。

「二人分、もらえるか。」


背後から聞こえる声。

「おいおい、勝手に注文すんなよ。」

アシュレイが苦笑しながら近づいてくる。


二人に手渡されたスープから湯気が上がる。

味は薄いが、確かな温もりがあった。


「……戦場の後に飲むスープって、やけに沁みるな。」

アシュレイが呟く。


ノアは頷いた。

「俺たちは壊すことばかり覚えた。

 たまには、作る人間の場所も見ておかないとな。」


アシュレイが笑う。

「そういうとこ、相変わらずだな。変わってねぇ。」


少し離れた場所から、ソフィアがその様子を見ていた。

隣のカサンドラが腕を組む。

「……あの二人、昔から息が合ってるのね。」

「戦場で生き残った絆は強いわ。」

カサンドラは腕の端末を操作しながら言う。

「でも、情だけじゃ組織は動かせない。

 ソフィア、あなたがそれを一番知ってるはず。」


ソフィアは小さく笑った。

「だからこそ、今はこの時間を大事にしたいの。」


――十五分後。


全員が集合地点に戻ると、ネロが報告した。

「弾薬、最低限確保。燃料も残り二十リットルだが、基地までは届く。」


「上出来ね。」

ソフィアが答え、通信でカインに連絡を入れる。

『こちらチームゼロ、離陸準備を開始。』


ローターの音が再び響き、灰の市場が小さくなる。

遠ざかる人々の姿を見下ろしながら、ノアがぽつりと呟いた。

「……あの人たちが、俺たちの戦う理由なんだろうな。」


アシュレイが隣でスコープを拭きながら言う。

「守るって言葉、あんま好きじゃねぇ。」

「じゃあ、何て言う?」

「“壊されないようにする”。それで十分だろ。」


ノアは小さく笑った。

「らしいな。」


――数時間後。


ヘリは、海に面した断崖の地下搬入口へと到着した。

潮に洗われた鉄扉が開き、機体がゆっくりと格納庫へ降りていく。

波の音が途切れ、厚い防壁が閉ざされた。


《ゼロバレット サブ拠点/HANGAR–13》


内部は狭いが整っている。

医療区画、補給庫、暗号通信室――すべて必要最低限。

ここは「帰る場所」ではなく、「生き延びるための場所」だった。


ネオンが端末を操作しながら顔を上げた。

「おかえり。戦闘ログは解析中。……思ったより綺麗に片付けたじゃない。」


アシュレイが片手を上げる。

「初仕事だからな。見栄くらい張っとかねぇと。」


リリスが微笑む。

「あなたが正式に入るなんて、誰も予想してなかったわ。」


ソフィアが軽く手を叩く。

「じゃあ――今日は歓迎会でもしましょうか。」


カサンドラが珍しく笑みを浮かべる。

「ここで“宴”なんて言葉、久しぶりに聞いた。」


テーブルに並べられたのは、缶コーヒー、非常食、栄養バー。

質素だが、戦い抜いた体には十分なご馳走だった。


アシュレイが缶を開ける。

「こういうの、悪くねぇな。

 命懸けで帰ってきて、缶コーヒー一本で笑えるってのは。」


ノアが微笑む。

「それが、生きてる証拠だよ。」


静かな笑い声が、地下の空気に溶けていった。

長い戦いの果てに、ようやく訪れた小さな休息。


――次回更新:明日17:30公開予定


ブクマ・評価・感想が励みになります。


『ゼロバレット』続編、036話「宴と砂の記憶」――


をお楽しみに!


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